18.ボス戦
小西達と合同パーティとなって2度目のダンジョン探索は無事に進んだ。
探索は27階から始まり、現在は30階のボス部屋の前の大扉前で休憩を取っている。
この30階には、ヘルバウンドという狼型のモンスターが徘徊しており、この階のボスモンスターも15階のボスと同じ同系列と予想された。
30階で苦戦したポイントは、モンスター達が複数出現する事で戦闘中も隊列を乱されたり……
僕と佐々木以外のパーティ四名が、モンスターの動きについていけなくなる場面が多少あった。
僕達のカバーできる範囲のミスだったので大ごとにはなってないが、当の本人達には自覚がない所がボス戦をやる際の不安材料といったところだ。
「さぁ、最終階のボス部屋まで到着したぞ!!
ボスを倒したら、こんな世界からオサラバだ!!」と、小西が言った。
「「おーー!!」と、取り巻き二人が気合入れている。
「今度は大丈夫だよね? 佐々木? 人吉?」と、不安そうにいう御影。
「無理そうだったら、ボスから逃げれば良いだけさ。
別にチャンスは一回だけじゃないから」と、僕は御影に言った。
「大丈夫だよ、御影。
今度は僕も拓郎もついてるんだし、なんとかなるよ」と、佐々木が御影に対して励ましてた。
「とりあえず、油断だけはするなよーー!!」と僕は言って、続きの話は小西と佐々木にぶん投げた。
「とりあえず、部屋に入ってみよう」と、小西が提案した。
皆、それに同意してボス部屋の大扉を開け部屋の中に侵入した。
「ワォォォーーン!!」と、部屋に入ると遠吠えのようなものが聞こえた。
部屋の中央へ進んでいきながら、皆にボスモンスターの予想を僕が言った。
「巨大な狼の型のモンスターあたりだと予想するよ、早い動きに惑わされないように!!」
そして、部屋の奥にいるモンスターを視認できるところまで近づいた。
僕の予想はおおよそ当たっていたが、大きさはそれほど大きくはなかった。
通常のヘルバウンドの二倍程度の大きさで、15階の牛男に比べれば半分くらいの大きさだった。
ただし、モンスターが二匹存在しており。
一回り大きいモンスターの方が三つ首を持つ狼 ケルベロス。
その隣にいる、ヘルバウンドより一回りくらい大きい狼は二つの首を持つ狼オルトロスだった。
「明らかに、三つ首の方が強いよなぁ」と、僕がいうと。
「そんな感じがするね。
拓郎。 アイツの相手よろしくね!!」と、笑顔で佐々木が言ってきた。
えっ!! 嘘だろ、オイ!!
「えっ!! マジ?」
「うん、マジ。
拓郎が相手できないなら、僕が援護に入るけど。
小西だけだと、オルトロス相手も軽く不安だからさ」
「おいおい、俺を見くびってもらったら困る」と小西が言い返した。
「拓郎と小西がケルベロスとオルトロス相手に足止め!!」
「「了解」」と、僕と小西は狼達の相手をする為に前に進んだ。
「「グゥルルルルル!!」」と、二匹の狼は唸り声を上げている。
日和るな僕、行くぞ!! と、言い聞かせ大声をあげケルベロスに向かって叫んだ!!
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
スキル: ウルフヴォイスが発動し、モンスターに対する威嚇が行われた。
……が、相手もボスモンスターの為、怯んでくるような事は無かった。
グゥルルルルル……!! と、低い唸りを上げながらケルベロスがこちらを見ている。
スキルの効果はなかったが、僕がケルベロスの相手だという事は伝わったみたいだ。
小西が盾に構えて突撃を仕掛けるが、オルトロスに綺麗に避けられている。
僕とケルベロスは、お互いに睨みあいが続いている。
佐々木の援護も小西のアレじゃ期待できないし、僕がやるしかないと覚悟を決めたその時!!
「ワォォォーン」と、部屋一帯に響くような大きな雄叫びをケルベロスがあげた。
ケルベロスの周りにヘルバウンドが召喚され、 多勢に無勢な感じになってしまい僕は少し動揺してしまった。
「名取、巻島!! ヘルバウンドに弓矢で牽制!!
御影はオルトロスに魔法で攻撃!!
拓郎はもっかい、大声で叫べ!!」と、佐々木が指示を出した。
ヘルバウンドは弓矢を避ける為に、僕に近づいて来るのを止めて回避行動を取り始めた。
そこで僕は佐々木の指示通りに【ウルフヴォイス】のスキルを発動させた。
「かかって来いや!!
この犬畜生がぁぁぁーーーー!!」と、半ば罵声に近いセリフを吐きケルベロスへ攻撃行う為に突撃をかけた。
急な大声に驚く、狼型のモンスターのヘルバウンド達は驚き竦んでいるところを名取達の弓矢で撃ち抜かれ絶命した。
オルトロスもこちらを見て瞬間に脚が止まった所で、御影の魔法による攻撃が直撃していた。
僕はシールドアローの弓を引きつつ、ケルベロスへ殴りかかった。
文字通りの突撃だ。いや、特攻に近いのかもしれない。
僕の攻撃が避けられ、シールドアローごとモンスターは手を噛みつきに来た。
僕はその手をケルベロスに差し出して、そのまま弓を放った。
ケルベロスの右側の頭が、口内から弓矢により貫かれた。
「ギャゥウウン!!」と、ケルベロスは不意なダメージを喰らい、鳴きながら後ろに下がった。
オルトロスがこちらに加勢に来ようとするが、小西がそれを阻止している。
「加勢にはいかせん!!」と小西が言って、小西が全力で引き止め後衛がオルトロスに攻撃を加えている。
「加勢に来たよ!!」と、佐々木がケルベロスの側面で武器を構えている。
僕が正面、佐々木が側面に位置を取りケルベロスに対峙していた。
佐々木は小西達が優勢になったと判断して、コチラに加勢に来たのだろうと判断できた。
僕で弓矢と短剣で牽制しつつ、佐々木が剣で攻撃をケルベロスに加えていく。
決めてにはかけるが、しっかりと時間稼ぎはできている。
「小西ぃぃ!!そっちは終わらないのか?」と、僕は叫んだ!!
「あと少しで終わる!!」と、小西はコチラに怒鳴るようにして返答した。
僕は弓矢で距離を詰めては短剣で牽制を繰り返していた。
「終わったぞ!!」と小西が言った瞬間!!
「後衛、一斉にケルベロスを狙え!!」と、佐々木が指示を出した。
弓矢、魔法による攻撃がケルベロスを狙い撃つ……
急な横ヤリに近い形での攻撃にケルベロスは対応できず、名取・巻島・御影の攻撃が直撃しケルベロスの動きが止まった!!
今だ!! と、僕が思った瞬間、佐々木がケルベロスの左側の頭を斬りつけた。
「拓郎!! トドメだ!!」
「うぉぉぉぉぉ」と、僕は叫びながら短剣を構えて突撃をかけた。
僕はケルベロスの中央の頭の眉間を目掛けて、全力で短剣を突き刺した。
終われっ!! 終わりやがれ!!と思いながら、ケルベロスの吹き出す血を全身に浴び、更に奥へと短剣を突き刺した。
ケルベロスの足がガクッと崩れ、そのまま倒れ込んだ。
最後は我が物顔で我らが勇者様が倒れたケルベロスの背に剣を突き立てて、ケルベロスの討伐が完了した。
小西達がボスモンスターのドロップを我先にと拾っているのを確認できた。
僕はドロップとか、それどころの状態ではなく血まみれで気持ち悪い。
僕も佐々木もケルベロスの返り血で真っ赤になっていた。
あぁ。とりあえず風呂に入りたいよなぁ……などと思っていたら。
その時、ボスドロップに興味がなかった御影が魔法で僕らの身体を綺麗にしてくれた。
「へぇ。
便利な魔法あるじゃん。
ありがとう」と、僕は御影に感謝を述べた。
とりあえず、これで謎の声が言った30階到達の目標を達成できたはずだ!!
僕と佐々木はお互いに拳を握りガッツポーズを取っていた。
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