12.謝罪と協力
あ、朝だ……。
いつもの通りに目が覚めた。
身支度を軽く済ませて、会議に参加のために僕は教室へ向かった。
前回、僕が占い師の二人を注意した事もあって、妙なザワつきは起きていなかった。
僕は教室に到着し、自分の席に着席すると昼の会議が始まった。
会議が始まった直後に、僕は全体を見回しクラスメイトの様子を確認した。
相変わらず、彩子が暗く俯いている感じは拭えない。
彼女は【人狼】と正体がバレているため、死の恐怖を感じているのだろうか?
そんな事を考えていると……
いつも通りに、小西が会議を仕切り始めた。
「最初に僕達から、佐々木君と人吉君に言いたい事がある」
「「ん?」」と言って、僕と佐々木はお互いを見合った?
なんだ? まだ僕に文句でもいい足りないのかと、軽く警戒したが小西は僕達二人に謝罪を行ってきた。
「佐々木君、人吉君。君達に今まで突っかかるようなことをして申し訳なかった。
僕達では、このダンジョンについての知識が足りていないみたいだ。
恥を忍んで君達にお願いする。
僕達を手伝ってくれないか?」
あわや、パーティの壊滅という状況に追い込まれて、小西達は現状を理解できたみたいだ。
その発言を聞いて、僕達は小西達を拒まなかった。
僕も佐々木も小西達も、結果的にはクラスメイトの帰還を目標に掲げているのだ。
拒めるはずもなかった……。
「僕は拓郎に任せるよ」と、佐々木は僕に結果を委ねた。
「うわっ、ひでぇ!! ブン投げかよ!!
良いよ、小西達と協力しようじゃないか」
「ほ、ほんとうか?」と、安心した表情で小西は確認してきた。
小西としては、僕達に断られるかもしれないと思っていたのだろう。
「あぁ、問題ない。
ただし、僕達がそっちのパーティに合流するには条件が二つある」
「条件?」と、小西が僕に問いかけてきた。
「僕と君達では基礎スキルに違いがありすぎる。
それは先日のボス戦で理解できただろう?」
「あぁ、だからこそ協力をお願いしているんだ」
「僕達がカバーできるのも限界があるからさ……
とりあえず、小西達パーティは5階から順に15階まで実戦経験を積んできなよ。
それが僕からの条件の一つ目だ」
「二つ目の条件は?」
「僕らがパーティに加わる以上。
勇者特権で市民班に金を落としていないらしいが、ソレを辞めてもらう」
小西はパーティメンバーの御影と名取の姿を見てから、僕の意見に頷いた。
「あぁ、わかった」
探索班の報告が終わり、本題の昼の会議が始まった。
今回決まった内容は、市民班でも役職を持っている人間に褒賞を取らせようという話だ。
役職がある人間は市民班としての仕事をやりつつ、役職の仕事を掛け持っているからだ。
占い師、鍛冶屋、料理人などは、そういった褒賞の対象に選んで良いだろうと僕も考えていた。
褒賞が出ると聞いて喜んで役職:料理人をカミングアウトする者。
周りの状況を確認して、役職カミングアウトするものがいた。
【料理人】として、カミングアウトしたのは石崎さんと藤森君だった。
褒賞がでると喜んでカミングアウトしたのが藤森君で、警戒するように役職をカミングアウトしたのが石崎さんだった。
「そっかー!! 石崎さんと藤森君。
君達が【料理人】だったんだね。
まず初めに、美味しい料理をいつもありがとう。
探索班は君達の料理にいつも感謝しているよ」と、僕は二人に感謝を伝えた。
「「どういたしまして」」と、料理人二人が答えた。
料理人のカミングアウトが終わり、次は占い師の占い結果の発表だ。
前回の事もあり警戒したが……
結果、市民側の人間に「白」を出して、今回の報告は終わった。
今回の昼の会議で大きな出来事はなかったのだが、彩子さんが明らかに俯いているのだけは気になっていた。
そんなこんなで昼の会議が終了し、いつもの夜の時間になったので、僕は佐々木の部屋に遊びにいった。
いつものように佐々木は僕を迎えてくれた。
人狼会議の始まる時間まで佐々木と馬鹿話や、今後の探索の予定について相談をしたりした。
はぁ、気が重い……
自室に帰ると、夜の人狼会議の時間になっていた。
モニターを確認すると、僕と佐々木、能丸のみが人狼会議に参加していた。
「なぁ?
彩子さんはどうした?」と、僕が二人に尋ねた。
「どうせ襲撃もしないんだから、先に眠ってるんじゃないか」と、能丸が答え。
「彼女は、そんな子じゃないと思うが?
それより、彼女が今まで以上に落ち込んでいるようだが?
何か理由はあるのか?」と佐々木が能丸に問いかけた。
「あー、それね。
ほら、彼女さ人狼ってバレたじゃん。
それで、軽く市民班から無視されてんだわ」
「おい!! それを先に言えよ!!
なんで能丸はフォローしないんだよ!!」と、僕は能丸に食ってかかった。
「いやいや、無理だって!!
こんな状態で、彼氏でもない俺が彼女に優しくしでもしたら。
俺まで人狼って疑われるって!!」と、能丸から反論が来た。
「ぐぬぬぬ……
たしかにそうだな。
すまん、能丸」と、僕は能丸に謝罪した。
「後、占い師が探索班を占わない理由ってなんだろ?」と、素直に疑問に思ったことを二人に聞いてみた。
「だって、お前ら二人。
やってることはカオスでも、めちゃくちゃ白いじゃん」と、能丸が答えた。
「僕は真っ先に拓郎が、占われるんじゃないか心配したけどね」と、佐々木が言ってきた。
「ふーん、ナルボドね。
後、佐々木ぃ〜。明日、覚えてろよ!!」と言って、いつものように襲撃無しで人狼会議が終了した。
彩子さんが人狼会議に参加しなかったことだけが気がかりだったが、いつも通りに襲撃なしが決まったので僕は眠りにつくことにした。