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シンノオーの章

某機械生命体とオーラな戦士と古典TRPG。そんな素敵なモノを混ぜてみました。

筆武将なので不定期です。

~プロローグ~


仙歴(せんれき)993年、春。~天宮(てんきゅう)の大図書館にて。


「ギタス卿!」

近年宮中で見かけなかった王国最古と言われる伯爵家当主の白髪頭を見かけて思わず大声を挙げてしまった。この国の宰相である私がなんたる失態。しかし皆、私を恐れて知らんぷ…いや。

女司書が眼鏡の奥から私の権威という魔法の障壁を無効化するような視線を送っている。確かに図書館では静かにと言うルールを破るのは法典を預かる身としては土下座モノである。土下座ェ門である。

ゾクッとくる美人だったので後で名前を聞いておこう。


ギタス卿は書物の要塞で先程まで籠城していた頭を薄い本から離し、ゆったりとこちらに肩越しに振り返り

「んー?誰じゃ。」

とボケ気味に呟いた。



自慢ではあるが、私程の眉目秀麗な宰相はそう間違える筈がない。失礼ながら心の中でボケジジィと罵っても罪は在るまい。神の名において罪は無しである。



「誰がジジィだ。」

呟いていないのにコレである。視線だけで悟るとは伊達に元大臣はやっていない。


窓から見える庭で鮮やかな赤い色彩の鳳蝶(ほうちょう)が舞い、窓枠から消える頃にようやく思考回路が整った彼は私の事を思い出したらしい。周りに配慮した声で何事もなかったかのように椅子から立ち上がり宮中手本のような挨拶してくる。


「おお、ハウゼン宰相閣下。ご機嫌麗しゅう。奇遇ですな。」



そう。この私、神仙ショウ王国宰相にして王位継承権第5位のグリム=グラム=H=ハウゼン公爵をつい先程まで忘れていたとは…。

いささかショックを受けていたが、すぐに切り換える。宰相は伊達じゃない!

自慢の蜂蜜色の前髪をかき分けて彼の黒い瞳を見つめて改めて挨拶する。


「これはこれは、ギタス卿。お久し振りです。貴公が余生を領地の開発に充てたいと退任して以来ですかな?かれこれ2年になりますか。」


すると彼はゆっくりと首を振りささやく。

「シルバリオン伯爵の地位は今年の年始に息子に譲りました。今はギタスで結構でございます。」

「そう言えばそうでしたな。それではギタス殿と及びしましょう。」


そう言うと彼も(うなず)き、私の話を(うなが)す。

「ご子息の叙勲式には和平会議の為に参加しておりませんでしたので、未だに認識をしておりませんでした。しかし、そうすると無冠の貴殿は何故(なにゆえ)に入るのには官爵が必要な天宮の大図書館に居るのかな?」


私は自身の勘違いを詫びつつも疑問を投げ掛ける。無冠の者が宮中の者と面会したり国民に利用の許可をしている図書館も城の入口近くの地宮(ちきゅう)までである。いくら国の重鎮であったとしても政治の中枢である天宮に入って良い筈がない。


ギタス殿は自慢げに、懐から家紋の入った布に包まれた四角い物体を取り出す。

「これぞ、我が家に伝わる『神農』様による手記『神農仙記』の世界最古の写本。この事を思い出された国王陛下が王国の千年王国(ミレニアム)を記念して歴史書をお作りになるとの事。その書物の編纂と執筆をの大任を私にお与え下さったのです。」


ズギァァーン!と擬音の聞こえそうなポーズでドヤ顔してくる。歳を考えなさい…。やれやれです。

「…で、貴殿は引退なされたのでは?」

鉄杭で打ち貫かれたような頭痛を和らげるべく、こめかみを揉みながらギタス殿に質問する。


「いや隠居してみると存外、暇でな。丁度良い暇潰しになると思っての。」



…ああ。もういいや。

心を癒すべく窓から城内の演習場を観る。今なら見目麗しい仙衣(せんい)に身を包む兵達が仙木(せんぼく)より作りし外骨格の樹兵(きへい)や高さ6メートルの樹木の巨人、樹士(きし)に搭乗する姿が見えるだろう。


私の視線が気になったのか、彼も窓の外を観る。

樹法(じゅほう)で内外の音が遮断されているので今まで気がつかなかったのだろう。ああ。と声を漏らす。


「編纂した書物の名は国王陛下より賜ってあるのです。樹士に乗った英雄達の活躍に因んで『樹界仙記』と。」


眼下では物語を告げる鐘の如く樹士達が火花を散らす。

ついカッとなってヤッタた。後悔はしていない。

万人向けではなく、刺さる人向けで書いています。ナンバー・ワンではなくディープ・ワンですw

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