VSキュドン四天王(オフメ視点(後編)・アケモン視点(後編)・テバコ視点)
「元々、キュドン様は、
ダンジョンを管理する組織の一員でした。
ですが……その……
ダンジョンが、オリジナルの世界に転移してしまい、通常の業務が無くなってしまったばかりか……
その理由を調査する仕事を拒否されたので、
キュドン様は、管理人の職を、クビにされてしまいました。
我々、家臣は、その……
冒険者として身を立てながら、キュドン様を養うと言ったのですが……
あれよ、あれよ、と言う間に……
こんな事に、なってしまっていました。
今、思うと、その頃から……
キュドン様は、意図が分からない指示を出したり、
理解不能な行動を取られる事が、多くなったのです。
ですが……
何処まで、オカシイのか、自分でも良く分かっていません。
何故ならば、キュドン様は……
相手に錯覚を起こさせる【誤認】と言う、異能を持たれていますからね。」
ラネトは、淡々とした口調で、
キュドン様の悪口を言い始めた。
「分かる範囲で良えから……
具体的に、オカシイと思ってはるところを、話してくれへんか?」
「はい。では……」
【ボン】
ラネトの頭が、吹っ飛んだ。
「ちい。
鑑定しきれへんように、巧妙に偽装された、
契約魔法か、似たような、何かをかけられてたみたいやな……」
背の高い、イケメンが、
首から上が無い、ラネトの死体を見ながら、苦い顔をしている。
「無敵タイムをかけてたら、良かったね。
そしたら、彼の頭と体は……『現状維持』を保てたのにね。」
小さな、おっさんが、
ラネトの死体を眺めながら、悔しそうな顔をしている。
「分かり難い、遠回しな言い方ね。
ラネトに、無敵タイムをかけてたら、死なせずに済んだのに!って、普通に言えば良いじゃん。」
背の高い女が、
苦笑いしながら、小さな、おっさんの頭を叩く。
「難解な言い方の方が、賢こそうじゃん。
『はよ帰れ!』よりも、『ぶぶ漬けでも、どうどす?』の方が……
賢くて、品がある感じがするのと、同じ理屈だよ。」
「賢くて、品がある?
嫌味ったらしくて、糞意地の悪いの間違いでは?」
背の高い女が、
小さなおっさんの頭を、再度、叩きながら、苦笑いしていた。
◇◇◇
「でっ、そっちの、お姉さんは……何か知ってる?
そこの、頭が吹っ飛んだ人と、最恐の情報屋コンビなんて、呼ばれているんでしょ?
有益な情報をくれるのならば……
そんな頭にならないように、善処するわよ。」
人形のような女が、淡々とした口調で話す。
「いえ……アタシは……情報を引き出す専門でして、その……
それ以外は……管轄外ですから……」
アタシは……ラネトみたいになりたくない訳ではない。
ただ、正直に答えただけだ。
「キュドンの協力者とは誰なの?
もっと、具体的に教えて。」
小さな、おっさんが、淡々とした口調で質問をしてくる。
「キュドン様は、秩序の破壊者。と呼んでました。
ただ……秩序の破壊者とは、組織名らしく……
特定の誰かを指した言葉では無いらしいです。」
アタシは、意を決して答えた。
この質問に答えた場合……
ラネトのような頭になる可能性があったからだ。
とは言え……嘘の通じない相手に、嘘をつくのは、得策じゃない。
どちらにしろ、ヤバいのであれば……
見逃してくれそうな相手に媚を売るべきだからな。
「へ~。
その秩序の破壊者の組織の者に、
貴女は、会った事はある?」
「知らずに会っていた可能性は、0ではないですが……
アタシが認識している限り無いです。」
小さな、おっさんの鋭い質問に、
アタシは、正直に答えた。
「嘘は言ってないよ。」
背の高い女が、淡々とした口調で、
アタシの返答が嘘じゃない事を、証明してくれる。
「てっ、事は……
貴女、自身には、秩序の破壊者と、直接、連絡が取れるようなパイプは無い。
そう言う認識で良いのかな?」
「はい。」
小さな、おっさんの質問に、
アタシは正直に答える。
小さな、おっさんは、背の高い女を見る。
背の高い女は、小さな、おっさんに頷く事で、
アタシの潔癖さを証明してくれた。
◇◇◇
「無敵タイムがなかったら……
この人、何回か、頭が吹っ飛んでたね。
でっ、これ以上、引き出せなさそうだけど……
どうする?サヨナラする?」
小さな、おっさんが、淡々とした口調で話す。
「せやな。
取り敢えず、
秩序の破壊者って言う、謎の組織が有るって言う事と、
キュドンを捕まえる事が出来たら、
秩序の破壊者って言う、謎の組織の詳しい情報を得られる。
今日のところは、
この2つの事が、分かっただけで、良しとしとくか。」
背の高いイケメンが、
小さな、おっさんの理不尽な発言を肯定しやがった。
「それも、そうだけど……ゼロイチ。
シエジ様や、コロチン。カベショウに、
キュドンが、秩序の破壊者って言う、謎の組織と繋がっている!って言う事だけでも、
直ぐに、報告しておくべきだと思うんだけど……」
人形のような女が、アタシの存在を完全に無視して、
背の高いイケメンに、意見している。
「せやな。直ぐに始める。」
そう言うと、背の高いイケメンは、
馬車の奥に引っ込んだ。
「無敵タイムを解くね。サヨナラ。」
小さな、おっさんが、笑顔でアタシに別れを告げた。
◇◇◇
気がつけば……
頭の無い、自分の体を見下ろしていた。
「自分で行く?手伝う?それとも……消滅させる?」
背の高い女が、アタシを見ながら、質問をしてくる。
『自分で、行きます!』
アタシは、背の高い女に、返答を返した。
これ以上、こいつ達に、敵として関わるべきじゃないと、
アタシの心が、警鐘を鳴らしまくっている。
だから、この光の先が、地獄に続く道だとしても……
アタシは、後悔しないだろう。
柔らかな光が、アタシを包み込む。
願わくば……
今よりも、身の安全が保障された場所に、辿り着けますように。
ーーーーーー
「あのキュドン四天王を、蟻を踏み殺すように始末するとわ……」
キンノウ君が、タメ息をつきながら、
ニャレスと、ヴォルを見る。
「アケモン君のようにゃ、特殊な支援系の異能を持った者が居る、
特異点と準特異点のみで、構成された、少数精鋭のチームでもにゃい限り……
人の子で構成された、少数精鋭のチームにゃど、
全て、等しく、お雑魚様にゃ。」
そんな、キンノウ君に、ニャレスが、
失礼極まりない返答を返す。
「まぁ……人の戦の優れたところは、
数の暴力と連携。それと……様々な武具じゃからな。
アケモン君の無敵タイムのバックアップが無い状況で、
精鋭で揃えた、500~1000人規模の、モンスターの討伐部隊などの相手をすると考えた場合……
儂とニャレスのコンビでも、
それなりに手こずるとは思うぞ。」
「それだけ集めても……それなりに手こずる。って言われる程度のレベルなのですねぇ……」
ヴォルは、フォローのつもりで話したのだろうが……
どうやら、逆効果だったようだ。
その証拠に、テバコちゃんなんか、
真っ青な顔をしながら、下を向いてしまった。
「まぁ……得手不得手があるからね……
今は、ゴチャゴチャ考えず、自分の得意分野を伸ばす事を考える時期よ。」
レサさんが、苦笑いしながら、
自信を失いかけている、テバコちゃんをフォローする。
「特殊点レベルまでの仕事ならば、
どんな仕事でも、エキスパートの方達と同じ仕事を、こなせはる、お前に、いくら、ド正論を言われても……
言われた方は、嫌味にしか聞こえへんと思うで。」
ゼロイチ君が、苦笑いしながら、
そんなレサさんを嗜めている。
「もう。若い子の夢を奪うような事を言わないの。
人は人。自分は自分。
たとえ、1つの分野だけでも……
頑張れば、準特異点と張り合える。
それで良いじゃない。」
レサさんが、膨れっ面をしながら、
人生の厳しさを語るゼロイチ君に、苦言を呈している。
「まぁ……優れた人物と、尊敬すべき人物は、必ずしも一致するものでもない。
優れた人物に成れる才能が無いのであれば、尊敬すべき人物に成れるよう、
自分のペースで、自分磨きを続ければ良い。儂はそう思うぞ。」
「だにゃ。
たとえ……客観的に見て、モブにゃとしとも……
人も獣も……各々が、各々の人生の主人公。
妾は、そう思うにゃよ。」
「これこれ。それ……
フォローになってるようで、なってないぞ。」
嫁が、苦笑いしながら、
悪気の無い、ヴォルとニャレスの失礼な発言を、
優しく諭していた。
ーーーーーー
人口の33%は、準変異点。
アタシ達は、その人達を、
最優先で守るべき、社会の最底辺に居る最弱者。
そう決めつけていた。
そして……
Aクラスのジョブ補正を受ける資格だけでなく、
Sクラスのジョブ補正を1つ受けられる資格も得た、
人口の1%しか居ない、アタシ達、特殊点は、
選らばれた強者であり、
選ばれなかった者達を、守り、導く責務を負った者。
そう決めつけていた。
だけど……現実は違った。
もし、準変異点のジョブロが、
準特異点の異能を付与されていなかったとしても……
戦闘と言う意味では、
最強のジョブ補正と言われている【武聖】のジョブ補正を受けているアタシが……
ジョブロに勝てたとは、到底、思えないのだ。
そして……
そんなジョブロは……
幻獣のヴォル様と、ニャレス様に瞬殺された。
でっ、ニャレス様が言うには……
『アケモン君のようにゃ、特殊な支援系の異能を持った者が居る、
特異点と準特異点のみで、構成された、少数精鋭のチームでもにゃい限り……
人の子で構成された、少数精鋭のチームにゃど、 全て、等しく、お雑魚様にゃ。』
との事だ。
世界規模の商売組織である、ギルドは、
管理人や管理者の言う、能力の評価基準は、アバウトすぎるとし、
各々のジョブの習熟度に合わせて、
A~Dの4段階に分けた評価基準を設定し、
ジョブ補正の習熟度の評価基準の枠に収まらない、
特殊点をSクラス。準変異点をEクラスとした、
6段階の評価基準を採用しているが……
管理人や、管理者となる化物達が、我々へ下す評価基準と言う意味では、
ギルドが否定した、評価基準が正解だと言う事が、
身に染みて分かった気がした。
だからと言って、アタシは……
ギルドの評価基準を否定するつもりもない。
ギルドの評価基準は、
人の世を上手く回すと言う意味では、
管理人や管理者の設定した評価基準よりも優れているからだ。
ただ1つ、
ギルドの評価基準に対して、異を唱えたいのは、
アタシ達が、最弱の者とバカにする、Eクラスの者達が、
管理人や管理者の設定した評価基準では、最下層のモブではなく、変異点と呼ばれ、
Sクラスを自称する、アタシ達、特殊点と同等の評価を受けているのは、正しい評価なので、
Eクラスへの評価を、改変して欲しいと言う事だけだ。
いや……変わるべきなのは、
アタシを含めた、各々の価値観だな。
いくら、
ギルドと言う組織。国と言う組織。町や村と言う組織の評価基準を改変したとしても……
結局、誰かを評価するのは、組織と言う枠では無い。
組織に属する、他者を評価する権限を得た者が、他者を評価する。
つまり……何処まで行っても、人が人を評価する。
この事実は、変わらないのだからな。
もしかしたら……
ワルウン王国の王族と、
アタシ達、ワルウン王国の王族の直属の家臣団が、
民達や、8人の諸侯達から見限られたのは……
キュドン達への恐怖などではなく、
自分達が選ばれた者でも無い癖に、選ばれた者だと勘違いしていた、
アタシ達の傲慢さが招いた結果なのかもしれないな。
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