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バックアップ ワールド~修復屋さんの業務日誌~  作者: モパ
【1ー1】動乱の始まり
18/110

作戦のアップデート

評価をつけて頂き、有り難うございます。

引き続き、楽しんで頂けるよう、頑張ります。

「斥候部隊。先導部隊。


当初の予定通り、

今日の夕方までには、森と草原地帯の狭間に辿り着きたい。


大嵐の中、そろそろ、疲労もピークだと思うが……

宜しく頼むぞ。」


カルオモ王国の殿下(キンノウ)の護衛兵長のナヤキン殿が、指示を出す。


『了解。』×2


斥候部隊と、先導部隊のリーダー達が、

ナヤキン殿の指示に、短い返答を返す。


「殿部隊。家禽・念話烏の運搬チーム。山羊・羊・馬・ロバ・牛の運搬チーム。



大嵐は、3日目に突入したが……

明日以降も、弱まる気配すらないらしい。


この大嵐は異常だ。

そろそろ、モンスターや獣の中には飢え始める奴が出てくる筈だ。


大嵐が収まらないからと言って、油断するなよ。



それと……家畜をガードする警備兵達。


コマレ村の村長の指示の通り、

畜産家と、畜産家を補佐する、魔猫・魔犬・牧羊犬・念話烏の安全を最優先に考えろ。


そんでもって、

家禽・山羊・羊・馬・ロバ・牛に関しては、

状況によっては、襲って来るモンスターに差し出す。


このルールを、努々、忘れるな!」


『了解。』×3


皇女様(トバチリ)の副警備隊長のコジヨシ殿の指示に、

各部隊のリーダーが、短い返答を返す。



当初、俺達は、この大嵐を、恵みの大嵐だと捉えていた。



大嵐が、3日3晩、降り続ける事は、珍しくない。


ただ……皇女様(トバチリ)様達からの情報では……

【空の目のナビ】の雲の動きから、少なくとも、この大嵐は、5日間は収まらないらしい。



それだけならば、良いのだが……


キュドンは、管理人の権限を悪用して、

管理人以上の者しか使用する事が出来ない、【気候変動装置】を操って、人為的に、この大嵐を引き起こしてる可能性が有るらしく、


5日目以降、大嵐が止むと言う、確証も無いらしいのだ。



モンスターや獣は……基本、人と比べて、頭が良くない。


だからこそ、

大嵐が続くのは、長くても3日3晩と言う前提が崩れても、慌てる事は無い。


もし、4日目以降も大嵐が続いた場合……


飢え死にしないように、狩り易い獲物を狩り、

腹を満たしたら巣穴で休む。ただ、それを、

自分達のペースで繰り返すだけだ。



幸い、行軍は遅れていない。


だが……4日目以降、晴天の日になれば、1日中、野営をして、英気を養う。と言う計画が潰れる可能性が出て来た事で、皆の足取りが重くなる事が心配だ。



親父やナヤキン殿、コジヨシ殿と、

皆の足取りを考えて、この情報を、今晩まで伏せるかどうか検討した。



でっ、俺達が、下した決断は、


状況を包み隠さずに話した上で、

皆で、ソカカ村に辿り着けるように鼓舞し続ける!と言う、脳筋の極みのような対応だった。


士気の低下を考えた場合……

困った事を、隠した事で、信頼を失くす方が、怖いと言う判断から、そうする事を決断したのだ。



雨のせいで、泥だらけの獣道は、

晴天の時の乾いた獣道に比べて、格段に移動が大変になる。


皆、明後日には、道が乾き、移動が楽になる!と踏んでいたようで、落胆しているのが、足取りからも分かる。



だが……モンスターや獣に、俺達が落胆した意味は伝わらない。


そして……俺達が弱ってると見るや否や、

奴達は、俺達を標的にするだろう。



「森と草原の狭間に着いたら……

明後日以降の予定を再考せねばなりませんな。


そうじゃないと……

民も家畜も、体力が持たないですからな。」


親父が、そう言いながら、

ナヤキン殿と、コジヨシ殿を、ジッと見る。


「ですな。」×2


どうやら、ナヤキン殿と、コジヨシ殿も、

親父と同じ意見らしい。


勿論、俺も、親父の意見に大賛成だ。



願わくば、この大嵐が吹き荒れるのが、明日の朝までにして下さい。


俺は……ダメ元で、そう祈ってみる事にした。



ーーーーーー



【シャク・シャク・シャク・シャク】

【シャク・シャク・シャク・シャク】

【シャク・シャク・シャク・シャク】

【シャク・シャク・シャク・シャク】



「ピィーーッ」


「カァ・カァ・カァ」「カァ・カァ・カァ」

「カァ・カァ・カァ」「カァ・カァ・カァ」



【ボト】・【ボト】・【ボト】・【ボト】



「ピッ。ピッ。ピッ。」・「ツクツクツクツク。」

「ピッ。ピッ。ピッ。」・「ツクツクツクツク。」

「ピッ。ピッ。ピッ。」・「ツクツクツクツク。」

「ピッ。ピッ。ピッ。」・「ツクツクツクツク。」



朝食を気持ち良く食べていた、ドンソン達が、

鷹とカラスらしき鳴き声を聞いて、


手に持っていた、小松菜を落とし、

警戒モードに入る。



「ピィーーッ」


「カァ・カァ・カァ」「カァ・カァ・カァ」

「カァ・カァ・カァ」「カァ・カァ・カァ」



【ガサ】・【ガサ】・【ガサ】・【ガサ】



当初は、直立で、警戒音を発していた、ドンソン達であったが……


鷹とカラスらしき、鳴き声が止まらと判断したのだろう。

魔術式の温冷水の毛布の中に、潜り込み、顔だけだして、震えている。



「ほれ。」


そんなドンソンと、コイリドを見かねた嫁が、

彼等が落とした、小松菜を、顔の側に移動させる。


そして、それを見た、ハケオさんが、

アルゾウとナイコの前に、彼等が落とした、小松菜を、

彼等の顔の側に移動させる。



【シャク・シャク・シャク・シャク】

【シャク・シャク・シャク・シャク】

【シャク・シャク・シャク・シャク】

【シャク・シャク・シャク・シャク】



ドンソン達は、魔術式の温冷水の毛布の中から手を出して、

魔術式の温冷水の毛布に、くるまったまま、再び、小松菜を食べ始める。



「ほう。ハケオ殿。

アルゾウとナイコに、主として認められたようじゃな。」


ヴォルが、目を細めながら、

ハケオさんに話しかける。


「本当ですか?


今まで、アラート ジリスに懐いて貰えなくて……

修復師として、半人前とバカにされてたんですよ。


嬉しいなぁ……


ですが……今回は、気に入られる為に何もしてないのですがねぇ……


ただ、餌や、オヤツをやったり、

キャリーバッグに敷いた、ペットシーツを替えたり、

震えてる時に、頭を撫でたりと……


特別な事は、何もしてないんですがね……」


ハケオさんが、嬉しそうな顔をしながらも、

不思議そうな顔をしている。


「相性があるのは、人と人に限った事ではない。


相性の合わない場合……

何をしても懐かない。



それと……

世話を焼きすぎるのも考えものじゃ。


主だって、四六時中、他者に構われたら……

嫌気が差すじゃろ?」


「確かに。

言われて見れば簡単な話なのに……言われるまで気がつきませんでした。」


ハケオさんが、頭を掻きながら、

ヴォルに返答を返す。


「気にするな。皆、そんなものじゃ。」


ヴォルが、大笑いしながら、

ハケオさんを励ましている。


「にしても……


そろそろ、モンスターや獣達の空腹も……

我慢の限界に達して来たようにゃね。


妾も、ニャルソックの警戒モードを、上げにゃいと、いけにゃいみたいゃね。」


ニャレスが、そう言いながら、

大きな欠伸をする。


「おい。お猫様。

ニャルソックの警戒モードを上げるんじゃなかったのか?」


そんな、ニャレスに、嫁が、

鋭い、ツッコミを入れている。


「ゼロイチ。

コマレ村の人達は、どんな感じ?」


レサさんは、嫁とニャレスの戯れを気にする様子もなく、

何時も通り、仕事人モードだ。


「今んとこ、問題無い。

ひたすら、休まずに、森と草原の境目を目指してはる。」


「それは、良かった。


人外地に、安全地帯なんて場所は無いけれど……

それでも、環境の変わる境目は、比較的、安全だものね。」


ゼロイチ君の返答を聞いたレサさんが、

ホッとした顔をしている。


「それよりも、分からんのは……

キュドンの兵が、ロハク辺境伯領を、3方面から侵攻しようとしてはるように見える事やね。」


ゼロイチ君が、苦い顔をしながら、僕を見る。



◇◇◇



「ロテクの悪魔の森と、オモウン山脈からの侵攻は、(デコイ)か……

大嵐を起こすタイミングを間違えたかの、どっちかじゃない?」


「成る程ね……一応、納得の行く仮説やね。


せやけど……せやったら……キュドンは、生粋のアホやん。

それでよう、管理人になれはったな。」


ゼロイチ君は、僕の返答に納得しつつも、

怪訝な顔をしている。


「運があったんじゃない?


本気で、3方面作戦を取ってるなら愚策。


だけど……愚策だからこそ、当たる可能性がある。


何故なら、ロテク辺境伯達が、

ロテクの悪魔の森と、オモウン山脈からの攻撃は(ブラフ)だと、高を括り過ぎた場合……


ロテク辺境伯領への侵入を許してしまう。



そこから、ロテクのサンの村を制圧された場合……

ロテク辺境伯達は、目も当てられないような、惨敗を喫する事になりかねない。」


「成る程。


せやけど……その前に、

ロテクの悪魔の森と、オモウン山脈を行軍してはる時に、腹を空かせた、モンスターや獣に襲われて、


(いくさ)どころの話やなくならへんか?」


ゼロイチの君が、不思議そうな顔をする。


「かもね。


だけど、そう思うのは、


ゼロイチ君が、

先を見通す力が有って、責任感が有り、

現場の声に耳を傾けて、自分の非を認められる、

優秀な指揮官としか、仕事をした事が無いから、

そう思うだけだと思うだよ。



そんでもって、

今、言った内容の内、何か1つでも欠けた奴が、

指揮官としてトップに立ってしまったら……


状況に合わせて、適切な作戦に、アップデートすると言う、

とても、簡単な事が出来ない、残念な組織に成り下がってしまうんだよ。」


「それ……コワ!てか……もう、悪夢やん。


敵より、アホな指揮官の方が、怖いとは……上手く言うたもんやわ。


でっ、そんなアホに……

何で、俺達が負ける可能性があるみたいな事を言いはるんや?」


ゼロイチ君が、ジト目で、僕を見る。



◇◇◇



「それは、アホすぎる作戦、故に、油断するからだよ。


キュドンの軍が、

運良く、無傷で、ロテクのイチの村、ニの村、ヨンの村、ゴの村の何処かに辿り着く可能性は、0%とは言い切れない。


勿論、限り無く、0%に近いだろうけど……

決して、0%とは言い切れない。


だから、その……限り無く、0%に近い確率を、

キュドン達が引き当てた場合……


アホだと、バカにしたのが仇になって、

ロテクのサンの村を落とされて、詰む可能性があるんだよ。



まぁ……それは……

あくまでも、僕達が、一般人に紛れる案を捨てない場合だけどね……」


「コワ!アケモン君、怖いわ!

ホンマ、味方で良かったわ。


でっ、ロテク辺境伯に、何か指示を出すんか?


これからも……

可能な限り、一般人に紛れてたい。


何や、良え案は無いんか?」


ゼロイチ君が、拝むようなポーズで、僕に質問をしてくる。


「そうだね……


割れやすいけど、矢にくっ付けて飛ばしやすい小瓶に、


女性の……あの日に出る血か……

家畜を潰した時に出る生き血を、それなりの量を封印した物が、最低でも1個以上、欲しいな。」


「エライ、グロテスクな願いやな。


せやけど……分かった。


クイメガ君。アケモン君が欲しがってるもんを、

直ぐに、ロテク辺境伯に依頼すんで。」


「了解です。」


皆、僕の発言に引いてはいるが……


ゼロイチ君が、協力的な、お陰で、

僕の依頼を、頭ごなしに、却下される事は無かった。


このまま、あの作戦に必要な武器が、

僕達の手元に入る事を祈りつつ、


ロテク辺境伯の返事を待つ事にした。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

宜しくお願いします。

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