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ラビッツ  作者: 無傷な鏡
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〇二九 運命の出会い


 アジとセジの二人もタケルの後に続いてスラム街に入り、タケルを真ん中にしてアジを右、セジを左にして三人は横並びになって歩いた。


 スラム街の路地は広くはないものの、子供が三人肩を並べて歩くぐらいの幅はあった。


 スラム街は独特の悪臭が鼻をつき、三人とも鼻をつまんで顔をしかめてしまう。


 腐った魚や野菜の残りカスなどが路上に当たり前に投げ捨てられているし、その捨てられた魚や野菜のカスを求めて野生の鳥たちが集まって来るのだろう、鳥の糞がいたるところに落ちていて、あばら家の屋根や板壁も鳥の糞で汚され、それが際立ってスラム街を不潔にみせているのだった。


 こんなところに人は住めるのか。


 そう思わずにはいられなかった。


 目に映る光景は不潔でゴミ溜めのようだ。


 それでも三人は慣れない異臭に顔をしかめながら、スラム街の実態を目に焼きつけようと路地を歩き続けた。


 三人にとってこれはまさに未知の世界を探検しているようなものだった。


「こりゃ、ひどい」


 タケルはたまらずそう声を漏らす。


 タケルはその貧しく汚らしい路地の様子にショックを受けていた。


 今までウオチは豊かな町だと思っていた。


 みんな穏やかに暮らしていると思い込んでいた。


 まさかこんなに貧しい暮らしがあるなんて、想像もしていなかった。


 タケルは自分の知らない世界を目の当たりにして言葉を失っていた。


「これは人が住むところじゃない・・・」


 ショックを受けているのはアジも同じだった。


 スラム街は貧しい人の住む場所だということは知っていたけれど、ここまでひどい状態だとは思わなかった。


 セジはスラム街のその不潔な状況を嫌悪して、


「きったない」


 ただそう吐き捨てるだけだった。


 路地に人気はなかった。


 軒を連ねるあばら家の中に人の気配は確かに感じるのだが、息を潜めて三人の侵入者が去るのを待っているかのように静まり返っているのだった。


 三人が人気のないスラム街を歩いていると、入り口の戸が開いている一軒のあばら家の前を通りかかった。


 タケルがその家の前を通り過ぎながら薄暗い入り口から中を覗くと、地ベタに座る小さな女の子がいて、その女の子はタケルの視線に気づくと、顔を上げてタケルを真っ直ぐに見つめた。


 そして、女の子はタケルに向かってニコッと微笑むのだった。


 その純粋な眼差しと屈託のない笑顔があまりにも悲しくて、タケルは胸が抉られるほどの強い衝撃を受けた。


 タケルの目に涙が滲んでくる。


 それはタケルが今まで感じたことのない不思議な感情だった。


 タケルはその家の前を通り過ぎても、しばらくその女の子の笑顔が頭から離れなかった。


 そんなタケルの様子に気づいたのはアジだった。


「タケル、大丈夫か?」


 アジが心配そうに声をかける。


「あ、ああ」


 そう曖昧な返事を返し、タケルはさり気なく今にも目からこぼれ落ちそうな涙を拭った。


「タケル、しっかりしてくれよ」


 セジがそう言って元気のないタケルの背中をポンッと叩くと、


「ありがとう、セジ」


 タケルはそう応えて微笑んだ。


 しかし、あの少女の笑顔に、タケルの心は揺さぶられたままだった。


 こんな劣悪な悪臭漂う環境でさえ、あの少女の笑顔を汚すことはできない。


 そう思いつつも、その笑顔の奥に見えた諦めのようなものが、タケルの胸を締め付けているのだった。


 あの少女はこれからどんな人生を歩むことになるのだろう。


 タケルは少女の幸せを祈らずにはいられなかった。


「人間って凄いよね。こんなところでも生きていけるんだから」


 アジが感心すると、


「ここで暮らす人たちは何のために生まれてきたんだろうな」


 タケルはそう返して黙り込む。


 そんな二人のやりとりに興味を示さず、セジは鼻をつまんで必死に悪臭に耐えているのだった。


 タケルとアジの二人はスラム街の衝撃的な光景に気を取られ、路地に漂う悪臭が気にならなくなっていた。


 しばらく歩くと、路地の先が明るく見えてきた。


 そこに出ればスラム街を抜け出たことになる。


 抜け出た先がとても明るく見えるのはなぜだろう。


 気持ちも軽くなっていく。


「もう終わりか・・・」


 タケルはそう呟いていた。


 タケルは色々考えさせられたせいで、スラム街の中にいた時間をあっという間に感じていた。


「無事、探検終了ってことだね」


 アジはそう言って胸を撫で下ろす。


「く、くさ・・・」


 セジは出口が見えると悪臭が我慢できなくなってスラム街の外へ向かって走り出し、そしてスラム街から飛び出した。


 スラム街を抜けると、そこは市街地に続く道路に面した空き地になっていた。


 世界が明るくなり、気持ちも晴れやかになる。


 セジは一刻も早くスラム街の悪臭いから離れようと、道路に向かって歩く。


 そして少し離れたところまで来ると、


「ぷはぁー」


 ずっと息を止めていたセジは、一気に息を吐いてから、思いっきり新鮮な空気を吸い込んだ。


「あー、死ぬかと思った」


 と安堵(あんど)したその瞬間、


 ドンッ!


 セジは背後から肩を突き飛ばされ、前につんのめって転んだ。


「痛いな!」


 セジが怒鳴って振り返ると、そこに茶髪の少年が立っていた。


 茶髪の少年の後ろにも何人か少年が立っているのが見える。


「ここで何をしてる」


 その少年は怒りを帯びた口調で尋ね、鋭い眼差しでセジを睨んだ。


「あ、あの・・・」


 セジは恐怖に駆られ声が出なかった。


 セジが路地を飛び出して視界を右に消えていくと、嫌な感じの少年たちが左から現れセジの後を追ったように見えた。


「なんだ、あいつら」


 アジの表情が険しくなり、


「やばくないか」


 タケルもその表情を強張らせた。


 ここはスラム街だ。


 何をされるかわからない。


「行くぞ」


 タケルが言い、


「うん」


 アジがそう応え、二人は慌てて駆け出した。


 二人がスラム街から飛び出すと、地面にうずくまるセジを六人の少年が取り囲んでいるのが見えた。


 その少年たちは見たところタケルやアジと同じくらいか、一つ二つ年上といった感じだった。


 どの少年もやせ細っていて顔色も良いとはいえない。


 上着の筒型衣も薄汚れていて、ズボンもところどころ()り切れて穴が開いている。


 一人だけ烏人にしては珍しい茶髪の少年がいて、彼が少し離れたところで腕を組んで立ち、仲間の一人が屈んでセジの頭を押さえつけながら、セジの服やズボンをまさぐっているのがわかった。


 セジはうずくまって恐怖に震えていた。


 それを残りの四人が囲んでニヤニヤしながら見ているのだった。


 その残酷な光景に、


「やめろ!」


 タケルとアジは同時に叫び、セジを囲む少年たちに向かって行った。


 二人の怒鳴り声が辺りに響くと、六人の少年全員が二人に振り返った。


 その少年たちの目つきにタケルとアジはゾッとした。


 少年たちの目は飢えた獣の目のような、背筋が寒くなるほどの殺気を帯びたものだった。


 少年たちの頬はこけ、唇はかさかさで精気を感じない。


 少年たちは何も言わずただじっと二人を睨みつけた。


「兄さん、助けて!」


 セジが二人に気づいて声を上げる。


 アジはその声を聞くと無我夢中で少年たちに突っ込んでいった。


 タケルもアジに続く。


 セジを囲む四人の少年たちはセジから離れ、応戦しようと茶髪の少年の後ろに並んで立つ。


「ここは俺に任せろ」


 茶髪の少年は仲間の少年たちにそう告げると、胸の前で両手の拳を握り、前屈みになって二人を迎え撃つ体勢をとった。


 セジの服をまさぐっていた少年は、


「逃げたら殺すぞ」


 と(おど)し、セジの髪の毛を鷲掴みにして押さえつけ、茶髪の少年に目を向けるのだった。


 アジはまっしぐらに茶髪の少年に飛びかかった。


 茶髪の少年は掴みかかろうとするアジをひらりと右に(かわ)すと、躱しながらアジの左腕を取って振り回し、背中を強く押すようにして思いっきり突き飛ばした。


 アジは勢い良く転んだ。


 転んだときに地面に右肩を強かぶつけてしまう。


「ぐっ・・・」


 アジは肩を押さえ、痛みに顔をしかめる。


 アジの後ろから走ってきたタケルは拳を振り上げ、


「うぉおおお!」


 勢いに任せて殴りかかるが、茶髪の少年はすっと屈んでタケルの拳を躱しつつ、


 ドスッ!


 その腹に自らの拳を入れるのだった。


「ぐはっ」


 タケルは膝から崩れ落ち、地面に手をついてうずくまる。


 そんな二人に、


「やっちまえ!」


 仲間の少年がそう叫んで襲いかかろうとするのを、


「やめろ!」


 茶髪の少年が止めた。


 茶髪の少年はじっと二人を睨みつけ、二人が立ち上がるのを待った。


 すぐに、


「くっそ」


 アジは悔しそうに立ち上がり、


「まだまだ」


 タケルも歯を食いしばって立ち上がった。


 二人とも体は鍛えているので回復は早かった。


「ふーん」


 茶髪の少年は二人を値踏みするかのように交互に睨みつける。


「よそ者がここに何をしに来た」


 茶髪の少年は怒りを抑えた声で二人に尋ねる。


 それにタケルは素直に答えた。


「スラム街を探検しに来ただけなんだ」


 当たり前のようにそう言うタケルに、茶髪の少年の表情が険しくなる。


「俺たちは見世物ってことか」


 茶髪の少年は怒りの眼差しでそう吐き捨てる。


 そう言われてタケルははっとした。


 スラム街を見世物だと思ったことはないし、タケルにあったのは単純に未知の場所に足を踏み入れたいという好奇心と、元老家の人間としてスラム街を知っておくべきだという気持ちだけだった。


 だから茶髪の少年に思ってもみない言葉をぶつけられ、タケルは困惑し返事ができなかった。


「いや・・・」


 タケルは口ごもってしまう。


「見世物だなんて思ってないよ」


 そう答えたのはアジだった。


「ふんっ」


 茶髪の少年はそれを鼻で笑う。


「その恰好からすると、お前たちは高台暮らしのいいとこのボンボンだな。さぞ、俺たちのこの汚い恰好を見て笑ってるんだろうな」


 茶髪の少年のその怒りを押し殺した淡々とした口調が、タケルの胸を抉った。


 タケルは茶髪の少年から目を逸らし、


「そんなつもりじゃ・・・」


 そう応えるのが精一杯だった。


 茶髪の少年の目の奥にある諦めのようなものが、さっき見た少女の眼差しと重なったのだ。


 よくわからない感情が湧き上がってきて、タケルはどうしていいかわからなくて、その顔を歪めるのだった。


 その感情が、苦しみなのか、悲しみなのか、憐れみなのか、憤りなのか、それともそれらすべてが混ざりあったものなのか、タケルにはわからなかった。


 ただ、今まで経験したことのない、救いようのない感情ということだけは間違いなかった。


 自分の感情に戸惑うタケルに、


「そんなつもりじゃないなら、どういう目的があって来たんだ」


 茶髪の少年は容赦のない言葉を浴びせた。


 タケルは思い詰めた表情で顔を上げると、茶髪の少年の目を見て、


「自分の知らない世界を知りたかったんだ」


 そう正直に自分の気持ちを伝えた。


「本当だよ。俺たちはスラム街がどういうところかただ知りたかっただけなんだ」


 アジも茶髪の少年に向かって自分たちに悪意がないことを訴える。


「知ってどうするつもりだ」


 茶髪の少年は二人の言い訳を一蹴する。


 茶髪の少年のその一言で、


「・・・」


 二人は言葉を失ってしまう。


 知りたかった。ただ、知りたかった。それはただの好奇心。興味本位と言われれば、それに返す言葉はない。


「お前らはただの遊び半分かも知れないが、俺たちにだって人間としてのプライドはあるんだ。探検かなんか知らないが、俺たちは見世物じゃないんだぞ!」


 茶髪の少年は怒りの感情を言葉にし、タケルとアジにぶつけた。


 二人は言葉なく俯くだけだった。


 セジはただ呆然とこのやり取りを眺めていた。


 茶髪の少年は二人をじっと見つめる。


 その眼差しは鋭く、それでいてどこか遠くを見つめるような眼差しだった。


 茶髪の少年のその感情のない眼差しは、タケルとアジの人となりを見極めようとしているかのようにも見える。


 それはほんの短い時間だったかも知れない。


 しかし、タケルとアジにはそれがとても長い時間に感じられた。


 その目に感情のようなものが戻ってくると、茶髪の少年はひとつ深呼吸をし、固い表情を微かに緩めた。


「今日は許してやる」


 茶髪の少年はあっさりとそう告げた。


 その顔は微かに笑みを浮かべているようにも見えた。


 茶髪の少年の言葉に驚いたのは仲間の少年たちだった。


「え、いいの?」


「せめて服だけでも欲しいんだけど」


「俺はこいつらの靴が欲しい」


 そんな不満の声が少年たちから上がる。


「お前らは黙ってろ!俺が決めたことに文句は言わせないぞ」


 茶髪の少年が一喝すると、仲間の少年たちはシュンとしてただ俯くだけだった。


 セジを押さえつけていた少年も、


「命拾いしたな」


 そう言ってセジから手を離して立ち上がる。


 自由の身になったセジは、


「兄さん!タケル!」


 と叫びながら二人の元へ走った。


「セジ、大丈夫か」


 アジが尋ねると、セジは若干震えてはいたものの、


「うん。大丈夫」


 と頷き、それを見て、


「ありがとう」


 タケルは茶髪の少年に向かって礼を言った。


「二度と来るな」


 茶髪の少年はそう吐き捨てると、仲間の少年五人に目で合図をしてから、三人に背を向け歩き出した。


 茶髪の少年が(かも)し出している不思議な雰囲気に、タケルは惹きつけられていた。


 なぜだか、この少年とまた会いたくなった。


 この少年にまた会いたい、という衝動に駆られた。


 今、この瞬間を逃してはいけない・・・


 タケルはそう思った。


「名前を教えてくれないか」


 タケルは茶髪の少年の背中に向かって声をかけた。


 驚いたのはアジとセジだった。


「タケル、やめろ」


 アジが小声でタケルを止める。


 セジは目を丸くし、茶髪の少年に目を向けた。


 茶髪の少年はタケルの声に立ち止まり、静かに振り返る。


「聞いてどうする?」


 茶髪の少年はそう言ってタケルの目を見つめ、タケルの真意を探る。


「君にまた会いたいんだ」


 タケルは正直な思いを伝え、そして自分のその声が微かに震えていることに驚いた。


「は?」


 茶髪の少年はタケルの言葉の意味が理解できなかった。


 今までそういう風に言われたことがなかったから、何かの聞き違いかと思ったのだ。


 怪訝な表情を浮かべる茶髪の少年に、


「また君に会いたいんだ」


 タケルははっきりと伝える。


 それは突拍子もない言葉であり、茶髪の少年には高台に住むボンボンが自分をからかっているようにしか思えなかった。


 茶髪の少年はその目に苛立ちの色を浮かべ、


「お前は頭がおかしいのか?」


 タケルに向かってそう吐き捨てた。


 タケルは首を横に振ると、しっかりと茶髪の少年の目を見て、


「今度はちゃんと君に会いに来るよ。それならいいだろ」


 そう笑顔で答えた。


 茶髪の少年はタケルが本気だと気づいて驚いた。


「お前、おもしろい奴だな」


 茶髪の少年はそう言って笑みを浮かべる。


 その笑顔を見て、タケルは自分の胸に渦巻いていた得体の知れない感情が救われ、鎮まっていくのを感じるのだった。


「だから、名前を教えてくれ」


 タケルは改めて名前を尋ねた。


 茶髪の少年は真顔になり、俯きがちに宙を睨んでしばらく黙っていたが、心の中の何かをきっかけに顔を上げると、タケルの目をしっかりと見てふっと笑う。


 それから、


「サスケ」


 茶髪の少年はポツリと自分の名を口にすると、踵を返し、仲間と共にスラム街の路地へと消えていったのだった。


「サスケかぁ」


 帰り道、タケルは嬉しそうに茶髪の少年の名前を呟いた。


「タケル、大丈夫か?」


 アジが心配そうに声をかけると、


「うん?大丈夫に決まってるだろ」


 タケルは平然と答える。


 タケルはあの茶髪の少年を気に入ったみたいだけど、アジにはそれが理解できなかった。


 アジの目には、セジを取り囲む少年たちの姿が焼き付いて離れなかった。


 少年たちに取り囲まれて(おび)えるセジの姿を思い出すと、あの少年たちを許せない気持ちで一杯になるのだった。


「タケル、俺はあいつら嫌いだな」


 セジもそう言って嫌な顔をする。


 一番恐ろしい目に合ったセジは、二度とスラム街に近寄りたくなかったし、自分の服をまさぐった少年たちのことを思い出すのも嫌だった。


 不安にかられる二人に、


「友達になれる気がするんだよなぁ。あの、サスケって奴」


 タケルは爽やかにそう言ってのける。


「そんな気がするだけだろ」


 アジが言い返すと、


「サスケとは初めて会った気がしないんだ。だから、間違いない」


 タケルはそう断言して胸を張った。


「ほんと?」


 アジが聞き返すと、


「ああ、ほんとだ」


 タケルは笑ってそう答え、


 バシッ!


 と、アジの尻を強く叩いた。


「いてっ!」


 アジはそう叫んで飛び上がると、


「ほんとだな?」


 と念を押して、


 バシッ!


 と、タケルの尻を仕返しとばかりに思い切り叩き返した。


「おー、いたっ!」


 タケルは大袈裟に飛び上がって痛がり、


「ほんとだよ!」


 と、大声で答えて嬉しそうに笑う。


 タケルがそこまで言うなら、サスケって奴を受け入れてもいいかな・・・


 アジはそう思った。


「なら、お前を信じるよ」


 アジはそう言って頷いた。


「俺は信じない」


 セジは涙目で訴える。


 もうあんな怖い思いはしたくない・・・


 それがセジの正直な気持ちだ。


「セジ、大丈夫だって」


 タケルはそう声をかけてセジの頭を撫でる。


 タケルのその手の感触に安心して、セジの気持ちも少し落ち着いてくる。


「ほんと?」


 セジがそう念を押すと、


「ほんとだよ」


 タケルは胸を張って答える。


 すると、


「俺のお尻は叩かないのかよ」


 セジは不満そうに呟くのだった。


 セジはタケルにそっぽを向く。


 そのセジの拗ねる姿がかわいくて、


「ほんとだよ!」


 タケルは改めてそう言うと、思いっきりセジの尻を叩いた。


 バシッ!


「いたーい!」


 セジはそう叫んで飛び上がると、痛みに顔をしかめながら尻を擦って嬉しそうに笑う。


「ははは」


 帰り道、三人の笑い声が、人通りの少なくなった街の通りに響くのだった。


 これがサスケとの出会いだった。


 人の縁とは不思議なもので、遊び半分の好奇心に導かれた出会いが、そののち固い友情で結ばれる運命の出会いになるとは、誰が想像しただろうか。


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