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2.少女再来、その名は

本編には一切関係ないですが、馬好きなので、「その名は」とくると「タイトルホルダー」と書きたくなってしまいますね(笑)

「じゃあ、私は帰るから、施錠だけはよろしくね」

そう言うと社長は倉庫から出て行った。

「さて、と」

倉庫の一角に置かれていた箒を机の上に置く。

今朝倉庫の上に落ちてきた少女の忘れ物、箒型の重力子デバイス、いわゆる空飛ぶ箒だ。

「えーっと、型式は~」

落ちてきたということは、このデバイスが不調ということだろう。

偶然とはいえうちに、重力子デバイスの整備ができるこの場所に落ちてきたのだ。

せっかくであればどこが悪いのかぐらいは特定してあげよう、という優しさだ。

「そう、あくまでも親切心、珍しい箒型を触りたいというやましい気持ちでは...ん?」

箒を端から端まで確認する、が、型式が見当たらない。それどころかー

「重力子制御装置が付いていない?」

重力子デバイスで大なり小なり重力子制御装置がついているのが当然だ、箒型であれば柄の部分や穂の部分についているはずだがそれがない。

「あれ?見落とした?いや、さすがに小型とはいえ制御装置を見落とすわけ...」

ふと彼女がここに落ちてきたときのことを思い出す、彼女は落ちてきたのだ。

ーもしかすると落ちたときの衝撃で外れて外れたか?

「仕方ない、外を探すか」

窓から入る明かりはすでになく、辺りは暗闇に包まれていることがわかる。

「えーっと、明かりはー」

棚に陳列されている備品からランタンを見つけ出す。

社長がキャンプ用に買ったが思ったのと違った、そんな理由でここに置かれているかわいそうなランタンだ。

「電池は...まぶしっ、残ってるな」

試しに点灯させると、LEDは煌々と光を放つ。

一度ランタンの電源を消し、懐中電灯代わりのスマホも持ち扉へ向かう。

扉を開けようかと手を伸ばした時、突風でも吹いたのか、扉がドンと音を立て、窓がガタガタと音を立てた。

「天気悪くなってきてんのか?」

雨だけは降らないでくれと思い扉を押し開ける。

「え?」

「......え?」

ガチャリっと音を立て扉が開く。

その先には、いや、正確にはその先の少し上に彼女は箒にまたがり浮いていた。

「えぇっとぉ......今朝ぶりだね」

「え、はい、今朝ぶりです...」

そういいながら彼女は箒を片手で持ち、地面へふわりと降り立った。

少しの間気まずい空気が流れる。

「あのー...」

そんな空気を壊してくれたのは彼女だった。

「箒、返しに来ました」

「あー、とりあえずどうぞ?」

状況を正しく把握できないまま、俺は彼女を倉庫の中へ案内した。



「粗茶ですが」

パーテーションで区切っただけの簡単な会議スペースに彼女を案内し、冷蔵庫からペットボトルのお茶を1本渡す。

残暑があるとはいえ10月、夜は肌寒くなってきているにもかかわらず冷たいおお茶というのはどうなのだろうと思いながらも押し付ける。

どうもといわれ再びの沈黙...

「あ、箒!、先にに返しとくね」

沈黙に耐えられなくなり、失念しかけていた箒の話を始める。

作業机の上に置いていた箒を取り、彼女のもとへ戻る。

「はい、これ」

そうとだけ言い彼女に箒を返す。

「ありがとうございます」

そういい彼女は箒を受け取り、誤って持って行ったうちの箒を返してくれた。

この箒でさっきは空を飛んでたんだよな...

そう思い軽く箒を確認するが重力子制御装置は当然見当たらない。

あまりにも箒を疑い深く見たせいか、彼女が口を開いた。

「あのー、さっきの見ましたよね?」

さっきの、つまりこの何の変哲もないただの箒で浮いていたことについてだろう。

あと言わないが見えてはいけないところも見えていた。

「あー、うん、この箒で、重力子デバイスでもないただの箒で浮いてるところを見た」

そういうと彼女はうなだれるように「はぁ~~」っとため息をし、意を決したかのようにしゃべり始めた。

「私は、文月琴、魔法使いです」


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