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富士樹海のダンジョンの調査と、バックアップワールドへの転移

「そう言えば、ゼロイチ先輩。

アーティフィシャル シー フォースが、4体って言ってたけど……


何処に居るの?」


嫁が、不思議そうな顔をしながら、

ゼロイチ君に質問をする。


「そこに居はるやん。」


「タイヤが4つ付いてる、

ヘンテコなバイクじゃん。」


「ヘンテコな。って……

四輪バイクちゅう、立派な乗り物やで。」


「へ~。でっ、

アーティフィシャル シー フォース。

馬さんは、何処に?」


「そこに居はるやん。」


嫁とゼロイチ君の会話が、微妙に噛み合わない。


「セプモちゃん。アケモン君。

ちょっと来て。」


「ほい。」・「はい。」


レサさんに呼ばれて、

僕と嫁は、1台の四輪バイクの横に集まる。



◇◇◇



「アーティフィシャル シー フォースは、

魔法科学で、人工的に作られた機械の馬なの。


でっ、今は四輪バイクの形だけど……

このボタンを押せば、シー ホースみたいになるのよ。」


レサさんが、そう言いながら、

四輪バイクのボタンを押す。



「ヒヒィィィーン」・【ボン】



馬の嘶きのような声と共に、

四輪バイクが、馬の形に変化する。



「でっ、四輪バイクに戻す時は、ここを押す。」



【ブルルルン】・【ボン】



今度は、機械音と共に、

馬が、四輪バイクに変化した。



「カッケー。」


嫁が、キラキラした目で、

アーティフィシャル シー フォースを見ている。



「燃料はバイオエタノール。


簡単に言えば、そこら辺の雑草。


シー ホース モードにすると、

勝手に燃料補給をしてくれる、優れ物よ。


それと……

シー ホースって、どんなモンスターか覚えてる?」


「え~と。確か……


重種馬と呼ばれるサイズの大型の馬のモンスターで、


普通の馬との違いは、

回復魔法を使って、1時間、ぶっ続けで、全力疾走する事が可能なところ。


それと……

川や海では、足を鰭に変化させて、泳いだりする事も可能。」


「良く出来ました。」


レサさんが、

ニコニコしながら、僕を誉めてくれる。


「パパの癖に、生意気な。」


嫁が、頬をプクっと膨らませながら、

僕を睨んでくる。


「ドウドウ。セプモちゃん。


アケモン君の言う通り、

シー ホースは、海や川を泳ぐ、水陸両用の生物。


でっ、アーティフィシャル シー フォースは、

その利点も、完全に再現しているわ。


馬モード・四輪バイク モードに関わらず、

水上を移動する事も可能よ。



それと……

アーティフィシャル シー フォースは、機械で出来てる人工の生物。


だから……

生き物である、シー フォースと違って、


壊れるか、燃料切れになる以外は、

24時間、365日、全力を出し続ける事が可能よ。



ここまでで、分からなかった事はある?」


「ないよ。有り難う。」×2


僕と嫁は、

説明してくれたレサさんに、短い返事をする。


「素直で、宜しい。

では、次は、荷物を積んでいきましょう。」


レサさんが、にこやかな笑顔で、

僕と嫁に指示を出す。


能面のように、顔色を変えない、

今までのレサさんからは、考えられない光景だが……

不思議と違和感が無い。



◇◇◇



「ふう。準備完了。」


嫁が満足そうな顔をしながら、


四輪バイク モードにしている、

アーティフィシャル シー フォースを眺めている。



アーティフィシャル シー フォースの左右に荷物を載せられるように、サイドバッグ用のステーを取り付けた。


右側には、

キャリーケース側のマジックボックスを載せ、

左側には人外地の標準装備の背嚢(リュックサック)を載せている。



キャリー ケース型のマジックボックスの中身は、


嫁のアーティフィシャル シー フォースに載せているのが、

僕達が、キャリー カートに載せて来た、お菓子やジュース等の嗜好品が入っている。


レサさんのアーティフィシャル シー フォースに載せているのが、

主にレサさんが異能で生み出した分身が使う、様々な武器が入ってるらしい。


そして、

ゼロイチ君のアーティフィシャル シー フォースに載せているのが、

科学・魔法・魔術等、様々な世界の物に対応した、

魔法科学のPCやタブレット・携帯のような物が入ってるらしい。



因みに、僕のアーティフィシャル シー フォースに載せているのは、中身は何も入ってない。


調査中に、気になる証拠品を見つけたら、

このキャリーケースに入れて、持ち帰って欲しいと、

コロチンさんに渡された物だ。



ゼロイチ君のアーティフィシャル シー フォースの、背中の後ろにある荷台には、

ペット キャリーに入った、ヴォルが居る。


レサさんの、アーティフィシャル シー フォースの、背中の後ろにある荷台には、

ペット キャリーに入った、ニャレスが居る。


そんでもって、

嫁の、アーティフィシャル シー フォースの、背中の後ろにある荷台には、

肩掛けタイプの小動物用のキャリーバッグごと、ペット キャリーの中に入れられた、ドンソンとコイリドが居る。



因みに、僕の、アーティフィシャル シー フォースの、背中の後ろにある荷台に設置されたリア ボックスの中には、


コロチンさんが、念の為にと言って、


他世界(パラレル ワールド)で流通している、様々な種類の貨幣を封印してくれた小瓶と、


アーティフィシャル シー フォースが、

馬車モードでも、バイクモードでも、違和感なく牽ける、トレーラーを封印してくれた小瓶が入ってる。



このアーティフィシャル シー フォースが、

馬車モードでも、バイクモードでも、違和感なく牽ける、トレーラーは、幌馬車サイズの大きな物だ。


ダンジョンが現れる以前ならば、

この大きさのトレーラーをバイクで牽けば、道路交通法違反で捕まっただろう。



だけど……

巨大な異空間の中に有り、

モンスターが蔓延る、不整地だらけの土地で、

更に、大きな物でも、いざとなれば、小瓶に封印する事が出来る、封印魔法が使える、ダンジョンの中では、

バイクで牽ける、大型のトレーラーが、重宝するらしい。


そんでもって、

ダンジョンから獲れた物を、

ダンジョンから出たら、いちいち、トラックに積み替えて、

倉庫に持って行くのは、面倒臭い。


そんな意見が出た事もあって、

バイクで牽引する事が出来る、トレーラーの規制緩和が、大幅に進んだのだ。



「ほな。行こか。

レサ。先導よろしく。」


「了解。」


ゼロイチ君の合図で、

僕達は、アーティフィシャル シー フォースに跨がり、

富士樹海のダンジョンの制御室に向けて移動を始めた。



◇◇◇



【バッ・バッ・バッ】



レサさんの手信号で、止まれ!と合図する。


先頭を走るのは、レサさん。

次が嫁。僕、ゼロイチ君と続く。


フルフェイスのヘルメットには、通信機の付いたインカムが取り付けてある。


だけど……

敢えて、レサさんは、手信号を選んだ。


何か、裏があるのだろうか……



◇◇◇



【トン・トン】



レサさんが、ヘルメットの通信機の辺りを指で弾き、

通信機をオフにしろ!と合図する。


僕達は、その指示に従って、通信機を切る。



「どうしたんや?」


「冬でも無いのに、静かすぎない?」


レサさんが、ゼロイチ君の質問に、

淡々とした口調で逆質問をする。


「ドンソンとコイリドの様子は……

餌を食うのは、ドンソンだけにゃね。」


ニャレスが、何時の間にか、

ドンソンと、コイリドが入っているペット キャリーに、

その辺から摘んだであろう、雑草を入れている。


「もっぱら、野生を忘れたと名高い、ドンソンの危機管理能力は、当てにならんじゃろ。


コイリドは……


主に怯えておるのか?それとも……

別の何かに怯えておるのか?」


「鳴き声は、威嚇モードにゃけど……

妾の手に、すり寄って来ておる。


にゃけど……

何処かに向けて、警戒しておるようにも見えにゃいにゃ。


まるで……

この場から逃げ出したいが、

皆と離れて、一匹で逃げる方がもっと怖い。


にゃから、仕方にゃしに、大人しくしてる。


そんな風に見えるにゃね。」


ヴォルの質問に、ニャレスが、

首を傾げながら答える。


「せやかて、引き返すんもマズイやろ。

ダンジョンの暴走を止めやんといけんやろ。」


「分かってる。

でっ、他のダンジョンの様子を知りたいって思ったのよ。」


苦笑いするゼロイチ君に、

レサさんが、淡々とした口調で質問をする。


「ちょっと待ってな。」


ゼロイチ君が、そう言うと、

右側に付けた、マジック ボックス化した腰袋から、

小型のタブレットを取り出して、動かし始める。



◇◇◇



「ダンジョン管理局の公式発表では……


世界中にある、60箇所のダンジョンの内、

50箇所が暴走してはるらしいわ。


でっ、その50箇所と言うんが……

綺麗に世界中に散らばってはる。


それと……

暴走してはるダンジョンについては、周りの環境も含めて……

特に共通点は無いらしいわ。」


ゼロイチ君が、淡々とした口調で、

レサさんの質問に答える。


「他の暴走したダンジョンの調査に向かっている人達と、

連絡は取れないの?」


「極秘任務やさかいなぁ……


ダンジョン管理局のサーバーにハッキングするんも時間がかかるし……


俺達の知やん奴ばっかかもしやんしな……


取り敢えず、カベショウとコロチンに現状を伝えて、

オフレコでも、情報を貰えるように連絡してみるわ。」


僕の質問に、ゼロイチ君が、

淡々とした口調で答える。


「そうね。


セプモちゃんも……

気がつた事があったら、直ぐに言ってね。」


「はい。」


嫁が、レサに笑顔で返事をする。


「サッサと終わらせて、サッサと帰るにゃ。」


ニャレスが、何時の間にか、

ドンソンとコイリドのペット キャリーの天蓋を閉じて、

定位置に戻っている。


「じゃな。


日が高いのにも関わらず、

禍々しい気が強くなってきておるしな。」


ヴォルが不吉な事を言いながら、

辺りを見回している。



嫁とレサさんが、

悪霊を祓う力を持っているとは言え……

そんな物とは、会いたくないよ。



◇◇◇



『レサ。ストップ。


他の暴走してはるダンジョンを調査しに行った複数の調査団で、


アラート ジリスが、

脱走をしようとして事故しはったり、

何時の間にか、脱走してはったちゅう事件が、

多発してはるらしいんや。』


ヘルメットに付けた通信機から、

ゼロイチ君の焦った声が聞こえてくる。


『了解。止まるよ。』


レサさんの指示に従って、僕達は、

アーティフィシャル シー フォースを止めた。



◇◇◇



「ピュ・ピュ・ピュィィ……」


【シャク・シャク・シャク・シャク】



ドンソンとコイリドが脱走しないように、

輪切りにしたニンジンを、肩掛けタイプの小動物用のキャリーバッグに入れながら、二匹の様子を確認したのだが……


輪切りにしたニンジンを食べるのは、ドンソンだけだ。



コイリドは、嫁の胸に飛び込もうとしたようだが……


キャリーバッグと、ハーネスを繋いだヒモのせいで、

宙吊り状態になっている。


それでも、嫁の胸に飛び込もうと、

必死になって、嫁の方に体を揺らしていもがいている。



「よしよし。」


「ピュィィ。」


嫁が、そんなコイリドを、

両手で、そっと掬うように持ち上げて、キャリーバッグに戻す。


「ピュ・ピュ・ピュ」


そんなコイリドとは対照的に、ドンソンは、


両手を上げて、ジャンプしながら、

ニンジンの輪切りをもっとくれ!とアピールしている。



【キィィーン】【キィィーン】【キィィーン】


【ブワァァァ】【ブワァァァ】【ブワァァァ】

【ブワァァァ】【ブワァァァ】【ブワァァァ】

【ブワァァァ】【ブワァァァ】【ブワァァァ】



不快な耳鳴りがしたかと思うと……

急に、音が戻った気がした。



「最悪や……」


ゼロイチ君が、ボソッと呟く。


「どうした?」


「バックアップ ワールドに転移した。」


「そう。


文明社会から切り離されて無い世界ではないのが……

唯一の救いね。


まさか……

アタシ達の世界に何かあったの?」


「大丈夫みたいや。

俺達の世界のダンジョンの暴走は、全て、止まりはったらしいわ。」


「良かった。


じゃあ……【次元転移装置】が有る、場所に向かいましょう。」


レサさんが、ホッとした顔をしながら、

皆を見る。


「最悪なんは……そこやない。

バックアップワールドが閉じた世界になったらしいんや。


でっ、今度は……

その事件の裏側を秘密裏に調査しろ!

ちゅう依頼が来たわ。」


「どういう事?」


「分からへんから、調査しろ!って事やろ。」


ゼロイチ君が、

苦笑いしながら、レサさんの質問に答えている。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

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