勇者は本当の意味で勇者になる
好評だったら連載します!
ここはセレネ。1000年の歴史を持つ由緒ある国である。
「侯爵令嬢メアリー…、勇者メアリーよ、魔王を倒してくるのだ!!」
セレネの王宮では勇者任命式が行われていた。
「御意に」
この赤髪に銀色の鎧を纏った少女がメアリーである。
最近世界各国では魔物や魔族が暴れたり、魚や生き物が死んだり、草木が枯れたりなどの異変が起こっている。それをどうにかしようと各国の王族は皆勇者を送った。
魔王を倒すべく魔王城へと旅立って行った勇者たちはその後二度と帰って来なかった………訳ではなくむしろ帰ってきたのだ。もしくは他国で発見されたりしている。しかも死者はいない。何度送っても同じことの繰り返しである。それで今回白羽の矢が立ったのは侯爵令嬢のメアリーであった。メアリーは文武両道で容姿端麗な正に完璧を絵に描いたような少女だった。
しかしこの世に完璧な人間なんていない。
~~~~~~~~~
私はメアリー=リンドグレイである。
気がついたら勇者にされていたリンドグレイ家の侯爵令嬢だ。
王様もある意味鬼畜である。私も一応女なのだがなんの嫌がらせだ。供もいない。
「ったく、だる……」
表向きは文武両道、容姿端麗な侯爵令嬢で通っているが実際はめんどくさがりである。
などと愚痴っている間に魔王城へついた。
「魔王は何処だ!!」
扉を開けると私はそう叫んだ。
「侵入者だ!!」
魔族の一人がそう叫ぶと次々と魔族が来て遅いかかってくる。
「はぁっ!!」
「ぎゃあぁぁぁ!!」
私は敵を次々と切り倒し、とうとう一つの扉の前へ辿り着いた。
バァン!!
「私と勝負だ、魔王!!」
「…………来たか」
そういうと魔王はこちらを向く。
「………やぁ!!」
私は魔王に切りかかる。
(……………!?)
あっさりと交わされる。
(そんな馬鹿な!!)
ヒュンッーーーーーー
気がついたら喉元には剣の切っ先がつきつけられていた。
(ああ、もう駄目だーーーー)
覚悟をして目を瞑る。これから私は何をされるのだろうか?どちらにしろただでは済まない。
(…………ん?)
体がフワッと浮き上がった。私はフと目を開ける。
「ぎゃああ!」
気が付けば魔王に俵担ぎされていた。
「何をする!離せ!!」
「……………」
魔王は私の言葉を無視してしばらく無言で歩く。背中を全力で叩くがそれでも無視して歩く。
(あれ?ここ…………)
よくよく見るとその道はさっき通った道だった。あちこちに魔物達が倒れていてそれを他の魔物達が治癒魔法で手当てしている。
そのまま歩いていくと今度は外の景色が見えてくる。
(あれ、外ーーーー?)
ポイッーーバタン。
「ちょ、えぇ!?」
勝負に負けたら魔王に俵担ぎされた上、外に放りだされました。え、なにそれ?
~~~~~~~~~
どうやらこれが他の勇者が戻ってくるわけらしい。
しかし私は諦めない!!
「魔王、勝負だ!!」
「………………」
魔王はめんどくさそうに立ち上がる。
「…………………」
無詠唱で氷魔法を発動させる。
「手首が……………!!」
気が付けば手首が凍っていた。またしても担ぎ上げられる。
「離せ~!!」
ポイッ……バタンっ。
また放り投げられる。
~~~~~~~~~
きっと侵入経路が悪かったのだ。そうに決まっている。私としたことがなんという失態!!
「勝負だ、魔王!!」
「………………風邪引くぞ」
今回は用水路を通ってみた。やはりばれずに城へ侵入できた。
「そんなことはどうでもい………ブフェックション!!」
「…………………」
魔王は金縛りをかけ、こちらへ歩みよったかと思うとマントを外し、小さい氷を作りそれごと私をくるんだ。
「え!?」
「………………」
俗にいうお姫様だっこと言うやつをされた。何故だ!?
ストッ……………バタン。
今日は投げられずに静かに置かれた、魔王城の扉が閉まると金縛りが解けた。
くるんでいたマントを取ると氷と一緒に風邪薬が入っていた。もしかしてさっきの行動はあれか?具合よくなれ的な?
~~~~~~~~~~
そんなことを繰り返して、今日は忌むべき100回目、今日こそ魔王を倒す!!
「魔王、今日こそ勝負だ!!」
「………またか」
「はあっ!!」
「…………!!」
「やぁっ!!」
「……!!」
カキィーン!!
剣が吹っ飛んだ。あぁ、また負けた。これで百回目だ。
(また外に放り出されるのだろう)
そう思っていた。しかし、魔王は私の反対方向へとあるきだし机に座り仕事を始めた。
(ーーーーえ?)
「ま、魔王」
「なんだ」
「何をしている?」
「見てわからんのか」
いや、解る。解るけど理解したくない。
どうやら魔王城の外へポイ捨ての次は城内へ放置のようです。