バイリンガルのススメ
別天地生活突入。
早速ユリアンくんとお手伝い。子供だからか、もともと察しが良いのか。ジェスチャーとカタコトのフラッドル語で割りと意志疎通ができる。
フリオニールさんとビロウさんも私を三歳児だと思って言葉を教えるよう諭してくれたので、説明が分かりやすい。だがユリアンくんは書くのは苦手らしく、そこは一緒にビロウさんに習っている。
腕時計でこの星の一日の時間を計ってみたがどうやら二十四時間周期じゃあないようだ。やたら夜が長いと思ったら、一日が二十七時間でびっくりした。物の数え方は幸い十進法ではあったが、時間や月日の数え方が違うのは面倒だった。英語残ってんならそっちも継承してくれりゃあよかったのに。
ユリアンくんと一緒に単語ゲームや書き取りのお勉強。
あ、勉強ではあの黒板ぽいのを使っている。消さなきゃならないが何度でも書けるのが素敵です。
勉強中ビロウさんはすげえ厳しい。ユリアンくんにはできると誉めるけど私はあんまり誉めてくれない。
まあ大の男にフラッドル語のあいうえお書けたから誉められるってのもちょっと微妙なのでいいか。
今一番仲が良いのはユリアンくん。単語の代わりに教えた日本語を少しずつ覚えてくれて、二人でニヤニヤしている。
それを見てフリオニールさんがちょくちょく混じり、仲間外れは良くないよねってことでビロウさんも巻き込んだ。 細かい説明はできないからひらがなだけ教えた。
あと別天地生活四日目にしてようやく女だとバレた。ビロウがショックをうけていたのが面白かった。ユリアンくんは既に知ってて黙っていたらしい。フリオニールも気づいていなかったんじゃないだろうか。でもビロウの様子に爆笑するのに忙しいようだったので聞きそびれた。
なんでも、ビロウはレディ(笑)に対するこれまでの己の所業に気絶したらしい。彼らの常識からして、レディ(笑)と一緒に男同士レベルで酒呑むのも雑魚寝するのも猥談するのも弱み握りあって遊ぶのもあり得ないらしい。
意識が戻ったあといっとき謝り倒されたが、私を見て女には見えないよな気にすんなと言ったらホントに開き直りやがった。コノヤロウ。
で、曲がりなりにも女なら雑魚寝させるわけにもいかんだろってことで、私はユリアンくんの寝室で寝かせてもらい、ユリアンくんにはビロウかフリオニールのところで寝てもらうことになった。
ユリアンくんなら一緒に寝てもいいんだが?と提案したがユリアンくんに窘められてしまった。男の沽券に関わるそうだ。えー?
だいたい二週間くらいで月日と時間と朝昼晩御飯とトイレとタブーについて合格点をもらった。
あとは食事に出てくる食材。調理名。
調理器具にフライパンらしきものがあったことに感動した。
調味料に塩と胡椒と各種スパイスがあることに安堵した。
遠方に米と醤油らしきものがあると聞いて私はこの星で生きていけると確信した。
ただ醤油はバカ高いらしいので稼いでからじゃないと無理だが。ああ早く手に職つけて金稼がないと!
さすがにいつまでも「さん付け」はしません。