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チャイナブルー

からんころん、

ドアのベルが鳴る。

こちらを伺うお客様にカウンター席を勧める。


かたや、涙に頬を濡らすお客様。

かたや、それを笑って慰めているお客様。


どうやら、仕事に失敗して落ち込んでいるところを励ますべくここを訪れたらしい。


柔らかな笑顔で、でも芯のあるしっかりとした声で、すみません、と声を掛けられた。




「チャイナブルーをふたつ。」




かしこまりました、と承ってリキュールを手にした。



ライチから作られたリキュールに、ライムのシロップをひとかけ。

くるりとひと回し撹拌して、

ゆったりグレープフルーツジュースを注ぐ。


グラスの4分の3程を満たしたら、そこにトニックウォーターを。

柑橘の爽やかさでグラスを満たしていく。

小さな泡がグラスを撹拌していく。



さて、仕上げにブルーキュラソーをティースプーンひと匙分注ぐ。


重たいシロップは下に、下に沈みながらカクテルに色を付ける。


ほんのりと淡い黄色が残るそれは水族館のような美しさがある。



ちらり、とカウンターのお客様を盗み見て、

ブルーキュラソーをもうひと匙加える。


今度は全体が淡く、鮮やかに水色に染まる。

誰かがそれを、真夏の青空だ、と語っていたことをふと思い出す。



トニックの炭酸が抜けてしまわないように気を付けて、くゆらせる程度に撹拌したなら、



「お待たせ致しました、チャイナブルーです。」



ありがとう、明快に笑うお客様の笑顔が眩しくて、泣いていたお客様が、綺麗、と息をつけたことに満足して、平静を装っては頷く。



2人はグラスを交わし、カクテルを煽る。


美味しい、と目を見合わせて笑った2人に、

なるほど、このお客様には青空が似合う、

と思った。


その笑顔も、優しく語る言葉も、

その涙を拭うために必要なものも、

チャイナブルーぴったりだったのだ。





さて、チャイナブルーのカクテル言葉は


「自分自身を宝物と思える自信家」


である。


もしそれを知っていて、泣いている後輩にも出したのだとしたら、とんだ励まし方だな、とカウンターに隠れて1人笑った。

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