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ラビッツ  作者: 無傷な鏡
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〇七五 公開処刑


 すると、群衆を囲む蛮兵たちが(おび)える人々に向かって進み、それぞれが無差別に住民を鷲掴みにして前へ引き出すのだった。


「ひぇっ、私は何もしていません!」


 ある者はそう言って抵抗し、


「私は敬虔な爬神教の信者です!」


 ある者はその信仰心を訴え、


「罪って、一体どういう罪なんですか」


 ある者は疑問を呈し、


「許してください!」


 ある者は許しを求めた。


 そして、


「お母さぁーん!うぁあああ!」


 母親から引き()がされた男の子が泣き叫ぶ。


 蛮兵は子供だからといって容赦はしない。


「この子にどんな罪が犯せるというのですか!」


 母親は蛮兵にすがりつき、


「邪魔だ!」


 蛮兵は怒鳴って母親の顔を思いっきり殴りつけるのだった。


 群衆の前に引き出された住民は口々に無実を訴え、救いを求めた。


「私は罪なんて犯していません!」


「私は毎日ドラゴンに手を合わせて生きてるんです。そんな私が罪を犯すわけがありません!」


「何かの間違いです、これは!」


「神に誓って私は無実です!」


 必死に蛮兵たちに訴える者たち。


 そして、


「おお、神よ・・・」


 神に祈るしかないと悟った者いて、


「た、たすけて・・」


 あまりの恐ろしさに失禁する者がいる。


「どうして私が・・・」


 ただ絶望する者は力なく肩を落とし、


「わぁあああああ」


 恐怖のあまり泣き叫ぶ子供も一人や二人ではなかった。


 群衆の中から恐れ慄き神に祈る人々の声や、引き出された者の家族だろうか、無実を訴える叫び声、子供の泣き声、女性の悲鳴などが聞こえてくる。


 この様子を鬼のような形相で見ていた護衛隊隊長ミズホは、背後に整列する部下に振り向き厳しく命令する。


「何があってもお前たちは動いてはならない。時が来るのを待て」


 と命じたうえで、ミズホは剣を抜いた。


「ミズホ様!」


 副隊長のラルスが小さく叫び、その声を背中に聞きながら、ミズホは駆け出していた。


 ミズホは音もなくゴリキ・ド・ゴリキに襲いかかる。


 ゴリキ・ド・ゴリキの背後で高く跳び上がり、その頭上から剣を振り下ろした。


 ビュンッ!


 だが、


 何奴!・・・


 ゴリキ・ド・ゴリキは咄嗟(とっさ)に左手で頭部を(かば)い、ミズホの剣を受けた。


 ガッ!


 剣はゴリキ・ド・ゴリキの手の甲を打った。


「ど、どういうことだ・・・」


 ミズホの渾身の一撃は、ゴリキ・ド・ゴリキの手の甲を打っただけで、(かす)り傷さえ負わせることはできなかった。


「愚かな・・・」


 ゴリキ・ド・ゴリキはそう呟きながら後ろを振り返ると、右手でミズホを鷲掴みにし、鷲掴みにしたミズホの体を群衆に向かって突き上げた。


「我々に逆らうことは、神に逆らうことである」


 ゴリキ・ド・ゴリキはそう告げ、左手でミズホの頭部を掴むと、


「愚か者の最期を見るがいい!」


 と叫びながらその頭部を握り潰したのだった。


「ひっ!」


 ミズホの悲鳴が聞こえた気がした。


 ブシャッ!


 ミズホの頭部はいとも簡単に潰され、ゴリキ・ド・ゴリキの手からその血が滴った。


 ゴリキ・ド・ゴリキはミズホの潰れた頭部を胴体から引き千切って口に運び、手のひらを舐めるようにして食らうのだった。


 ミズホの残された体はゴリキ・ド・ゴリキの右手に握られ、ただの肉の塊と化していた。


 誰も目を逸らすことは許されていない。


 群衆は静まり返り、護衛隊の隊士たちは瞬きをすることさえ忘れミズホの最期を見届けた。


 あの屈強なミズホがいとも簡単に殺されるなんて、信じられない光景だった。


 ゴリキ・ド・ゴリキは右手に握るミズホの体を顔の高さに持ち上げると、口を大きく開けてかぶりつき、腹のあたりまでを一気に食い千切った。その口元からミズホの両腕がはみ出していた。


 ゴキッ、ボキッ、ボキッ・・・


 骨の砕ける音が聞こえ、ムシャムシャと咀嚼するのに合わせ、口元からはみ出していたミズホの両腕が小刻みに揺れながら口の中に消えていき、ゴリキ・ド・ゴリキは満足そうにそれを飲み込んだ。


 それから、


「美味いぞ」


 と言い、ミズホの残りの部分をデウォの前に投げ捨てるのだった。


 デウォは丁重に頭を下げると、喜んで投げ捨てられたミズホの肉を食らう。


 その光景は広場に集まる群衆にとって戦慄の光景だった。


 蛮狼に食べられたということは、ミズホの魂は地獄に落ちるということだ。


 その光景を誰よりも恐怖に駆られ見つめていたのは罪人として前に引き出されていた住民たちだ。そのあまりにも(ひど)い光景を目の当たりにし、ただ震えているのだった。


 ゴリキ・ド・ゴリキは口元についた血を右手の甲で拭うと、静まり返る群衆を見渡し刑の執行を命じた。


 ゴリキ・ド・ゴリキは右手を高々と上げ、


「刑を執行せよ!」


 と叫びながら、その手を前方へ振り下ろした。


 それが合図だった。


 刑の執行は残酷極まりないものだった。


 ある神兵は若い女の胴体部分を鷲掴みにし、ゆっくりと握り潰していった。


「や、やめて・・・」


 恐怖に顔を引きつらせる女。


 ポキッ、ポキポキッ・・・


 骨が折れる音がし、


「ぎゃああああああ」


 断末魔の声を上げる。


 神兵は苦しむ霊兎の姿を見て楽しんだ。


 ただ殺すのが目的ではない。


 それを見ている群衆に恐怖を味わわせる事こそが目的なのだ。


「うぎゃぁあああああ!」


 一つひとつ目を潰される者がいて、


「ぎゃぁあああ!やめてぇえええ!」


 髪をむしり取られ、頭の皮を剥がされる者がいる。


 その苦痛と恐怖に満ちた表情は神兵たちにとってたまらないものだった。


「うぐぅあああああ!」


 顔をゆっくりと押し潰され、骨を砕かれる者。


「やめてくれぇええ!」


 腹を割かれ、腸を引き出される者。


「ぎゃああああ!痛いよぉおおお!お母さあああん!」


 腕をもがれ、泣き叫ぶ子供。


 広場には絶叫の声が響き渡った。


 罪人とされた霊兎は様々な方法で苦痛と恐怖を与えられ、簡単には殺されなかった。


「ぐぎぃああああああ!」


「うぎゃぁあああああ!」


「やめてくれぇえええ!」


 その痛ましい叫び声は、確実に、広場に集まる群衆に震え上がるほどの恐怖を与えた。


 そして、処刑中の霊兎が十分に苦しみ、ぐったりとして生き絶える間際になって、神兵は最後の苦しみを与えて息の根を止めるのだ。


「ぎゃああああああ」


 ブシャッ!


 頭を潰される者がいて、


「ぎゃっ!」


 ガンッ!


 頭を地面に叩きつけられる者がいて、


「たすけてぇえええ」


 ガブッ!


 頭からそのままかぶりつかれる者がいた。


 神兵たちは霊兎の頭部を食い千切り、手についた肉を舐め、うまそうに食べるのだった。


 神兵は霊兎の頭部を食べると、その体の残りの部分は必ず蛮兵に向かって投げ捨てた。


 投げ捨てた霊兎の体を蛮兵たちに食べさせるためだ。


 神兵が残虐に行う殺戮は肉体における恐怖であり、蛮兵に食われることは地獄へ落ちることへの恐怖だった。


 そのあまりの残虐な光景に反射的に目を背ける住民もいたが、


「目を背けたな!」


 すぐに蛮兵に見つかり、神兵の前へ引き出された。


 広場から逃げ出そうとする霊兎もすぐさま蛮兵によって捕らえられ、広場を囲む神兵の前へ引き出されるのだった。


 広場で繰り広げられる殺戮。


 それを目を見開いて見続けなければならない住民の中には、卒倒して倒れる者もいたが、倒れた者はすぐさま蛮兵によってその場で食い殺された。


「ぎぁあああああああ!」


「うわああああん!」


「たすけてぇえええ!」


「きゃあああああああ!」


「うぎゃぁあああああ!」


 至る所から上がる霊兎たちの断末魔の叫び声で広場は阿鼻叫喚の地獄と化していた。


 そんな霊兎たちの絶叫が、ゴリキ・ド・ゴリキの耳に心地よかった。


 しばらく殺戮が続き、広場が血と恐怖に染まった頃、ゴリキ・ド・ゴリキは処刑を止めた。


「やめ!」


 ゴリキ・ド・ゴリキの号令により、神兵たちは動きを止める。


 ゴリキ・ド・ゴリキは恐怖で震え上がる広場の群衆に向かって大声で叫んだ。


「ドラゴンを恐れよ!我が爬神族を恐れよ!さもなくば、神は怒り狂い、いつでも血の雨を降らせるだろう!」


 ゴリキ・ド・ゴリキの声が広場に響き渡ると、群衆は処刑が終わったことに気づき、広場全体が放心状態の静けさに包まれるのだった。


 統治兎神官コンミンはあまりにも衝撃的な光景に、椅子に座ったまま息絶えていた。


 爬神軍が去った後、広場には血の海が残され、いたるところにスペルス住民の食い千切られた骨や肉片が転がっているのだった。


 それはあまりにも無惨な光景だった。


 こうして罪のない多くの住民が無差別に、そして残酷に処刑されたのだった。


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