表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

第8話 女神の転生と半神化5

第6話、第7話、魔法の名前を変更しました。


今回、残酷な描写があります。

苦手な方はご注意ください。

 遠く響く騒乱の雰囲気に、俺とルーリィは顔を見合わせた。

 どうするの、とでも言いたげに彼女が潤みを帯びた黒瞳でこちらを見ている。


「とりあえず、様子を探ってみよう」


 確実にトラブルではあったが、うまくいけば現地人に会える。

 そんな淡い期待を抱いて、俺は悲鳴と怒号が響く方へ向かっていくことにした。

 

           ☆


 ルーリィの手を引っ張りながら草原を少し進むと、一本の踏み固められた道に出た。

 漆黒の虎に対する恐怖心が落ち着いたため、彼女のペースに合わせたために若干遅くはなったが。

 先ほどの騒乱はすでに収まり、今は声の一つすら聞こえない。

 どうやら遅きに失した、と悟ったのは大きな岩が見えてきたころだった。

 体感時間でおよそ三〇分ほどではあったっが、その間に片付いてしまったようだ。


 それは、近づくにつれて深刻な様相をまざまざと突きつけてくる。


 大きな岩のそばに散らかる、木片。車輪や馬の死骸があるあたり、これは馬車だったのだろう。

 そしてなによりも――

 

「ひっ」


 ルーリィが小さく悲鳴を上げ、むせ返るような血の匂いにえづいている。

 俺も思わず口を押え、もう片方の手でルーリィを抱き寄せて視界を塞ぎながらその地獄絵図のような光景を茫然と見下ろした。

 

 無数の死体。


 みな一様に身ぐるみを剥がされ、素っ裸で転がされている。

 恰幅のいい男のでろっとはみ出ている臓物や中年女性の死体に走る無数の裂傷。

 なかには眼球に矢が突き刺さっている死体もある。

 護衛か何かだろうか、無駄に筋骨隆々としている男の死体は、彼の彼が無残にも切り刻まれていた。

 生前はさぞ立派なものだったであろうことが伺える。

 その嬲られ蹂躙された後を見ながら、若い女性の死体が無い事が気になりはしたが、まあ、想像通りなのだろうな、と思って嘆息する。


 そんな中で、一つだけ服を着ている男の死体があった。

 もともと薄汚れていたであろう粗末な服は、血液でべっとりと汚れ、手には折れた長剣を握りしめていた。

 顔つきもなんとなく凶悪で、おそらく、この光景を作り上げた側の、返り討ちにされたであろう人間だと当たりをつける。


 まあ、言ってしまえば盗賊だ。彼以外にそれらしい死体がないあたり、一人だけ間抜けがいたのか、もしくは単純に弱かったのだろうか。

 

 そんな彼から視線を外し、身ぐるみはがされた被害者をもう一度見る。

 もう少し早くついていれば助けられたのだろうか――などと栓の無い思考がふと自分の中にあることに気づき、舌打ちをする。

 自分が調子に乗っていることを自覚したのだ。

 異世界に来て、魔法に目覚め、魔物を倒して剣を手に入れた。


 そこでふと、この剣を作り上げた力はなんだったのか、脳裏をよぎった。

 例の神の知識とは違う気がする。

 と脳裏にそれが浮かび上がってきた。


 ――物質生成クリエイト 魔力から様々な物質を生成し、加工する。神の能力の一つ。


 とんでもない力な気がする。

 使い所をわきまえねばな……

 

 と、自らの思考がそれたことに気づいた。

 戒めだ。自分を戒めねば。


 ――あの漆黒の虎を思い出せ。あれに恐怖した自分を思い出して、思い上がりを正せ。


 自らにそう命令すると、ルーリィを抱く腕に力を込める。

 むぎゅ、と彼女が場違いな声をだし、どこか安堵する自分に気づく。

 そうだ。これが俺だ。見ず知らずの盗賊に襲われた人たちより、俺の欲望を満たしてくれるルーリィの方が大事。

 幼女。幼女。ロリ。リアルロリ。

 よし、ここでの俺の俺らしい回答は、この無数の死体の中にリアルロリの姿がないことに喜ぶべきだ。

 ないな。マジでないな。世界の宝は守られた。

 

 

 そして――俺の耳は小さなうめき声を捉えた。

 導かれるかのように岩の陰に視線を動かし、そこに倒れている男を発見した。


「生きているのか!?」


 思わず叫ぶ。すると、うめき声が一層大きくなった。

 俺は慌てて駆け寄ると、やはり同じように身ぐるみをはがされた全裸の男が、おびただしい裂傷に苦しみながら、まるで池のような血だまりの中で虫の息で生存していた。


「た、たす……て……」


「あ、ああ、今なんとかしてやる!」

「がんばって~っ!」


 俺は神の知識を使うため、回復魔法を神の知識の中に求める。

 重傷で今にも死にそうなのだ、生半可な魔法では無理だ。

 だから、最高レベルの回復魔法を願った。

 

 そしてそれはすぐさま浮かび上が――不意に頭の中に霞がかかった。


【知識の源泉第一〇層・大神たいしん級に該当します。現レベル・半神では行使権限がありません。また、大神級の負荷により自己領域に重大な欠損を及ぼす可能性があるため安全装置が作動します。知識の源泉の起動をキャンセル・残留知識を脳内より削除します】


 不意に頭の中に響く声。

 次の瞬間には、脳内に鋭い痛みが走って、思わず悲鳴を上げていた。


「シンくんっ!?」


 ルーリィが悲鳴じみた声を上げ、脂汗を流して苦痛に呻く俺の腕を抱く。

 その温もりに解けるようにして痛みが引いていった。


「なん……だっ……てんだ……」


 荒い息を抑えるようにして毒づきながら、俺は死にかかっている男を見下ろした。

 男は今にも光を失いそうな瞳で俺を見つめると、のろのろと手を伸ばした。

 思わずその手をつかむ。

 すると、男はかっと目を見開き、力を振り絞るようにして口を開いた。


「たの……っむ……娘、と、つ、妻を……さらわれ……たす……け……てくれっ!」


 それだけ言うと、男の瞳から光が失せ、どさりと腕が落ちた。

 俺は茫然とその様子を見ていることしか出来なかった。


「シンくん……この人、娘と妻を助けてくれって……」


 瞳に涙をためながらルーリィが言う。


 娘……娘か……俺は……


「くそ、肝心なことを言い忘れてるんじゃねぇよ……娘は一二歳以下なんだろうな……脱がせたときに毛が生えてたら助けてやらないからな……」

「シ、シンくん……?」


 やっぱり俺は調子に乗っていたのだ。助けられると勘違いして、助けられなかった。

 先ほどの戒めも、何ら意味をなしてなかった。

 神の知識は万能ではない。そのことに、俺は彼の死をもって気づかされた。


「まず、盗賊たちの後を追わねばな……そういう魔法はあるのか? なんだよ、行使権限って」


 ――追跡トレイル


 だが、あっさりとそれは浮かび上がってきて、俺はもう一度死んだ男の方を見て奥歯をかみしめた。

 


 そしてその浮かんできた呪文を唱える。


「彼岸に導く自らの軌跡:追跡」


 すると、大地が数秒赤く輝き、無数の足跡が赤く光る。

 俺はその中で盗賊の足跡を意識する。するといくつかの足跡が消えて、目的の物だけが赤く輝いていた。


 ざっと見積もって三〇人程度か?

 それで全員ってわけじゃないだろうから、五〇人程度と考えたたほうがいいのかもな……

 その人数相手にどうしろってんだ。くそっ。

 なにか、殲滅に向いた魔法はないものか……


 すると、再び神の知識が浮かび上がる。


 ――多槍撃バレッド・ランス


 無数の槍を生成して射出する魔法らしい。中級と出ている。

 初めて上級以外がでてきた。

 てか、追跡には等級はなかったな……

 ともあれ、戦う算段は付いた。あとはもう野となれ山となれだ。

 娘が12歳以下だったら助ける。妻は知らん。

 それで行こう。なんでもかんでも助けられるほど、俺は強くない。

 そしてなによりもルーリィを危険にはさらしたくない。

 彼女を失うことなど考えられない。

 そう思ってしまうほど、俺は彼女の事を愛してしまったのだから。


「ルーリィ、大丈夫か?」

「うん。なるべくシンくんの足を引っ張らないようにがんばるよ!」

「無理はするなよ。娘が12歳以下の場合しか助けない。そしてルーリィに危険が及ぶようなら助けない。これは、今回だけじゃない。今後のルールだ」

「……わかったよ。わたしはシンくんに従うよ」

 そういって俺の腕を抱えて、平たい胸を押し付けてくる。

 俺はその骨ばった感触をたっぷりと堪能すると、赤く光る足跡が去った方向へと進んでいった。

す、すんません。

次回こそ新しいロリでます。

キリが良いなと思ったので、今回ここまでにしちゃいました。


ところで、2000PV超えてました。

本当にありがとうございます。

今後とも、何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ