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バックアップ ワールド~修復屋さんの業務日誌~  作者: モパ
【1ー1】動乱の始まり
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ジモクロウの罠

評価をつけて頂き、有り難うございます。

引き続き、楽しんで頂けるよう、頑張ります。

「ウゴメス達が、瞬殺か……」


キュドン様。いや……もう……キュドンで良いか。

彼は、浮かない顔をしている。



ウゴメス達、キュドン四天王の死は、伏せる事になった。


理由は簡単。ワルウン王国の8人の諸侯達に、

我々の旗色が良くないと思われたくないからだ。



ワルウン王国の8人の諸侯達が、

ワルウン王国の王族を見限り、キュドンに従っているのは……


その方が、自分の領地を守るのに都合が良いと判断したからだ。


彼達にとって、守るべきは、自分達の一族。

大事にするのは、その目的を果たす為に、優れた功績を残してくれる、家臣や民草だけだ。



いくら、優れた人格者であろうが、才の無い者は切り捨て、

たとえ、糞みたいな人格の持ち主であろうとも、才が有れば重用する。



彼等は、まるで……人工頭脳ではないか?と、疑いたくなるぐらい、徹頭徹尾、このルールに基づいて行動する。



だから、今、

キュドン四天王が瞬殺された事と、

カルオモ王国のロテク辺境伯領への侵攻が失敗に終わる可能性が高まった事を知ってしまえば……


我々を見捨てて、

カルオモ王国に、すり寄る可能性が高いのだ。



「ロテク辺境伯領への侵攻計画。お前たちの目から見て、

上手く行くと思うか?」


キュドンが、タメ息をつきながら、

アタシとジモクロウを見る。


「正直なところ……村を攻略する、スピード勝負になるかと思います。」


「村を攻略する、スピード勝負?」


ジモクロウの返答に、

キュドンが、真剣な顔で質問をする。



◇◇◇



「籠城をした町や村を攻め落とす場合……

3倍~10倍の戦力を投入しないといけません。


こう言えば、籠城する側にメリットがありそうですが……

ネックとなるのは、水と食糧になります。


だけど……土狛ゼロイチの仲間のアケモンが、

カマテ様の仰られるような異能を有している場合……


土狛ゼロイチが、ロテク辺境伯に付いた場合……

籠城する側のデメリットを完璧に補えます。


ここまでは、宜しいですか?」


「あぁ。続けてくれ。」


キュドンが、

ジモクロウの顔を見ながら、先を促す。


「はい。


ロテク辺境伯爵達が住む、

ロテク辺境伯爵領に有る唯一の町、ロテクの町の人工は5000人規模の大きな町です。


老人や、病人や、怪我人。年端の行かない幼子に出来る仕事は無いでしょうが……

それでも、かなりの人数が、何らかの形で(いくさ)に貢献する事が出来るでしょう。



それだけでは、ございません。


ロテクの町に関わらず、大きな町と言うのは、

砦や堅牢な城壁。それに……それなりに鍛え上げられた、兵士達が常駐している要塞です。



正直、今の兵力のままでは、攻め落とすのは……かなり厳しいと言う事が予想されます。


ここまでは、宜しいですか?」


「あぁ。続けてくれ。」


キュドンが、

ジモクロウの顔を見ながら、先を促す。


「それに対して、

ロテク辺境伯爵領に有る、5つの衛星村は、

基本、村に常駐していない、狩人や冒険者を含めても、2500人規模。

つまり、ロテクの町の半分の人数です。



それに……主力は兵士ではなく、

町や村に残っている、狩人や冒険者達です。


単独、若しくは……少数での戦闘と言う意味では、

狩人や冒険者の方が、強いかも知れませんが……


戦術を要とする、大規模な対人戦。つまり……(いくさ)となれば、兵士達に敵う道理はありません。



加えて、村を守る城壁は、町を守る城壁に比べて、強度が劣るのかが一般的です。


多分……ロテク辺境伯領も、その辺の事情は同じ筈です。


ここまでは、宜しいですか?」


「あぁ。続けてくれ。」


キュドンが、

ジモクロウの顔を見ながら、先を促す。



◇◇◇



「加えて、兵士達が、街道を使って攻め込む場合、

最初の戦闘は、ロテクの町になります。


ロテク辺境伯は、

同盟国で有る、ワルウン王国との交易を重視して、

この場所を領都と定めてるらしいですが……


通常、国境線上や、領地の境目には、

小さな村か、町を置くの習わしです。



勿論、平和な状況で有れば、

何処に、領都を置こうが、領主の勝手でしょうが……


ワルウン王国が、我々に落とされ、情勢が不安定な状況にも関わらず、領都を動かさないと言う事に、

領民を守ると言う、強い意思と……ロテクの町の防衛力に絶対的な自信を感じ取れます。



ですから……

ワルウン王国と、国境を接する、ロテクの悪魔の森に近い、

ロテクのイチの村と、二の村のどちらかと、


何処の国の領土にも組み込まれていない、手付かずの大自然の宝庫、オモウン山脈の近くにある、ロテクのヨンの村と、ロテクのゴの村のどちらかを、ターゲットにした、


3方面からの電撃作戦を展開するべきだと思います。



そうすれば……

ロテク辺境伯は、ロテクの町に籠城し、

我々の軍を跳ね除ける事に専念する事が出来ません。


そうなれば……

ミスを犯し、攻め込んだ、3方面の何処かの防衛陣を食い破る事になるでしょう。



そして、防衛陣を食い破った後は、

ロテクのサン村を速やかに落として下されば、我々の勝ちは見えて来ます。



何故ならば、ロテクのサンの村は、


ロテク辺境伯領の食糧庫と呼ばれる、唯一無二の農業地帯であるとともに、


カルオモ王国の他の地域に繋がる街道を有する、

ロテク辺境伯領の、もう1つの玄関口となる要の村だからです。」


「ククク。


カマテ様が、後始末屋として、ケシヨを、

知恵袋として、お前を貸し出してくれた事に、

改めて、感謝の念を覚えたわ。



作戦の大幅な見直しが必要だな。

悪いが……これにて、失礼させて貰うぞ。」


キュドンが、そう言うと、

アタシとジモクロウに、充てがわれた部屋から、笑顔で退出して行った。



◇◇◇



「ちょっと……ジモクロウ。あんたさぁ……

アタシ達が、カマテ様から受けた、最新の命令を……

ちゃんと、覚えてる?」


アタシは、キュドンに、イラン知恵を付けまくってくれた、ジモクロウを睨みつけながら、質問をする。


「はぁ……お前さんは……賢いが、アホだな。」


「はぁ?」


蔑むような目で、アタシを見る、ジモクロクに対して、

殴り殺したい衝動を抑えながら、

アタシは、ジモクロウを睨みつけた。



「この大嵐は、1ヶ月近く続く、恵みの大嵐。


これは……

大量の食糧を備蓄する人間の浅はかな考えだよ。



栗鼠や蟻。秋~冬、限定だけど百舌鳥。

と言った、食糧を備蓄する動物や昆虫。それと似た性質を持つ、モンスターも居るには、居るが……


それでも……

人間以外に、1ヶ月分の食糧を備蓄するような生き物が居ると思うかい?」


ジモクロウは、タメ息をつきながら、アタシを見る。


「でっ。」


「はぁ……

じゃあ……視点を変えようか。

戦争は、兵士だけで、行うものかい?」


「ごめん。何が言いたいの?」


アタシは、ジモクロウを睨みつけながら、質問をする。


「分からないかぁ……答えは否だよ。


武器や弾薬を補充したり、メンテナンスを行う部隊や、

食糧や水を運んだり、野営時に飯を作る輜重部隊。それに……

前線の状況を、キュドン達に伝える、通信部隊に、

怪我人や病人を治す、医療部隊等と言った、


戦闘も出来なくは無いが……決して、戦闘が得意とは言えない部隊が多数、同行するんだよ。」


「それぐらい、知ってるわ。」


アタシは、苛ついた気持ちを抑えつつ、

ジモクロウクに返答を返す。


「はぁ……なのに……分からないか……」


「何が?」


蔑んだ目で、アタシを見る、ジモクロウへの殺意を抑えながら、

もう少しだけ、彼の真意を聞き出す事にした。



◇◇◇



「2~3日程度の大嵐ならば、

モンスターも獣も、大人しくしてるだろう。


だけど……それ以上、大嵐が続けば?


狩りの頻度を抑えつつも、餓死しないように、

モンスターも獣も、動き出す筈だ。



そこに、大量の水と食糧を運ぶ、

森や山は、安全だと、高を括った、

お世辞にも、対獣戦が得意とは言えない集団が、

大挙して、自分達の縄張り(テリトリー)に入って来るんだ。


お前さんが、モンスターや獣ならば……どうするよ?」


「あっ!そうか……確実に襲うわね。」


「そう言う事。



しかも、そう言う場所で、ワルウン王国の兵隊達を迎え撃つのは、

モンスターや獣の習性に詳しい、【狩人】や【冒険者】、【テイマー】のジョブ補正を受けた者達だ。



俺が、ロテク辺境伯ならば……


ワルウン王国の兵隊達が、モンスターや獣の標的になるような罠を、出来るだけ多く仕掛けろ!って言う命令を、部下達に出すよ。」


ジモクロウが、ニヤリと笑いながら頷く。


「だけど……ワルウン王国の兵隊達や傭兵団の連中ならば、

その事に気がつくと思うけど……」


「そうなれば、キュドンへの求心力が堕ちる。


その上で、キュドンが過ちを認めず、この駄策を強行した場合……キュドンを暗殺する好機が生まれる筈だ。



まぁ……キュドンが、この駄策を実行するのを止めた場合……


俺とキュドンの間に、確実に気まずい空気が流れるよな?


そうなれば、俺達がキュドンの元を去る口実が作れる。


それは、それで、キュドンを暗殺するチャンスじゃね?


何故ならば、

当然、建前上の話にはなるが……


キュドンが暗殺された後、俺達が、ここを出ていっても、

表立って、不自然だと言う奴は居ないでしょ。」


アタシの懸念に、

ジモクロウが、大笑いしながら、彼の考えを披露する。



◇◇◇



「成る程。


願わくば、ワルウン王国軍の司令官達が、アタシのような間抜けか……


キュドンが、意固地になってくれたら、やり易いわね。」


「確かにそうだね。


だけど……

人の心を、意のままに操る能力を、

俺も、お前さんも、持っていない。



だからこそ、知恵を働かせるんだよ。


異能、魔法、魔術、科学、詐欺(ペテン)

どんな手順を踏もうが……カマテ様は、何も言わない。


何故ならば、カマテ様が興味を示されるのは、

俺達の策が、何処に行き着ついたか!ただ、それだけだからね。」


ジモクロウが、ニヤリと笑いながら、アタシを見る。


「なんだか……それは、それで、寂しい話よね……」


アタシは、タメ息をつきながら、ジモクロウを見る。



◇◇◇



「かもな。


だけどさぁ……想像してみ?


確実に勝てる策が、目の前にあるのに、

矜持がどうだ!マナーがどうだ!暗黙のルールがどうだ!と却下された上で、


結果を出せよと、プレッシャーをかけられたら……

ふざけるな!って、ならないかい?」


「確かに。」


アタシは、

珍しく、熱く語る、ジモクロウの言葉に、思わず頷いた。


「だろ。


上の仕事は方向性を決める事と、

現場からの要請に可能な限り、応える事と、

関係各署から出された要望の調整。それと……

現場が欲してる情報を速やかに下ろす。


その4点だけを、しっかりとやってくれたら、それで良い。


てか……その4点以外は、邪魔だから、しなくて良い。


俺は、そう思うんだよ。」


ジモクロウが、更に、熱く語る。


どうやら……彼の中の、ヤル気スイッチに、火が着いたようだ。


「そうだね。アタシも……そう思うよ。」


「だろ。」


アタシの返答に、ジモクロウは、満足そうな顔をしている。



『扱い難いが、とても優秀な奴だ。』


アタシの部下にジモクロウを、つける時に、

カマテ様が、アタシに言った言葉を、改めて、思い出した。



この、自分よりも優秀な部下に、見限られないように、

この、自分よりも優秀な部下が、気持ち良く仕事が出来る環境を整える、調整係に専念しよう。


アタシは、改めて、そう決意した。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

宜しくお願いします。

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