開き直りのススメ
四年もこの国で暮らしていると、一人で何とか住むくらいの語学力はつくらしい。
あのかわいらしかったユリアン君は勉学に励みアカデミーに推薦が決まった。
ビロウは先月婚約者と無事結婚。新婚にも関わらず、軍部と文官の間でいろいろこき使われている。
時々菓子をたかりに来て奥さん(マジで美の女神)の所に帰れないと愚痴を言っている。安心しろ奥さんは私が慰める。
でフリオニールだが、今あいつからプロポーズを受けている。
思ったより年齢が近いことと、一緒にいて息が詰まらないあたりが気に入られたらしい。
細かく計算すると同い年だとしてもちょっと向こうのほうがお兄さんらしかった。
プロポーズの返事は今のところ拒否。
これまで全く気にしたことがなかったが、実はフリオニールはイイトコの出身らしい。
十何代か前は貴族で、貴族制度が解体される前に財閥興して、実家は兄貴が切り盛りしているので気楽な次男坊らしい。
本人は生前分与の形で金をもらい、それでまだ価格の安かった土地を買って人に貸している。
本人は働かなくても過ごしていけるわけだが、研究所に勤務している。
研究所から出る金はそこそこいい。安心して養われるといいよとにこやかに言ってくれた。
分かってもらえないかもしれないが、すごく八つ当たりしたくなった。
イケメン爆発しろと思ったことは何度もあるが、金持ち爆発しろと思ったのは初めてだった。
いや、もちろん他にも理由はある。
戸籍は市民として一応登録されているが、いきなりこっちに来た経緯と、これからもしかしたらいきなりまた別の星に飛ばされるかもしれないわけで。
結婚式の当日に花嫁が消えたら困るだろ。逃げてもいないのに逃げたと思われたくないし。
「大体私はこの星の人間じゃないから、いつ消えるかわからん。
もしかしたら消えないかもしれないけど、この次の瞬間消えるかもしれない。
そんなのと結婚したら大変だろ、お前」
「それなら、事実婚でいいんじゃない?」
「え、いいんじゃねってうんそりゃ悪くはないけども。
この国的にどうなのそれ。日本ではそういうのもあったけど。ありなの?」
「王様もやってるよ。正妃側室以外に35股!」
「何やってるの王様。滅びたほうがいいんじゃねえの」
ということで。内縁の妻になることになった。
そのあとはちょっと恥ずかしいのでいつも以上に超特急でいかせてもらう。
人生初のまごうことなき初体験のあとなんだか港に錨を下ろしたような安定感を得た。
身体は痛かったが、意外にフリオニール(以降 フィル)は面倒見良くやさしかった。
半年後、喧嘩の末売り言葉に買い言葉で内縁ではなく正式に戸籍上も妻となった。
しばらくして妊娠発覚。フィルの両親とごあいさつ。
フィルの両親はいい人たちだった。実の父母並みに懐いてしまった。
それで涙腺が緩んだのだろうか、マタニティブルーに突入。
私は自分の感情を意外にため込んでいたらしい。
フィル一家の励ましを得て、色々開き直ったり覚悟を決めたりした末、なんとか出産にこぎつけた。
出産自体はとし食ってる割に安産だった。
長男誕生に沸き立つ一家。
しかしよくよく観察すると、幼児にしてはおとなしいというか落ち着いているような?
結婚への懸念事項が自分の失踪なだけなあたり、蔡はフリオニールを結構愛してます。