オラの農土が拓かれた
「光の奔流に包まれてバイス●トンウェルに行くと思っていた時期が私にもありました。」
~「神農仙記」より抜粋~
突然、頬を叩かれた。
痛みで目を醒ますと、眼鏡のおっさんが私の顔を覗きこんでいるではないか!
「うわぁっ!?」
と声をあげて身体を逃がそうとすると、側頭部を強かに打ち付けた。
「~ッ!?」
痛みに悶えているとおっさんが迂回して離れて行く。
痛みが引き目を開けると見知らぬ天丼、いや天井。
広さは六畳一間か。今時、紐付きの電気にタンスがあり、私が頭をぶつけたのは丸いちゃぶ台だったようだ。
今、私は居間で寝ているのか?床は畳のようだ。はい、ココ笑うトコロ。
ダジャレの方ではなく、この状況が某光の巨人シリーズの1シーンの様な昭和の部屋である点だ。私、さっきまでボランティア施設のテントにいましたよね?
パニックになりかけたが、頭を打ったお陰で冷静さを少し取り戻す。
まずは今の私より多くの事を知っている彼の素性からだ。
中肉中背の眼鏡おっさんを観察すると作務衣を着てタンスにオモチャのニワトリを閉まっておる。おバカな海外映画みたいにアレで叩き起こされたの!?
しかしその後に日本茶らしきモノを急須に入れているので、日本人では?と思い日本語で話かけてみる。
「アンタ誰?」
すると、彼はドヤ顔で言ってくる。
「アンでもねぇ。あたしゃ神様だよ!」
昭和!
少なくとも、昭和の日本人だ!
異世界モノだからドリ●フにかけてんのか?ナメテんの?ヒラ●コー先生に謝れ!
「いい、ツッコミだ。何人かと話たが、やはり日本人は話が分かるね。」
一人納得しなから頷くおっさん。
!?
コチラの考えが読まれている?
するとおっさんは、黙ってコチラに顔を向ける。
『その通り。』
!?こいつ、脳に直接訴えかけているだと!?
『ファミチ●キ下さい。』
いや、そのテンプレ要らんから!!
ひとしきり満足したのか、おっさんはコチラに湯飲みを差し出しながら話かけてくる。
「聞きたい事もあるだろう。とりあえず先程、キミが枕にしていた座布団に座り話をしようじゃないか。」
事情説明をしてくれて、友好的にみえる様に茶を出してくれている相手に現状は無意味に警戒や敵対しても自分の首を絞めるようなモノなので言われたままにする。殺す気ならもう死んでるハズだし。
「あ、美味い。」
久しぶりの日本茶と言うプライスレスだけではない。ややヌルめの温度が飲みやすい。
「そいつはどうも。んで、話を進めても良いかい?」
自称・神様も茶を啜りながら、話かけてきた。
コチラも頷く。
「以前の世界に神が沢山いたけど、今はいない。人が創造した架空の存在とされているからね。でも実は多くの神は高次元に移動したり平行世界に新たな自分の世界を創りあげ移住したんだよ。そうして宇宙を拡げる。何故か。邪神や混沌、虚無による世界崩壊とイタチごっこをしているからさ。」
「なるほど、陰陽思想か。」
「オタク知識があると話が早いね。んで、裏技で高次元に早めに行く目処がついたので創造したばかりの俺の世界を管理する神を選ぶ為に、キミを含む後継者候補達にお越し頂いた訳だ。放置した世界は邪神等みたいな侵略者に田畑を荒らす野生動物みたいにズタボロにされちゃうからね。んで、カカシ代わりの管理神。分かり易いね♪」
「…色々ツッコミ処が多いが、真面目な質問を2つ。何故、私?。後、後継者候補達?」
迫力は無いのは自分でもわかるが、三白眼で睨む。
「何故キミなのかの質問は、爆発等の膨大なエネルギーがあると召喚が楽。それと召喚しなければ遺体も残らない悲惨な生涯に第2の人生を用意したんだ、感謝はされど文句も言えず死ぬ方が良い人は自殺以外はいまいて。」
あ、アレ夢じゃなくて現実だったのか。…そっか。
「後は似たようなのを何人か。キミの情報を渡さない代わりに向こうの情報もあげない。また、神に慣れれば向こうの元の世界を覗けたり帰れたりするかもね。キミが神になった後の頑張り次第だが。」
マジか!?
おっさんのような神は湯呑みをコトンと置くと、
「さ、簡単な説明終了♪いってらっしゃーい。」
と言うやいなや、天井から垂れてきた赤い紐をクイッと引っ張り、お約束が発動。
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落下する浮遊感と悪態と供に新たな世界へと放りだされた。
美しい世界なのだろうが、そんな余裕もなく恐怖で意識をうしなった。




