表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

第4話 女神の転生と半神化1

「あいたっ!」


 中島さんが構えた銃から放たれた弾丸が寸分たがわず俺の眉間に命中し、俺は思わず額を抑えて呻いた。


「いや、あいたって」


 さわやかなおまわりさんは、相変わらずドン引きだ。

 気持ちはわかる。俺もあいたっだけで済んだのはびっくりだ。

 だから言ってやる。


「いや、ちょっと腫れて赤くなってるし! てか、中島さんいきなりなにするんっすか!」


「うるせぇ! 貴様子供に何してんだコラッ! ぶち殺すぞ!」


 さわやかなおまわりさんも、そこでドン引きしてないで止めてほしい。

 ここが日本だったら、総力上げてももみ消せないほどの不祥事な気がするんだが……。

 

 怒鳴りながら中島さんが放つ銃弾は、吸い込まれるように俺のむき出しの腹や肩に命中する。

 その度にいてっ、いてっと呻きながらルーリィを見ると、あわあわと口元を震わせて腰を抜かしていた。

 音が、音が、となにやらぼそぼそ呟き、じわじわとその周りに液体が広がっている。

 どうやら、銃声にびっくりして腰を抜かしたらしい。

 まあ、異界の女神さまなら初めて聞くだろうしな……。

 てかよく漏らす女神だな……もしかして失禁癖でも着いたのか……?

 ロリのお漏らし、ヒャッハァなタイプなので、ルーリィへの情よ……愛情がうなぎのぼりだけどな。

 ひと段落したら愛でたい。たっぷりと、でっぷりと。フヒヒ。


 俺は銃弾が多少痛いだけで脅威にはならないことを理解すると、そんなことを考える余裕もできた。

 とりあえず、服だ。服をどうにかしないと中島さんに話を聞いてもらえない気がする。

 とか考えていたら、俺とルーリィの体が光威包まれた。

 しゅるしゅると音がして、肌になにか巻き付いていく。

 やがて光が終息すると、俺の身体から素肌をさらしている不安感がなくなる。

 見下ろすと、俺は黒いローブをまとっていた。


「おおっ!」

 

 俺は感嘆の声を上げ、ルーリィの方を見ると、彼女は白いローブに包まれていた。

 しかし、濡らした地面にしりもちをついたままだったため、お尻のあたりが黄色く染まっている。

 何というか、すごく申し訳のない気持ちになった。


「どうよ?」


 ルーリィの事はひとまずおいておいて、鬼のような形相をしている中島さんにドヤ顔で聞いてみる。

 視界の端でさわやかなおまわりさんが、目を見開いて驚いていた。

 というか、いい加減名前を聞きたいな。相方が中島だから、磯○だろうか。○野だな。

 中島さんはふん、と鼻を鳴らすと、


「どういう手品を使ったか知らねぇが、お前さんはその子に大人としてやっちゃならねぇことをした。たとえ俺以外の他の誰が許そうと、俺だけは絶対許さねぇ……泣きはらす娘に俺は誓ったんだ。てめぇらを駆逐するってな! はっ、巡査部長をなめるなよ、ペド野郎がぁっ!」


 そう怒鳴りながら中島さんは引き金を引く。それは寸分たがわず、再び俺の眉間に吸い込まれた。


「あいたっ」

 思わず口にする。というか、あれおまわりさんの拳銃って、何発入ってんだっけ?

 さっきから随分撃ってる気がするけど、球切れの気配がないんだけど……

 もしかして、中島さんそういうチート貰っちゃったのか?


 怒りが振り切れた中島さんは引き金を引き続ける。

 てか、口調も人格も変わってる気がするんだが……

 致命傷を受けることはないが、ちくちくと鬱陶しい。 


 イ○ノの方を見ると、今度は中島さんの方を見てドン引きしていた。

 役に立たねぇ! てか、さっきからドン引きしかしてないけど、こいつがもらったチートか何かなの? お前と同じ魚類の名を持つ永遠の小学生はこの程度、機転を利かせて切り抜けるというのに!

 

「おい、イソ○!」

 俺はもうひとりのおまわりさんに声をかけた。

「誰だよ!? 野球しないよ!? 俺は吉田だよ!」

 吉田さんのそのセリフに、俺は小さく舌打ちした。

「なんで君がっかりしてんの!? てか、中島さんも一度落ち着きましょうよ! その子も怖がっちゃてるじゃないですか!」

 中島さんはルーリィを見て、はっとした顔になり、視線を俺に戻すと苦虫を噛み潰したような渋面で舌打ちを一つ、そしてため息を吐いた。

 そして拳銃をホルスターにしまった。


 俺はそれを見て、嘆息する。

 なんだかひどく疲れた。

 俺はすわりこんでぷるぷる震えているルーリィの向かいにしゃがみ込むと、


「大丈夫か?」


 と声をかけた。するとルーリィは、


「ふぇぇぇぇん、シン~~ごわかったよぉ す、すごいおどがしでぇ! シンが死んじゃうかとおもったよぉ!」


 俺に抱き着くと胸に顔をうずめ、号泣する。

 俺の新しいローブは、一瞬にして涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。

 もう絶対に洗濯なんてしないぞ。


 俺はそんなルーリィを優しく抱きしめ、頭を撫でてやる。


「大丈夫。俺はルーリィを残して死なないよ」


 囁くように言うと、ルーリィは顔を上げた。

 目を真っ赤に腫らし、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。

 だけどそれが彼女の可愛らしさを損なうことはない。

 むしろスパイスだ。ステータスだ。


「シン~~」


 びえぇぇと泣きながら、ルーリィは俺の存在を確かめるかのように唇を求めてきた。

 その柔らかな唇は、涙と鼻水でしょぱかったが、彼女の温もりは確かにそこにあり、俺はそれにほっとする。

 そうしているうちに彼女の舌が俺のそれ中を求め、やがて絡み合う。

 軽く吸ってやると、「んっんっ」と小さくルーリィは声を漏らした。

 たっぷりと時間をかけて愛を確かめ合うと、唇と唇は糸を引きながら離れる。

 瞳と瞳が交錯し、俺たちは見つめ合う。

 ルーリィの頬が上気してるのは決して泣き腫らしていたからだけじゃなく、確かな愛情と情欲がそこにはあった。

 それを俺は認めると、ルーリィの小さくて華奢な体を力いっぱい抱きしめる。


「き、きついよぅ」


 と、唇を尖らせるが、どこか嬉しそうに、ぎゅうっと小さな手が俺の背中にまわされた。

 力いっぱい抱きしめているつもりなのだろうが、その力は弱く、ちょっとした切っ掛けで離れてしまいそうだ。

 だから俺は彼女を抱く腕に力をこめ、そしてそのまま背筋を撫でながら彼女の冷たく湿った臀部へと這わせた。

「ん……」

 その感触にルーリィは小さく吐息をつき――


「いや、君らな!」


 そんな吉田さんの声に我に返る。

 みると、中島さんがすさまじい形相でぷるぷる震えていた。

 いや、中年のおっさんのぷるぷるは可愛くないから。


 桃色空間から急速に現実に戻された俺は、その空気の読め無さに憮然とし、


「いつまで見てんだよ、俺たちが合意の上でのこういう関係だってわかったろ! さっさとどっか行けよ!」


 そう悪態をついたのも許されるだろう。

 ……許されるよな?


 俺は不安になり、ルーリィを見た。

 彼女は俺の腕の中でぷるぷる震えながら、おびえたような目つきで中島さんを見て、


「あのおじさん、こわいぃ~~」


 再び俺の胸の中でえぐえぐと泣き出してしまったのだった。


 俺は俺のルーリィを泣かせた中島さんを睨みつけ、そして茫然とした。

 いや、ドン引きした。

 中島さんは、この世の絶望をすべて味わった末にたどり着いたとでも表現するような無表情で、はらはらと涙をこぼしていた。

 吉田さんはそんな中島さんを見て、気まずそうにきょろきょろ視線をさまよわせながら薄ら笑いを浮かべている。


 そして中島さんはその場に崩れ落ちると、


由依ゆい……パパは……パパは……」


 とぶつぶつと繰り返し始めた。


 俺は泣きじゃくるルーリィを見て、そしてもう一度中島さんを見て、最後に吉田さんを見ると目があった。


「ええと……」

 吉田さんが頬をかきながら、俺を見て、


「弱ったなぁ」


 と、どこか遠くの方を見てあははーうふふーと現実逃避をしたのだった。


 まあ、一つ言えることはあれだ。

 何が悪いのかと言えば、あれだ。社会が悪い。政治が悪い。

 そうに違いない。


 俺は胸の中のルーリィの頭の匂いを嗅ぎながら、そんな風に現実逃避してみるのだった。

 

ブックマーク、ありがとうございます。

精進致しますので、今後とも何よぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ