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労働のススメ

別天地でいきなり新生活を余儀なくされた十里中蔡じぶん

周りにはトーリと呼ばせている。

ビロウの世話になり、フリオニールに連れられて都会に来てみた。

フリオニールの家は家というより資料蔵だった。馬鹿みたいに資料が散乱していて、足の踏み場どころか生活できるのか危ぶまれた。

仕事に慣れるまではここに厄介になるんだが、先行きがいきなり不安だ。

掃除がひと段落ついたところで、実家に伝わる古文書と呼ばれる本を見せられる。

ああ、うん英語だ。まごうことなく英語だ。

ただ分からない単語ばっかりで読み解けない。

他にも色々古文書を見せてもらったら、日本語の本があった。

これが私の国の言葉だと主張したらだろうねと言っていた。

なんか以前教えたひらがなが怪しいと思っていたらしい。

何でもその古文書は国を興した人の一人の日記の一節らしく、今では正確に読み解ける人間がいないので意味がわからないのが大半だという。

え。この国作ったの日本人だったの?

フリオニールが言うには、国の図書館に解読しきれていないフラッドル国創立者の一人の遺産があるらしい。

その創立者は大変多才な人で、簡単に言うとスーパーでウルトラな人だったらしい。出自は不明だが国を起こすきっかけとなった革命に参加し、老若男女幅広く親しまれ、人心掌握に長けていて熱狂的なファンまでいたとか。

でも大切なことはこの国の人にはわからない言葉で書きつづっていたそうで。

没後五百年の記念プロジェクトとして解読を進めていたらしいがほとんど進んでいなかったらしい。

フリオニールも研究者として文字列の一片を渡されていたが、まさかネイティブが目の前にいるとは思わなかったとのこと。まあなあ。

そこで私は仕事はその翻訳のお手伝いとなった。

私の場合日本語は堪能だが、フラッドル語がお子様レベルなのでフラッドル語を学ぶことが仕事の一環になる。



最初に図書館しごとばに入ってみて、私が思ったこと。


「うわあ」


私が一生かかっても創立者の残した本を訳するのは終らないと思う。

だって図書館の巨大な一室丸ごとあったんだから。

フリオニールの家とは違って、整然と整理されている分また違った圧迫感があった。

仕事がなくならないのはうれしいが、私が死んだあとどうするんだろ。

まあ、訳しないほうがいいものもあるだろうし、そこら辺は適当にやるか。読むだけなら全部読めそうな気がするが。

しかし個人の落書きレベルまで翻訳するって、創立者が知ったら墓場から這い出てきそうだな。

そうしてこうして、私はめでたく仕事を手に入れた。



翻訳を進めていくと、遺産の記述に突き当たることがあった。この場合、遺産は創立者の思い入れのありそうな品々のこと。

遺産は日本のことを知っていないと見つけにくいところに隠されたりしていた。

創立者って私とおなじ日本から来た、時代もあんまり変らない人だったんだろうな。しかもラノベとか漫画とかに造詣が深い感じの。

時間的な齟齬は気にならなかった。別の星に来ることがあるならタイムスリップが起こったっておかしくない。

遺産を読み込んでいくと思考が結構トレースできるようになった。

当初危惧していた禁書類やばいしろものはあんまりなかった。

物騒なものではなくむしろ悪口とか生活の知恵とか心温まる一時とか、厨二病的な詩とかが多かった。

日本語で書いてあるあれこれは、年を追うごとに赤裸々になっていった。お前の性生活なんぞ興味はないわ。

役に立つものとして医学知識の覚書とか、家庭の医学的なやつとか、武術の応用とかいろいろあった。

多才な人だと聞いたが絵は下手だったらしい。だから解読が進まなかったんだなあ。

あ、で、日本人じゃないと分かりにくい隠し場所は例えば、ことわざとかふるさとの唄とか某錬金術師の忘れられない日とかがヒントになったりしていた。

ちなみにことわざで出てきたのは動物の首輪。

故郷の唄で出てきたのは故郷への手紙。

某錬金術師のヒントは墓に導かれた。

そういう意味で理解できたのは私だけなんだなあと思うと、創立者に悲しい共感を禁じ得なかった。


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