林檎とオレンジ
絵本のようなイメージをしてくれると嬉しいです。
とある小さな町。そこに住んでいた貧しい少女の話。
今日は少女の誕生日だった。しかし誰も少女の誕生日を祝わない。少女は自分に自分でプレゼントをあげようと思う。
少女は林檎が欲しかった。しかし少女は貧乏だったのでそんなものは買えず、少女はコツコツためたお金を出しても林檎が買えないことを知った。
「林檎を一つ下さいな」
「ごめんねそのお金じゃ足らないよ。代わりに蜜柑を買うかい?」
「蜜柑はいらない」
小さな手に少ないお金握りしめて、少女は別の店に行く。
「林檎をお一つ下さいな」
「ごめんねそのお金じゃ売れないよ。代わりに胡瓜を買うかい?」
「胡瓜はいらない」
一つ、また一つの店に行くたびに少女は悲しくなっていく。同時に分かっていく。『ああ、買えないかもしれない』
最後の店だった。この町にある一番最後の店だった。
「林檎を一つ下さいな」
「ごめんねそのお金じゃ足りないよ。代わりに他のを買いなさい」
「林檎が欲しいの。林檎が」
「足りないんだから、他のを買いなさい」
少女は泣く泣くそのお金を出してオレンジを買った。握りしめたそれは欲しかったものと違う。
「林檎がほしかったの、林檎が……」
帰り道少女はそう呟いて泣きながら小さな手にオレンジを握った。
それはとても、欲しかった林檎には見えなかった。
妥協して手に入れたものは霞むという。誰かが少女に買ってあげればよかったのでは?誰か一人くらい少女の足りないお金で売ってあげようとは思わなかったのか?少女は泣きながらそれを握りしめる。これじゃない、と呟きながら。




