オチデ傭兵団の受難(後編 )
「シオタイと、ソルトンで、ございます!
お待たせしました!」
ゴチエヤ商会の皆さんと話してから、1時間弱。
アタシは、大きな声で、挨拶をした。
「嘘は言ってないわね。
裏に回ってくれる?」
愛らしい顔とは、裏腹に、
ツンケンとした、感じの、お姉さんが、淡々とした口調で話す。
「ごめん。こう言う奴やねん。
悪気は無いから、許したってや。」
大人になれば、イケメンが確定するだろう、幼子が、
苦笑いしながら、ツンケンとした、お姉さんをフォローしている。
良く出来た子。いや……出来すぎた子供だ。
アタシは、そんな違和感を覚えながら、止めて頂いた、馬車の裏に回る。
◇◇◇
「パパ。ヴォル頼む。」
可愛らしい幼女が、淡々とした口調で、命令をする。
「すまん。
アーティフィシャル シー フォースを封印させて貰う。
『封印』」
魔狼らしき者が、申し訳なさそうな顔をしながら、
アタシ達のアーティフィシャル シー フォースを封印する。
サンボンと、シュウキュウが、服従のポーズをとっている。
「ピュッ。ピュッ。」・「ピュイ。ピュイ。」
「ピュッ。ピュッ。」・「ピュイ。ピュイ。」
『有り難き幸せ。』・『我々を受け入れてくれて感謝します。』
サンボンと、シュウキュウが、マナを殆んど感じない、
2匹のジリスらしき者に、頭を下げる。
どうやら、2匹のジリスが、警戒音から、普通の鳴き声になった事に、謝意を示しているようだ。
「『原状回復』×2」
小さなおっさんが、初めて聞く、呪文?を唱えると……
目線が、低くなった。
しかも……着ていた服が、ブカブカだ。
「ロテク辺境伯領で買った服をあげる。
取り敢えず……乗って。
そんでもって、体を拭いてから、着替えてね。」
幼女が、にこやかな笑みを浮かべながら、
アタシ達の乗車を促す。
◇◇◇
「オチデ傭兵団の者だ!
逃亡兵が、そちらの馬車に逃げ込んだ可能性がある!
荷を改めさせろ!」
テヘンの声が、馬車の外から聞こえてくる。
アタシとシオタイさんは、子供の姿だし……
着替えも、ギリギリ、間に合っている。
だが……バレたら……この姿だと、尚更、ヤバい。
「ゴチエヤ商会の者です。
荷を改めたいのであれば、許可証を見せて下さい。」
そう言うながら、小さなおっさん……じゃなかった、
アケモン様が、馬車を降りられた。
「許可証は無い!
その代わり、逃亡兵を匿っていたとしても、不問にしてやる!」
テヘンが、大きな声で、威嚇する。
「我々は、人の法に則って生きたいと願う者。
不問も糞も……人の法を破るのであれば、容赦しません。
その場合……お雑魚様の貴方に、いったい、何が出来るのですか?」
アケモン様が、大笑いしながら、テヘンを煽る。
「舐めんじゃねぇ!」
テヘンは、そう言うと、腰に差した剣を掴んだ。
◇◇◇
「『高時間分解解能 開始』・『感覚共有 開始』。」
ニャレス様が、初めて聞いた呪文?を唱えらると……
見える景色がスローモーションに切り替わった。
そして……何かが体に纏わりつく感覚がする。
『纏わりついてるのは、空気にゃ。取れにゃいよ。
それと……会話は念話しか無理にゃよ。』
ニャレス様の大笑いする声が、頭の中に鳴り響く。
『パパ。何それ!』
セプモ様が、大笑いしている。
『大丈夫だろうけど、怖いから、念の為。』
アケモン様は、体を反らし、テヘンの剣をギリギリのところで、躱そうとされているのだが……
何故か、右手の小指を立てて、テヘンの剣の間合いの中に入れている。
【ミシ・ミシ・ミシ】
『ヤバい。壊れる。
ミスリルの剣は、凄い!って……嘘じゃん。』
テヘンの剣は、アケモン様の小指に触れると、
アメ細工のように、崩れ始める。
『思ってるよりも、早い!』
アケモン様が、小指を引っ込めながら、
テヘンの剣を、首で受けようとしている。
『急ぐにゃ。
1発目の殺気係は、妾に任せるにゃ。』
『有り難う。』
【バリ・バリ・バリ・バリ】
アケモン様の頭が、テヘンの剣に当たる。
テヘンの剣が、粉々に砕けていく。
『ゴォォォール』
『ナイッシュ!』・「ナイス ヘッドにゃ!」
絶叫する、アケモン様に、
ゼロイチ様と、ニャレス様が、爆笑されている。
『もう少し……リスペクトの気持ちを持とうぜ!』
セプモ様が、そんなアケモン様達に、ため息をつかれている。
『『高時間分解能 解除』・『感覚共有 解除』。』
ニャレス様が、再び、呪文?を唱えられると、
アタシの時間は、普通に流れ始めた。
◇◇◇
【ドサッ】
テヘンが、大きく、尻餅をつく。
「小童ども。
一線を越えたにゃ。」
【ジョワァァァー】
漏れた。漏れてしまった。
【ドサッ。】
「オェェェェー」・「オェェェェー」
「オェェェェー」・「オェェェェー」
テヘン達が、一斉に吐く。
てか……良く、それで耐えた。
アタシが、あんた達の立場なら……気絶していたわ。
「ねぇ~。
悠久の時を生きる者にケンカを売る時に、
一番、気をつける事って知ってる?」
アケモン様が、にこやかな笑みで、テヘンに質問をする。
【ブルブルブル】
テヘンが、首を横に振りまくっている。
「死んで終わりじゃない事だよ。
我々は、記憶を有したまま、転生する。
そして……基本、死なない。
だから……君が死んでも……転生先まで、追いかけられる。
つまり……ケンカを吹っ掛けた代償を、
悠久の時を使って、払い続けて貰えるんだ。」
アケモン様が、にこやかな声で、テヘンを見る。
「つまり……僕達が、あんた達を許そうと思わない限り……
永遠に、苛めて……苛めて。苛めて。苛めて。苛めて苛めて。苛めて。苛め抜く。
それでも……何も変わらない。明日からも……また……
苛めて。苛めて。苛めて。苛めて。苛め抜く。ただ……それだけの話なんだよ。」
アケモン様が、楽しそうに話す。
テヘン達は、土色の顔をしている。
◇◇◇
「それなりの者からすれば、玩具レベルの物だけど、
魔馬ぐらいなら、倒せる武器を与えよう。
この武器を使って、
遠距離攻撃で、殺された、シーホースで作った、馬刺しを食べたいの。
だから、1時間以内に、
オチデの馬車を曳く、シーホースを2頭。
2キロぐらい、離れた場所から、
この玩具を使って、狙撃して、殺して来くれないかな?
それと、
2頭を殺すタイミングは、出来る限り、同時にしてね。
殺したタイミングが違えば、
鮮度が変わって、味が変わってしまう。
だから……お願いね。
もし、この願いを叶えてくれたら、
貴方達を許してやれるように、
この怖い叔父様と、お猫様を説得する。
約束するわ。」
レサ様が、そう言いながら、
魔力弾の狙撃銃とか言う武器を、オボルヨとニヤカシに渡す。
「決して。この玩具の出所を、他の者に知られては、いけませんよ。
もし……知られたら……
アタシ達よりも、もっと、恐ろしい者が、永遠に貴方達を虐め抜くわよ。」
レサ様が冷たい目で、テヘン達を脅す。
「かっ。かっ。必ずや、やり遂げます。
ですから……どうか。このおっさ……素敵な叔父様と、お猫様の、ご機嫌が治るよう、取り成して下さいませ。」
サパヨが、涙を浮かべながら、土下座をし始めた。
「タイム イズ マネー。
早よせんと、時間切れすんで。」
ゼロイチ様が、苦笑いしながら、ツッコミを入れられる。
「では!これより、シーホース狩りをして参ります!」
テヘンが、そう言うと、
アーティフィシャル シーホースに跨がった、テヘン達は、
オチデの、お気に入りのシーホースを狩るべく、駆け出して行った。
ーーーーーー
「殺るぞ。」
テヘンが、ボソッと呟いた。
本体(オチデ傭兵団)の歩みは、俺達からすれば、まさに牛歩。
シーホースの1日の歩みを(60キロ)
アーティフィシャル シー ホースならば、1時間も有れば、駆け抜けられる。
しかも……
全く、息を切らさずにだ。
アーティフィシャル シーホースが、どれ程、凄いか、改めて、思い知った気がした。
アタシ達は……
そんな、アーティフィシャル シーホースを、2体も、
ナシメシ様に与えられるような、特別な傭兵団だと、自認していた。
そして……片田舎のオチデ傭兵団が、そんな地位に居られるのは……
ここに居る4人と、オチデ様の功績であると自負していた。
そんでもって、その考えは、今もって、間違いでは無いと、言い切れる。
ただ……上には、上が居た。
それだけの話だ。
「いけるか?」
「えぇ。」
「じゃあ……せぇので、殺るぞ。」
「うん。」
「せぇの。」×2
【タン】・【タン】
こぎみ良い、ライフルの発射音がする。
愛想の無い女は、これを玩具だと言ったが……
殺人を犯せる道具であり、そして……獣やモンスターを屠る為の道具だ。
まぁ……テヘンの剣を頭で受け、
テヘンの剣を砕く人達だ。
彼女達の感覚では……玩具なんだろうな。
◇◇◇
【パァァァァーン】・【ドォォォォォーン】
オボルヨと、ニヤカシの放った弾丸が、
オチデ様のシーホースに当たった瞬間。眩い閃光と大きな音がした。
「動くな!術式が展開されているぞ!」
ニヤカシが、大きな声で、アタシ達に叫ぶ。
「結界魔法?オチデ様達を、巨大な結界みたいな物で囲んでるわ。」
「バカ デカイ結界だ。
笑えるぐらい……バカ デカイ結界だ。」
オボルヨの呟きに、ニヤカシが返答を返す。
【ポン・ポン・ポン・ポン】【ポン・ポン・ポン・ポン】
【ポン・ポン・ポン・ポン】【ポン・ポン・ポン・ポン】
【ポン・ポン・ポン・ポン】【ポン・ポン・ポン・ポン】
そんな音が聞こえた気がした。
目視が出来る限りでは……人も馬も。そして……
我が傭兵団(オチデ傭兵団)に楯突いて来た、羽虫達が……
体の内部の血や水が……
まるで、ポップコーンにでもなったかのように、
肉を突き破り、弾けるように、飛び出している。
【ブッ・ブッ・ブッ】
通信機器が鳴る。
「はっはい。サパヨです。」
『ねぇ。
あんたの仲間は……命をかけて、悪ふざけをしたの?
あんな、攻撃で、僕達を殺れるとか、本気で考えていたとか……
世の中を知らない、あんたのところの、お子様剣士のレベルに合わせたんでしょ?
ねぇ……バカにするのも……大概にしてくれない?
そろそろ……
せめて、普通の管理人レベルの事が出来る程度の人間を出してよ。
流石に……雑魚すぎる奴ばかりで、ムカついて来た。
取り敢えず……
今、直ぐ、ナシメシの町に行って、トーカース王子の居る宮殿を襲撃しろ!
もし、結果が、ショボければ、
お前達の仲間のように、楽には殺さん。
たとえ、もし、今世は、自死で逃れたとしても……
来世、以降、絶対に、
生まれて来た事を後悔させ続けてやる。』
『これ。パパ。
思ってた以上に、雑魚だったからと言って……キレない。
てか……早く、行け。
じゃないと……止められない。』
多分……小さな叔父様的には……
思ってた以上に、アタシ達(オチデ傭兵団)が、雑魚だったのだろう。
なのに、テヘンは、
小さな叔父様に調子に乗った言動をした。
それで、多分……
ぶちギレてるんだろうな……
でっ、それを幼女様が、諫めてくれてる。
そんなところだろうな。
『おい。無視か。舐められたもんだよね……』
幼女様のドスの聞いた声が、インカムから聞こえてくる。
体の芯から、氷つくような殺気を感じる。
どうやら、幼女様も……化物だったらしい。
「はひっ!直ぐに行きます!
お気遣い、感謝致します!」×4
アタシ達は、ほぼ、同時に叫ぶと、
アーティフィシャル シー フォースに飛び出乗った。
◇◇◇
『ちょい待ち。
俺達の事を話せば……どうなるか、分かってはるよね?
あくまでも、
オチデ傭兵団への襲撃をしたのは、誰かは分からへん。
分からへんけど……
指示を出しはったんは、トーカース王子。
あんた達は、そう確信した上で、自主的にやった襲撃。
誰に、何を聞かれはっても……誰に、何を言われはっても……誰に、何をされはっても……
そう言い切る方が身の為やで。
何でかって言うとな。
お前達を尋問する奴達との付き合いは、
確実に、今世で切れるからや。
たとえ、同じ魂と出会ったとしても、
前世の情報が無いから、別人と同じや。
それに対して……俺達はどうや?』
「畏まりました!
何があっても、トーカース王子の宮殿への襲撃は独断!
オチデ傭兵団を襲撃した者は知らない!
そう言い通します!」
テヘンの、大きな声が、インカムを通さずに聞こえて来る。
殺るしかない。殺るしかない。
トーカース王子に恨みは無いが……
殺るしかない。
評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。
頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。
宜しくお願いします。




