僕らのパーティーはこの世界を無双する ~今日もダンジョンで荒稼ぎ!~
モンスターがあらわれた。
腐臭を放つ生きる屍、現世をさまよう怨霊。
奇怪なコボルトに、汚らわしいオーク。
醜悪に肥えたトロール。
寡黙な戦士は言葉を持たない。
ただ武器を振るい、与えられた任務を果たすことに集中している。
過酷な現場で自然と鍛え上げられた肉体は、敵を倒すことだけが報われたという高揚を返してくれた。
神に仕える信徒に、一片の迷いもない。
異端に天罰を与えることは救済であり、そこに躊躇は存在しない。
熱心な普及活動こそが、唯一信じられる道。全てにおいてのマニュアルだった。
見るからに魔法使いらしい奇抜な服装の少女が炎を放つ。
焦げる臭いが立ち込め、焼け落ちた残骸が地に伏す。
気に留める事もなく、彼女はなおも常人には理解不能な呪文を呟き続けていた。キエロキエロキエロ。
そして。
僕は愛用の魔剣のスイッチを入れる。
けたたましい音とともに回転する刃が、敵の皮膚を裂き、肉を切り、骨を断つ。
ほとばしる返り血を浴びながら、思う。
最近の武器屋は本当に便利だと。
欲しい物を選ぶだけで、遠方にいながら翌日には配送されてくるのだから。
稀少な輝きを放つゴールドを剥ぎ取る。
束になった紙幣通貨を掴み取る。
モンスターにしては、随分と資産を溜め込んでいた。
それらを懐に収め、僕らはさらに奥へと進む。
ダンジョンに眠る財宝を目当てに、探索を続けるのだ。
国からの討伐報奨金も期待できる。
モンスターを駆逐することは、この国の平和を守る行為として認められている。
僕らのパーティは、正義として歓迎されていた。
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「総理、政策は上手くいっております」
静かな執務室。
総理は黙って報告を聞いている。
彼か、それとも彼女か。
その後ろ姿からは、何も読み取れない。
かつて、この国は深刻な問題を抱えていた。
高齢化、年金制度の崩壊、生活保護の逼迫。
働かない若者、引きこもり、ニート。
続く不況に溜まる不満。
社会保障は限界を迎え、国家は静かに崩壊しつつあった。
「若者を冒険者に仕立て、役割と達成感を与えました。
“冒険”に夢中な連中は、現実の政治や経済には文句を言いません。
一方、社会に居場所を失いながらも権利ばかり主張し、国費をかすめ取る老人は排除されています。
頭の固い彼らは、倒されるまで自分がモンスターだと気付かずにいるようです。
そして、彼らが溜め込んでいた富は市場に還流しております。
抱えていた問題は、一気に解決に向かいました。
国民は誰しも英雄譚としてこれを消費し、支持率も上昇しております」
総理は、全て悟っていたかの様に頷いた。
「政治なんて、所詮ファンタジーですから」




