VSカワリュウレ傭兵団(前編)
【シャク・シャク・シャク・シャク】
【シャク・シャク・シャク・シャク】
【シャク・シャク・シャク・シャク】
【シャク・シャク・シャク・シャク】
ドンソン達が、夕食のレタスを物凄い勢いで食べている。
どうやら、ペレットは後回しにするらしい。
まぁ……肩掛けタイプのペットキャリーの中に、
ペレットを器を入れて置いとくと、何時の間にか、失くなっている事を考えると……
主食も、ちゃんと、食べてくれているらしい。
「癒される。」
テバコちゃんが、目を細めながら、ドンソン達を眺めている。
「緊張感のない奴め。
今晩、カワリュウレ傭兵団を襲撃するんだぞ。」
キンノウ君が、そんなテバコちゃんを、呆れるような目で見ている。
「理論上は、
ヴォルの異能で作った、
大音量や閃光を発する非致死性兵器。閃光手榴弾的な効果が発動させる魔力弾と、
結界魔法が発動した後に、
ヴォルが、異能で作った、誘電加熱が発動する、
電子レンジ的な効果を発動させる魔力弾が出来た。
後は……セプモちゃんが、ビビらずに撃てれば、万事オッケーや。」
ゼロイチ君が、緊張している嫁を、チラリと見る。
「照準を合わせてくれたら、引き金は……
僕が引くよ。」
「大丈夫。作戦を考えたのは、パパだもん。
だから、これは、夫婦の共同作業。
なので、引き金を、一緒に引かなくても、
罪悪感は、一緒に、背負って貰うからね。」
「うん。」
嫁の返答を聞いて、僕は頷く。
こう言う仕事にも、慣れないといけないのだろうな。
だけど……慣れ過ぎないようにしないといけない。そんな気もするな。
ただ、1つ、確定した事は、
僕と嫁も……殺って、殺られる、荒事の世界とやらに、
本格的に足を踏み入れる事になった。と言う事実だけだ。
◇◇◇
「それよりも……怖いのは……
わたし達も何時、遠距離から、異能で攻撃を受けるか分からないって事だよね……」
嫁が、ボソッと呟く。
「魔力弾は、基本……
純粋にマナを込めて、鉄のように強化された魔力の弾丸を、
火薬を込めずに打ち出せるようにした物よ。
今回のように、魔法や異能の効果を付与する事は、理論上は、可能だけど……基本、しないわ。
まぁ……それでも、ピンポイントに狙撃されれば、運が悪かったら、即死も……無くは、無いけど……
マンガや、映画。小説と違って、現実は、
銃から放たれた弾丸や、弓矢から放たれた矢ってのは、案外、当たらない物よ。
だからこそ、この世界だけでなく、アタシ達の世界(オリジナルの世界)でも……
ナイフを使った近接戦闘や、
銃剣を装着したライフルを持って突撃する作戦が、
まだ、廃れていないのよ。」
レサさんが、淡々とした口調で、嫁の呟きに答える。
「魔力弾に魔法や異能の効果を付与すれば、
付与する魔法や異能の効果によっては、広範囲に攻撃が出来るようになり、
銃の弾丸や、弓矢の矢が当たり難いと言う欠点を補完する事が出来る。
なのに……
何で、皆、魔力弾に、魔法や異能の効果を付与しないの?」
「魔力弾に、魔法や異能の効果を付与するんは、
普通に魔法や異能を使うよりも、マナを大量に消費する行為やからや。
しかも……魔力弾は、1時間ぐらいしか、形保たれへん。
せやから、戦闘が始まる前に仕込んどく事も、普通は無理な事なんや。
せやから、魔力弾に魔法や異能の効果を付与して、敵に撃ち込もうなんて事は、
普通、誰も考えへんのや。」
ゼロイチ君が、淡々とした口調で、僕の質問に答えてくれる。
「アケモン君は、無敵タイムがあるから、
マナの効率的な活用を考えはる必要がない。
そんでもって、
【原状回復】が有るから、魔力弾の消費期限を気にする必要もない。
じゃからこそ、こう言う方法を思いついたのじゃろうし、
こう言う方法を誰もしない事を、不思議に思うのじゃろうな。」
「アケモン君が、今回、立てた作戦は、
大企業が、赤字を垂れ流しながら、
中小企業、以下の同業他社から仕事を奪おうとする行為に似てるにゃ。
そんでもって……
にゃぜ、同業他社は、
赤字を出してでも、損して得する!的な商売をしないんだ?的な、ノー天気な事を言っている、
潤沢な資金の有る、大企業しか知らにゃい、
中小企業では、全く、使い者ににゃらにゃい、エリート様と同じぐらい、残念にゃ発言にゃ。
まぁ……これは、あくまでも、マンガで得た知識にゃから、
現実の世界では、そんにゃ奴は居にゃいとは、思うにゃが……
アケモン君が、何れぐらい、ズレた発言したのか、例えると……
こんにゃ感じの、残念にゃ話に、にゃってしまうにゃね。」
大笑いしながら、話すヴォルに、
ニャレスが、痛烈な皮肉を追加して来る。
「ニャレスの例え話は、とても分かりやすくて、良いと思う。
だけど……ニャレスは……1つだけ、大きな誤解をしてるよ。」
「誤解?」
ニャレスが、不思議そうな顔で、質問をしてくる。
「うん。
ニャレスが、例えに出した、大企業のエリート様。
普通に、沢山、居るよ。」
「マジにゃか?
それって、つまり……
悪い意味で、妾の想像を越える奴が沢山、居るって事にゃね!
どうやら、妾は、人間の愚かさを、過小評価していたみたいにゃね。」
ニャレスが、ニヤリと笑いながら、僕に返答を返す。
「ニャレスさんは、
人間に媚びてはるんか……人間をバカびてはるんか……
よう分からへん言い回しをしはるな……」
ゼロイチ君が、苦笑いしながら、
ニャレスにツッコミを入れていた。
◇◇◇
「ヴォルの異能で作った、
大音量や閃光を発する非致死性兵器。閃光手榴弾的な効果が発動させる魔力弾を、セプモちゃんが撃ち込んで、
その後に、
結界魔法が発動した後に、
ヴォルが、異能で作った、誘電加熱が発動する、
電子レンジ的な効果を発動させる魔力弾を、テショミが撃ち込む。
その手筈で、頼むで。」
ゼロイチ君が、淡々とした口調で話す。
時刻は、午前3時。
辺りは、漆黒の闇に包まれている。
カワリュウレ傭兵団が夜営している場所を照らす、キャンプ ファイヤー的な物だけが、
僕達の居る丘の、隣の丘の上を照らしている。
まるで、それは……雲の上に作られた、街のようにも見える、幻想的な景色だ。
これから、僕達は、その幻想的な場所に、
死を撒き散らす作業をするのだ。
だけど……思ってたのと違って、罪悪感は、殆んど感じない。
それは、僕達が、彼等の存在を見て見ぬフリを決めば、
彼等が、ロテク辺境伯領で、大量殺人を敢行する事を知ってるからだ。
つまり、僕達は……
彼等に手を下そうが、下すまいが、どちらにしろ、大量殺人犯になってしまうからだ。
「大丈夫かい?
アタシが……1人で、終わらせようか?」
テショミさんが、緊張している嫁に声をかける。
「ここで、彼等を殺らなければ……
沢山の、ロテク辺境伯領の民達が死ぬ。
直接、手を下したとしても……見て見ぬフリを決め込んだとしても……
どちらも、同じだけ悪人だと思う。
でっ、どうせ、悪人にしか成れないのならば……
胸を張れる、悪人になる。
だから……わたしは、大丈夫。」
嫁が、真剣な顔で、テショミさんに返答を返す。
「分かった。
誰が何と言おうとも、アタシは……貴女と仕事をした事を、誇りに思い続けるよ。」
テショミさんが、嫁の返答に、笑顔で頷いた。
ーーーーーー
「はぁ……下端ってだけで……
こんな夜更けに、丘の下に、ゴミ捨てに行けとか……
本当、やってられないぜ。」
ベドが、不満気な顔をしながら、荷車を押している。
「本当そう。
しかも……アタシとリビなんて……か弱き、女の子よ。」
ルギャが、ぶちギレそうな顔で、丘の上を睨む。
「リビは、分かるっすけど……ルギャさんは……」
「はぁ?タッベ君。それ……どう言う意味かな?
てか、寧ろ、受けているジョブ補正から考えたら……
逆でしょうが!」
ルギャが、タッベを睨みつける。
「能力だけの話なら、ルギャの言い分の方が正しいな。」
ベドが、ボソッと呟く。
「そう。それ。て……何でやねん!
本当……リビとアタシの、この待遇の差の違いは、なんなのよ!
失礼にも、ほどがあるわ!」
ルギャは、頬を膨らませながら、
自分にだけ、失礼な待遇をする、ベドとタッベに、
鋭い、ノリ ツッコミを入れる。
「そう言うところっすよ。自業自得っすね。」
そんなルギャを見ながら、タッベが、
大笑いしながら、更に、ルギャを煽っている。
◇◇◇
【パァァァァーン】
「うわ!何!何!」
【ドォォォォォーン】
眩い光に、慌てて、大声で叫ぶ、ルギャの声を、
轟音が掻き消した。
「黙れ。ルギャ。」
ベドが、そう言言いながら、ルギャを茂みに押し倒す。
「ちょ。ちょ。ちょっと……タンマ。タンマ。ムムムム……」
ルギャの焦る声が、途中で消える。
多分、ベドが……ルギャの口を、手か何かで塞いだのだろう。
「タッベ。リビ。ボーとするな。
お前達も、こっちに来い。」
「おっ。おう。」
アタシは、タッベに手を引かれながら、
ベドとルギャの居る、茂みの中に分け入って、身を隠した。
◇◇◇
「『視覚 共有。』」
ベドが、魔法を唱えると、
遥か上空から、
アタシ達の仲間達(カワリュウレ団)が夜営している、丘の上を見下ろす映像が目の前に現れた。
「フトとホソの視覚を共有した。」
ベドが、ヒソヒソ声で呟くように話す。
フトとホソは、ベドが飼っている念話烏の名だ。
【テイマー】のジョブ補正を、受けているベドは、
視覚共有魔法を使って、使役している、念話烏と、
視覚を共有する事が出来るのだ。
「なんなのあれ?
皆、体の中から、爆発したみたいなような感じになって、倒れてるじゃん。
てか……あれ……確実に……ダメな奴だよね……
アタシの回復魔法でも……治してやれないわ。」
ルギャが、ボソッと呟く。
「ルギャさんの回復魔法で治せないのならば……
テントの外で、火の番をしていた連中は、確実に全滅っすよね……
てか……テントの中の連中は……生きてるっすかね?」
そんな、ルギャの呟きに、タッベが反応する。
「誰も、テントから出て来ないって事は、多分……ダメだろうな。」
ベドが、タッベに返答を返す。
「やっぱり……そうっすよね……」
タッベが、ベドに返答を返す。
◇◇◇
「『視覚 共有 解除。』
でっ、リビ。タッベ。
お前達……これから、どうするつもりだ?」
ベドが、ルギャの肩に手を回しながら、ボソッと呟く。
「お邪魔じゃなかったら、
お2人に、着いていきたいっすね。」
タッベが、ニヤニヤした顔で、
ベドとルギャを、交互に見ながら、ヒソヒソ声で返答を返す。
「勝手にしろ。」
ベドが、苦笑いしながら、タッベに返答を返す。
「リビも……アタシ達と、一緒に来てくれるよね?」
ルギャが、震える手で、アタシの手を握りながら、ボソッと呟く。
「うん。」
他に行く当ても無い。それに……こんな場所に、1人で残されても、どうしようも無い。
だから、リビの申し出に、深く感謝をしながら、
リビの手を強く握り返した。
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