始まりは倉庫の中で
「おーい 新人! どこ行った~~~?」
中年の男の声が薄暗い倉庫の中に響く。 しかしその声はむなしく響くだけで、その中に隠れているはずの男には届かない。
「今日もトナカイのえさやりサボりやがって・・・。 今出てきたら許してやるから早く出てこ~い。」
再び響く。 声が無駄に大きいせいか、この倉庫があり得ないほど広いせいなのか声がこだまのように響いた。
「ここにはいないのか? 他を当たるか・・・?」
男は倉庫の扉を開き、足音を響かせながらどこかへ歩いていった。
音が聞こえなくなった時、たくさん積まれていた木箱のうち、1つがガタガタと音をたてて揺れる。 そして崩れ出した。
崩れた木箱の内、1つから男がゾンビのように這いだす。
「あー。 痛って~な。 もう。」
男は草むらみたくボサボサな金髪を掻きむしる。
「あのオッサン、 しつこすぎるだろ・・・。 さて部屋に帰りますかね。」
男はそのまま出口に向かって歩いていった。 部屋に戻るために。 しかしその考えは一瞬で崩れさった。 男が出る直前にドアが開いたからだ。
金髪の男はドアから出てきた人物を見て、慌てて逃げ出そうとした。 しかし、ドアを開けた男の方が一瞬早かった。
「見つけたぞ! サム! さっさとトナカイに餌あげてこい!」
そういって、さっき倉庫に来た男は丸太のような腕で、サムと呼ばれた金髪の男の首を締めながら歩き出した。
「酷いですよ! カリウス先輩! 昨日も俺じゃないですか!」
サムは解放されようと必死にもがきながら言うが、カリウスはその言葉にこう返した。
「昨日の当番は一昨日お前がやらかした失敗の埋め合わせをしてたんだよ! ソリを建物に激突させるなんて聞いたことないぞ! そもそもスピードだしすぎなんだよ!お前! 生産工場と予知システム 復旧に一週間はかかるって エルフ達、ブチ切れてたぞ!」
サムの顔が一瞬で青ざめる。 余計な仕事がかなり増えそうな気がしていたからだ。
「エルフには俺から謝っといたから、明日から復旧の手伝いすればいいらしいぞ。 もちろん訓練もしながらな。」
カリウスの言葉を聞いて、サムは小さくため息をついた。 これからする苦労の事を考えて。
そのあとサムは、大人しくカリウスに連れて行かれる途中でであったエルフに説教されたのはまた別の話。
クリスマス当日までに完結するように頑張りたいです。 応援よろしくお願いします。