表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラビッツ  作者: 無傷な鏡
81/367

〇八〇 宿命


 朝靄漂う神殿前。


 コンクリが朝の祈祷(きとう)を終えて外に出ると、〈聖なる井戸〉の傍に一人の少年が立ってこっちを見ていることに気づいた。


「トマスか」


 コンクリは少年に向かって声をかける。


「うん」


 少年は虚ろな瞳で無表情に頷いた。


「今日は何だ」


 コンクリはトマスに問いかける。


 トマスは前触れもなく突然、こうして聖なる井戸の傍に立つことがあった。


 トマスの目は虚ろで、精気のない顔をして、感情の伴わない声音で、淡々とコンクリと会話をするのだった。


「服従の儀式を行うんだね」


 トマスは感情のない声でそう言う。


 その言葉で、コンクリはなぜトマスが現れたのかを理解した。


「そうだ。今がそのタイミングなのだ」


 コンクリは真顔でトマスに答える。


「そうだね」


 トマスは相槌を打ち、


「生贄を捧げるんだね」


 と言って、寂しげな笑みを口元に浮かべた。


 コンクリはそれを認めるようにゆっくりと頷き、


「生贄となる者が霊兎族を救うことになる」


 と断言した。


 トマスは宙を見つめる虚ろな眼差しで、じっとして動かない。


 コンクリも何も言わず、じっとトマスの反応を待つ。


 そして、


「もう決まってるんだね・・・」


 トマスはポツリと呟いた。


 そして、ボソボソっとその者の名を口にした。


 トマスの口からその名を聞いて、コンクリは複雑な笑みを浮かべた。


「お前にも見えているのだな」


 コンクリが問うと、


「うん」


 トマスは迷わず頷いた。


 その声音に揺るぎはない。


 その眼差しの先に見えるものはたしかに、コンクリと同じものだろう。


「お前はそれでいいのか」


 コンクリがそう言ってトマスを見つめると、


「それが宿命なら」


 トマスはポツリと答えるのだった。


 それはまるで、その者が服従の儀式の生贄になることは、生まれる前から決まっていたかのような言い方だった。


「宿命か・・・」


 コンクリが憐れみの表情を浮かべると、


「そう、それは宿命なんだ」


 トマスはポツリと、それでいてきっぱりとそれを明言するのだった。


 その無表情な顔、ボンヤリとそこに立つ姿は、不思議な説得力を持っていた。


「ならば、失敗は許されまい」


 コンクリは鋭い目つきでそう言い、その口元に微かな笑みを浮かべた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ