蛇足の「そ」
*****「開き直りのススメ」時点
(フリオニールとビロウの初対面時の話を聞いた蔡)
蔡「えー、じゃあ、普通のお友達なんだ?」
ビ「普通じゃないお友達なんかあるのか?」
蔡「いやあ、なんかあっち(日本)の小説にありそうな導入部だと思ってねー」
フ「は?導入部?」
蔡「うん。窮地を助けられた『イケメン』が『フツメン』に『惚れ』て『めくるめく官能』へ…とか」
ビ「とりあえずろくでもないことを言ってるんだろうが(日本語部分は聞き取れない)
...あえて聞こう。な ん だ そ れ は」
蔡「ぐえっ」
フ「落ち着け、ビロウ。トーリの首絞めたら死んじゃうってば」
ビ「いっそ息の根を止めたほうがいいんじゃないだろうか」
フ「だ―め。ビロウも知ってるでしょ。
俺トーリに求婚中なんだから殺さないでよ」
ビ「その言い分だと殺さない限りはやって良しに聞こえるんだが」
フ「ははは、お仕置きは必要だよね」
ビ「あ、フリオニールもサブいぼ立ててたんだな」
蔡「え、ちょ、助けてくれないんかフリオニール?」
フ「大丈夫。ビロウの後は俺の番だから」
蔡「それぜんぜんだいじょうぶじゃな…ぎゃああああ『ギブアップぎぶ』」
蔡は男向けにも女向けにもびいえる物にも免疫がある雑食主義者。
フリオニールは前後の文脈と雰囲気で何を言われたか理解できてしまってこのあとお仕置きする気満々。
『』の言葉は日本語で統一しているのです。
*****「開き直りのススメ」時点
(ビロウがフリオニールのプロポーズを知った辺り)
ビ「なあフリオニール。
何であれなんだ?もう少しましなやつはいっぱいいると思うんだが」
フ「うーん。そりゃあトーリは見た目超絶美形じゃないし、体がナイスバディかってえとそうでもないし、性格が可愛いかって言われるとそうでもないけど。
ビロウ、トーリよりそばにいて楽しくて、飽きなくて、面白い女なんていないだろ」
ビ「俺はもっぱら振り回されるほうなんだが…」
フ「あっはっは、ビロウはしょっぱなからカウンター食らったもんな。
今でも時々思い出すよ、お前が立ったまま気絶するところ」
ビ「やめてくれ…だってあいつ女にあるまじき態度だったろ?
俺が知る婦女子は大口開けて笑わないし、男と一緒に雑魚寝しないし、男と酒飲んで酔いつぶさせたりしないし、光りものや食えもしない花とかに喜ぶものだ」
フ「ああ、なんだビロウ、君の女性像とかけ離れていたから固まってたのかい?
俺はてっきりフェミニストを気取る君がしたトーリに対するあれこれに自責の念を覚えたのかと」
ビ「それもあるが、まずあいつが女であることを受け入れるほうが体力使った」
フ「そんなに納得しにくいかねえ?」
ビ「フリオニールだって最初はわからなかったんだろ?」
フ「え、最初っから怪しんでたけど」
ビ「え?」
フ「トーリは男っぽくふるまってたり、落ち着いた声でしゃべってたけどな、ユリアンだって気付いたんだぜ?君が鈍すぎるんだと思うんだが」
ビ「ぐ…あれ?じゃあなんであいつが女だって言わなかったんだよ」
フ「ああ、トーリは性別に触れられたくないのかなーと思ったのが一つ。
ビロウは潔癖だから、トーリが女だとわかったら追い出すかもしれなかったのが一つ。
教えるのを忘れてたってのが一つかな」
ビ「四つ目に、面白そうだったからというのがつくわけだな。
よくわかった」
フ「あはは、めがすわってるぞー、ビロウ」
*****「ちょっと昔とこれからの日々」以降
(どしゃ降りのような求婚を受ける娘との会話)
娘『お母さん、お付き合いする前に結婚するのが普通なの?』
蔡『いいや?大体はお付き合いが先だね』
娘『じゃあなんで私にはいきなり結婚の申し込みなの?』
蔡『先を越されたくないンじゃない?』
娘『...まだ私十五なのに。先も何も』
蔡『ま、すぐいい年になるし。
別に一生に一度しか結婚しちゃいけないわけでもないし。
自分が大人になったと思ってから考え始めてもいいんじゃない?』
娘『うーん...』
蔡『ああ、でも妹離れができないと、あっちはあっちで適齢期のがしそうね』
娘『兄さんなら、もういい人いるのよ?』
蔡『ああ、あの可愛い婚約者ちゃんだろう?
でも、いつまでもその人が待っていてくれるとは限らないじゃないか?』
娘『そうねえ、今度兄さん焚き付けちゃう?』
蔡『あの子しつっこいからやめときなさい。
代わりに婚約者ちゃんと遊びに行きましょ』
娘『あー...兄さんも母さんにあの人取られるくらいならって多少頑張りそうだわ』
蔡『娘にまで間男みたいな扱い受けてる...』
娘『だってお母さんかっこいいんだもの』
蔡『はいはいありがとね』
娘「ほんとなのにー」
一家から婚約者ちゃんはなま暖かく見守られている。
万一息子が婚約者ちゃんに無体なマネを働いたら制裁が待っている。
*****「開き直りのススメ」以降
(蔡のビロウ宅訪問)
蔡「ああ、ヴィーネ。久しぶり! 貴女はいつ見ても本当に麗しいな!」
嫁「あら、うれしい。相変わらずお世辞がお上手ね」
蔡「お世辞? ああ、世にある美辞麗句は本来君に捧げるためにあると思っているよ」
嫁「ふふ、今日はゆっくり寛いでくださいな」
ビ「人の妻に向かって何口説いてやがる、トーリ」
蔡「何って、事実確認とあいさつをしただけじゃないか」
ビ「でもお前がやるな。なんかすごく微妙な気分になるから」
蔡「なぜだ。やましい気持ちはないぞ?私は単にキレイなものが好きなだけだ」
ビ「そりゃあ俺のヴィーネは奇麗だが」
嫁「あらあらあら」
ビ「!」
蔡 (にやにやニヤニヤ)
ビ「トーリ、嵌めやがったな...」
蔡「何のことだ?
ともかく私に言えるのは、お前と奥方なら奥方の味方だということだ」
ビ「お前俺の味方になったことあるのか!」
蔡「あははは、ほとんどないな!」
ビロウの奥方はおっとりふわふわちょう美人。
蔡は美之神が旦那に照れ照れしている姿が一番かわいいと思っている。
2020/03/21 誤字修正・追記




