転
外は大雨。天気予報では大雨洪水警報まで発令されていた。時刻は四時だというのに、外はすっかり暗い。
「ごめんね。こんな日にモデル頼んじゃって。帰りは駅まで送るから」
メイク室に呼び出された朱李は、入鹿に考えたメイクが自分に似合うか試したいと頼まれていた。今日はアルバイトもないし、と快く了解したところだ。
「先輩って本当熱心なんですね。今はまだ五月なのに。本番の九月まで、他の先輩は全然余裕じゃないですか」
「一年のとき、俺モデルは頼まれなかったから客席で見てたんだけどさ。先輩達の作品みんなすごくて。俺もこの一年で習った事、ここで全て生かしたいんだ」
鏡越しの入鹿は、朱李が思わず微笑んでしまうほど瞳を輝かせていた。やっぱりいいなあ、と思わずにはいられない。
「玖瀬さん、普段はどんな感じのメイクするの?」
「あたし、ファンデーション嫌いなんですよね。皮膚呼吸が出来てない気がして。だから目しか気合入れてやらないです」
「だから逆に、肌綺麗なのかもね」
「そうですか? やった」
そう言って笑った朱李の頬に、入鹿が薄くファンデーションを塗った。「これで肌荒れちゃったらごめんね」なんて、冗談交じりに言ってくる。
でもそうして触れる入鹿の手は心地よくて、朱李は返事を忘れて目を閉じた。この人に任せれば大丈夫。なんて、根拠のないことを思ったりしている。
「入鹿!」
心地いい空気は、その一言に一気に絶たれた。第三者の声に目を開けば、鏡に映る扉に一人の女性が立っている。
朱李が思うより早く、入鹿はその名前を口にした。
「しずり? どうしてここに……。勝手に校内入っちゃいけないって言ったでしょ」
朱李から離れた入鹿の手は、今はその女性の腕に触れている。だけどそんなことは、今の朱李にとって大した問題ではなかった。
入鹿がしずりと呼んだこの女性。彼女を見るのは初めてではない。いや、実物を見たのは初めてだが、その顔は見覚えがあった。
肩につくかつかないかのショートカットに、丸い眼と輪郭。透けるような白い肌。
ついこの間、遊斗の彼女だと見せてもらったプリクラの女性が、今朱李の目の前にいた。
「どうせもう放課後だし、外で待とうにもこの雨だもの。それでも今まで待ってたのよ」
「……ん、ごめん。九月にショーがあるから、その下準備、手伝ってもらってたんだ」
ふと振り返った入鹿が鏡に映った。朱李はまだ、鏡越しでしか彼らを見ることができない。
「玖瀬さん。モデルやってくれる子なんだ」
しずりの目が鏡に映る朱李に集中した。その視線は、明らかに自分を品定めしている。
「ふーん。意外。入鹿があんな子選ぶなんて」
ぴくっと、朱李は肩を震わせた。いまの言葉は完全に侮蔑だ。確かに朱李は、しずりから見ればかわいくはないだろう。だけどふと、智久の言葉が脳裏を掠めた。
――あいつは腹黒なんだよ。顔で男選んでんだ。
「しずり。言葉に気をつけて」
「あ、悪い意味じゃないって。ほら、入鹿って結構ストリート系好きじゃん? だからてっきりモデルもそういう子かなって思ってたのよ」
そうだろうか。朱李は自分の顔が不快感に歪むのを感じてとっさに下を向いた。正直、今すぐこの場を去りたい。
「ならいいけど。ごめんね、玖瀬さん」
「いえ」
「ねえ入鹿。まだ時間かかるの? 早く帰ろう。外暗いし、あの子だって早く帰してあげなきゃかわいそうだよ」
優しい言葉に聞こえるが、その裏に込められた邪心が、朱李には分かっていた。はやく入鹿と二人になりたくて、それには朱李が邪魔なのだ。
「分かった。片付けて行くから、下で待ってて。うち生徒少ないから、最悪ばれちゃうかもしれない」
「……はーい」
半分渋々ではあったが、しずりは言われたとおり部屋から出て行った。室内が一気に静かになる。
「玖瀬さん? ごめんね。あの子、悪い子じゃないんだけど……」
「先輩の……彼女なんですか?」
「うん。まあね」
だったら十分悪い子だ。つい口から出そうになったその言葉を、朱李はグッと飲み込んだ。彼女の悪口を言われて、いい気持ちのする人間なんていない。
「あの、あたし帰りますね。買物しなきゃいけないし、雨ひどくなりそうだし」
すくっと立ち上がった朱李は、なんとか笑顔を繕った。入鹿はすっかりその表情を信じたようで、ほっと息をついて頷く。
「送るよ。駅まででよければ」
「いいですよ。先輩は彼女さん送らないと。あんまり危なそうならあたしも友達呼びますし」
「……ごめんね」
そう言って笑う入鹿が、朱李はかわいそうで仕方なかった。それと同時に、心に真っ黒い靄が立ち込めているような、そんな気分にも襲われた。
***
はあ、と朱李は息をついた。家に帰ってから、もう何度目の溜息か分からない。
遊斗と入鹿。大好きな二人が、同じ女性と付き合っている。よりにもよって、どうして自分がこの事実を知ってしまったのだろうと、朱李は思わずにいられなかった。
買物してきた食品を冷蔵庫に入れる。時刻は五時三十分を回っていたが、遊斗が帰ってくるけはいはなかった。
今日はバイトなのだろうか。朱李たちはお互いのアルバイトの時間まで把握していない。
たとえばアルバイトで、遊斗の帰りが遅い事に安心していいのかよくないのかも分からない。ただひとつ分かるのは、自分がこうしてうじうじ悩んでいても仕方ないということだ。
恋愛事情は朱李には難しい問題だ。ここはもう、結架に相談しようと、朱李は冷蔵庫を閉めるなり携帯電話を手にとった。
リダイヤルから結架の番号を選ぶ。発信ボタンを押して、後は彼女が出てくれるのをひたすら待った。
しかし何十回コールが鳴っても結架は出ない。時計は五時四十分を指した。もう学校が終わっていてもいい時間のはずだ。――と、目に付いたカレンダーにふと思い出す。
――五月入ったらすぐ合宿――
ああ、もう。諦めたように電話を切って、朱李は今まで以上に盛大に溜息をつく。
誰も傷つけたくはないけれど、事態が事態だ。朱李一人が抱えるには、それは大きすぎる問題だった。
とりあえず遊斗が帰ってくるのを待とうと思い、夕飯の準備をしようと立ち上がったとき――。
バチンッ!
激しいショート音と共に、朱李は視界を失った。
***
「おはようございまーす」
適当に会う人と挨拶を交わしながら、遊斗は更衣室に入った。彼が働くのはカー用品ショップで、車の点検なども承っているその店の制服は、すっかりオイルのかおりに染まっていた。
そんなジャケットを羽織ったところで、匂いなどすっかり慣れている遊斗には、なんの困惑もない。困る事と言えば、アルバイトから帰るなり、「オイル臭いからさっさとお風呂入って!」と朱李にどやされる事くらいだ。
今日は六時入りになっている。まだタイムカードを押す時間まで十五分はあるな、と遊斗が休憩室で休もうとした時、急に携帯電話が鳴った。
まだマナーモードにしていなかった着信音に、遊斗は戸惑い、周りからは視線が集まる。ろくに表示も見ないで、彼は電話を取った。
「もしもし?」
『ゆ……ゆー、と?』
「あ、なんだ朱李」
こんな時になんだと、遊斗は肩を落としながら通話相手の名前を呼んだ。帰宅時間などの催促はしない二人が、電話で話すことはほとんどない。
「どうした?」
『ま、まだ、帰ってこない……の?』
「は。なんだそれ。いつもはそんな事聞かないじゃん」
『お願い……! 早く帰ってきて!』
そこで漸く、遊斗は朱李の声が震えている事に気付いた。しかし気付いたところで、遊斗には何もしてやれない。
「無理だよ。俺今からバイトだもん」
『家、真っ暗なの。お願い!』
何度お願いされても、困るものは困るのだ。ふと窓の外の雨音を聞いて、遊斗は呆れたように言った。
「停電だろ? 台所のカウンターの下にたしか懐中電灯あったから。すぐに復旧するって。それでしのいで」
アルバイトの時間が近づいてきた。遊斗は少々焦り始める。
『分かんないよ。あたし駄目なの、暗いとこ……。助けてよ〜……』
そう言われて、朱李の事が心配じゃないと言えば嘘になる。だけど今日のアルバイトを休めば、時給千円が四時間の千二百円が二時間。合計六千四百円がパーになるのだ。
学費も生活費も自分で稼がなくてはならない遊斗にとって、それを易々と逃すわけにはいかなかった。
「結架ちゃん来れねえの? てかもう点くだろうからもうちょい堪えらんない?」
『無理だよぉ』
電話越しで、遂に朱李は泣き出したようだった。面倒だという気持ちと心配だという気持ちから、遊斗は電話を切るに切れない。
無言で暫くいるうちに、長針は五十五分を指していた。早く行かないと遅刻になってしまう。
「ごめん、朱李。俺行かないと」
『っ! 〜〜……』
「早く帰るようにするからさ。ごめんな。――マジごめん!」
そう言えば、遊斗は強引に電話を切った。携帯電話を見つめて罪悪感に胸を痛める。
朱李の事は大切だけど、遊斗はやっぱり、自分の生活をなんとか守らなければならない。今日ばっかりは、自己中呼ばわりされても仕方ないなと思えた。
なんとか時間ギリギリにタイムカードを捺して、遊斗は店に出た。この雨のせいか、店内の客はやはり少ない。
「お疲れ」
と、隣を通り過ぎた人物に、遊斗は思わず目を遣った。そうだ、こいつがいたと、無意識に頬の筋肉に力が入る。
「智!」
今しがた挨拶した遊斗に呼び止められると、智久は何の気なしに振り返った。
思考回路が働くより早く、遊斗に肩をガッチリと掴まれる。
「お前今上がりなんだよな? この後予定は?」
「は? ……ないけど」
怪訝そうに智久は答えた。何だというのだ。こっちは早く帰りたいのに。
「やあ、マジお前が同じバイト先でよかったぁ。なあ、智、一生のお願い!」
そう言って手を合わせる遊斗を見たとき、本能的に智久は、彼と同じバイト先なことを後悔した。
***
停電してから四十分ほど経ったが、未だに回復する様子はなかった。電気が切れたときのあの激しい音からして、何か大切な電線が一部ショートしてしまったのかもしれない。
しかし当の朱李には、そんなことを考えられる余裕ももはやなかった。
膝を抱えて自分を守る事しかできない。もう何時間も、この暗い世界に閉じ込められている気分だ。
早く帰るって、いつ? ねえゆーと、お願いだから早く帰ってきて!
ガチャ。ふと耳に届いた扉を開ける音に、朱李はとっさに反応した。ゆーとだ! と本能的に思う。
「ゆーとっ!」
「うわっ!? 」
縋るように抱きつくと、相手は驚いたように倒れこんだ。そんなことは気にも止めず、朱李はただぎゅっと彼にしがみつく。
ほのかに、油のかおりがした。アルバイト先でまたオイルに触ったのかと思ったが、いつものオイルと今日のかおりは、なんだか違うものだった。
それに今日は、香水の匂いがしない。いつも遊斗がつけている優しい香水のかおりが、今日は全くしなかった。
それだけ急いで帰ってきてくれたのだろうと、深く気に止める事はなかったが、それでも朱李は、なんだかこのかおりに安心感を覚えていた。いつも遊斗に感じるものとはまた違う安心感。なんでそんなことを思うのか、自分が不思議で仕方ない。
「ちょっ、おい、離れろ」
相変わらず腕の力が弱まらない朱李に、相手は困ったように声を発した。その声に朱李自身もハッとする。
それと同時に、部屋の明かりが復旧し、目の前の人物が、はっきりと視界に映った。
「と……智くん!? 」
遊斗だと思って抱きついた人物が智久とあれば、朱李は慌てて彼から離れた。今更に恥ずかしくて頬が火照ってくる。
「お前、相手が遊斗だからって安心して抱きついてんじゃねえよ」
それとは裏腹に、智久は怒りに染まった声を発した。しかし怒りだけにしては、何だか口調がたどたどしい。
「うぁ、ご、ごめん……。だって、怖かったし、ゆーと帰ってきたと思ったら、つい安心しちゃって」
「ついじゃねえ」
「ごめん〜」
その後も謝り続ける朱李に、智久は溜息をつく。済んだことは仕方ない。そう思うなり彼は立ち上がった。
「暗所恐怖症……なんだってな」
「ん。ごめんね」
「もういい。電気点いたんだし、もう大丈夫だろ。俺帰るから――」
くんっと、智久の体が止まった。帰ると言った彼を引き止めるように、朱李はしっかりと智久の服の裾をつかんでいる。
「あの、相談が……」
「相談?」
智久なら、しずりの本性に気付いている。結架に相談できない今、朱李が頼れるのは彼しかいなかった。
怪訝な顔をしつつも、ちゃんと座りなおしてくれる智久を優しいなと思いながら、朱李は今日あった事を全て彼に話した。
*
話せる事はすべて話した。朱李が口を閉じると、今度は智久が怒ったように舌打ちをしてから口を開く。
「またかよ、あの女……」
「またって?」
「前に遊斗と別れた時も、あいつ浮気してたのが俺にばれて、俺が言ったんだよ。ふざけんなって。そしたら次の日には遊斗のこと振ってやがった」
「何で……」
「振られんのが嫌いなんだよ、あいつ。付き合ってんじゃなくて付き合ってやってるとでも思ってんじゃねえの? だから俺がチクって遊斗に振られる前に振ったんだよ。けど俺、遊斗に何も言わなかったからな。それ知ってまた付き合うことにしたんだろ、どーせ」
酷い、と朱李は思った。遊斗はあんなに彼女に対して一途なのに。そんな彼の気持ちを弄んでいるのだ。
「このこと、知ったらゆーと傷付くよね。……言ってもいいのかな」
智久は答えようとしなかった。どうしたらいいか分からなくて、朱李も黙って顔を俯ける。
「お前らしくなくね?」
フッと智久が呟いた。瞬きを繰り返しながらも、朱李は彼の顔を凝視する。
「遊斗に何を言ってもいいのか悪いのか、何となく分かるんじゃないのかよ」
「……今は、わかんない」
「そうじゃなくてもお前って無駄に正直じゃん」
「それってイヤミ?」
「だから! 正直に動けよ。そうじゃなきゃ、お前じゃねえだろ」
そう言われれば、なぜか間違っていない気がして、朱李はうんと頷いた。もし自分が遊斗なら、恋人に浮気されているなんて冗談じゃない。だけど朱李のように思う人もいれば、浮気していてもいいから付き合いたいと思う人もいる。
しずりへの対応を、この二択から選ぶのは遊斗だ。だったら、言うこと自体は遊斗の邪魔にはならないのではないかと思えた。
「ありがと、智くん。あたしゆーとに言うね。隠しとおせる事じゃないし、どうするかはゆーとの決める事なんだから」
ふっきれたように笑う朱李を見て、智久も肩の荷が降りたように体の力を抜いた。
遊斗の帰宅時間まではまだあるが、また停電が起きる事もないだろうし、もう大丈夫だろうと腰を上げる。
「じゃあ、俺帰るから。懐中電灯すぐ取れるとこにでも出しとけよ」
「えっ。待っ……」
後を追うように立ち上がって、朱李は再び智久を引き止めた。今度はしっかりと腕を掴んで離さない様にする。
「今度は何だよ」
いい加減智久も痺れを切らしていた。早く帰って、学校の課題を片付けなければならないのだ。
「あの……。ゆーと帰ってくるまで、一緒に居て? あたし、一人でゆーとに話せるか不安だし……」
冗談じゃない。智久は思った。遊斗が帰ってくるのは確実に零時過ぎ。交通手段が車の智久が帰れないことはないが、課題は確実に間に合わない。
「無理だ。明日中に出さなきゃいけない課題もあるんだし」
「そ……か。ごめん……」
妙にしおらしい朱李に、智久は存外戸惑っていた。さっきの停電でまだ恐怖心が消え去っていないのかもしれない。
溜息をつく。こんな自分の性格が、今は憎たらしくて仕方なかった。だけど、コイツじゃなかったら……と僅かに思う、この感情はなんだろう。性格なんか関係なく、智久は朱李に未知の感情を抱きつつあった。
「ったく。明日課題出せなかったらお前のせいだからな」
投げやりな智久の言葉に朱李が顔を上げる頃には、彼はまた腰を降ろしてくれていた。
「いいの? 課題間に合わないなら、あたし……」
「どうせ今お前振り切って帰ったって、気になって課題どころじゃないんだ。だったらここにいてやるよ。どーせ……乗りかかった船なんだし」
荒々しい言い方なのに、どうしてか智久の言葉は優しく感じられて、朱李は「ありがとう」と呟いた。
***
「そっか……」
遊斗に全てを話し終えた頃には、すでに一時を回っていた。早く休みたいだろうに、付き合ってくれる智久や、話を聞いてくれる遊斗が救いで、朱李はなんとか言いたい事を全て伝える事ができたのだった。
「聞きたくない話だったなら、ごめんね。でもどうするにしろ、ゆーとにはちゃんと知っててほしかったの。ゆーとを裏切ってる人と、利用されたまま付き合い続けるゆーとなんて、見たくなかったから」
「いいんだ。教えてくれてサンキュ。……なんつーかさあ、そんなような気はしてたんだよね。前振られたときも、他に男いるっぽかったし」
そう言って笑った遊斗は、やっぱり辛そうだった。彼が恋愛に対しても自己中千万だったなら、朱李自身もどんなに楽だったかと思う。
「ゆーと……。これからどうするの?」
「朱李はどうしたい?」
「……それはあたしの決める事じゃないよ」
だな。と遊斗は頷いた。
「その先輩については、どうすんの?」
「橘先輩には、言っていいのか迷ってる。幸せそうな先輩を見てたいのもあるし……、傷つけたくない」
入鹿は朱李の支えだ。彼が沈んでしまえば、朱李だって辛くなる。
どうしたらいいのかと、遊斗は智久に目配せした。元々チャラチャラとしたものが嫌いな彼らしく、別れてしまえと全身で語っている。
遊斗が別れれば済む話といえばそれまでだ。でもしずりの浮気癖がそんなものでないことは、遊斗も本当は知っていた。いや、感づいていたというほうが正しいか。
「なあ、朱李、だったら俺の好きなようにしてもいいかな」
「へ」
「もしそのタチバナやらイケバナやらいう先輩が傷つく事になったら、そんときは朱李が慰めてやってよ。……てことで、頼みがあるんだけど」
そう言って笑う遊斗の笑顔に屈託がなくて、朱李は逆に嫌な予感がした。