VSキュドン四天王(アケモン視点編(前編)・オフメ視点(前編))
「ピッ。ピッ。ピッ。」・「ツクツクツクツク。」
コイリドが、僕と嫁の膝の上を飛び回りながら、
警戒音を発している。
ドンソンは、半ギレになりながら、
肩掛けタイプの小動物用のキャリーバッグの肩にかけるヒモを口に加えながら……
僕と嫁の肩の上を飛び回りながら、
僕か嫁、どちらかの肩でも良いから、
小動物用のキャリーバッグのヒモをかけようと奮闘している。
「ピッ。ピッ。ピッ。」・「ツクツクツクツク。」
「ピッ。ピッ。ピッ。」・「ツクツクツクツク。」
アルゾウとナイコは、
魔術式の温冷水の毛布にくるまりながら、
魔術式の温冷水の毛布の中から、顔だけ出して、
警戒音と、威嚇を、交互に繰り返している。
「おお。ドンソンも……腐ってもアラート ジリスだったんだね。
コイリド達と同じように、危険を察知して、焦り始めたよ。」
嫁が、そう言いながら、
小動物用のキャリーバッグのヒモを、僕の肩にかける。
「ピュイ」
コイリドは、嬉しそうな声を出すと、
小動物用のキャリーバッグの中に入れている、
魔術式の温冷水の毛布にくるまって息を潜める。
「ピュイ・ピュイ・ピュイ」
ドンソンは、小動物用のキャリーバッグの中に戻ると、
両手を広げて、ジャンプしながら、オヤツをねだり始めた。
「前言撤回。
ドンソンは……やっぱり、ドンソンだわ。」
嫁が苦笑いしながら、
ドンソンに、手渡しで、エン麦を与える。
「ピイー。」
コイリドが、不機嫌そうな声を出す。
「ほいほい。あんたも食べなはれ。」
嫁がそう言いながら、
今度は、コイリドに、手渡しでエン麦を与える。
「ハハ。えらく、懐かれてますな。」
ハケオさんが、そんな僕達のやり取りを見ながら、目を丸くしている。
「それなりに、時間はかかるけどね。
ホレ。ハケオさんも、オヤツを渡してみ。
最初は噛まれるかもだけど……
その内、こんな感じになるよ。」
嫁がそう言いながら、
輪切りにした、ニンジンの入ったタッパを、ハケオさんに渡す。
「ハハ。こりゃどうも。
遠慮なく、貰いますね。」
ハケオさんが、そう言いながら、
タッパに入った、ニンジンを、アルゾウとナイコの顔の前に持っていく。
【シャク・シャク・シャク・シャク】
【シャク・シャク・シャク・シャク】
アルゾウとナイコが、
ハケオさんの手から、ニンジンを奪うと、一心不乱に食べ始めた。
「ピッ。ピッ。ピッ。」・「ツクツクツクツク。」
「ピッ。ピッ。ピッ。」・「ツクツクツクツク。」
「他のリスが、食ってる奴の方が、旨そうに見えるか。」
嫁が大笑いしながら、
ぶちギレモードのドンソンとコイリドを眺めている。
「残りは、お返ししますね。」
ハケオさんが、頭を掻きながら、
ニンジンの入ったタッパを、嫁に返す。
「ほれ。良かったですね。
ハケオさんに、お礼を言いな。」
嫁が、ハケオさんに、ペコリと頭を下げると、
ドンソンと、コイリドに、ニンジンを渡す。
「ピュイ。」「ピュイ。」
ドンソンと、コイリドが、
ハケオさんの方を向いて、小さく鳴く。
まるで……
ハケオさんに、お礼でも言ったのようだ。
【シャク・シャク・シャク・シャク】
【シャク・シャク・シャク・シャク】
ドンソンと、コイリドも、
一心不乱に、ニンジンを食べ始めた。
「このまま、お腹が膨れて、寝てくれたら良いね。」
嫁は、ドンソンと、コイリドの頭を、優しく撫でながら、
馬車の外を睨んでいる。
◇◇◇
「そろそろ、相手の射程圏内にゃ。
妾が、特別にゃ時間を共有してやるにゃ。
会話は念話以外がは、使い物ににゃらにゃいと言う事を、肝に銘じて欲しいにゃ。
では、始めるにゃ。
「『高時間分解解能 開始』・『感覚共有 開始』。」
ニャレスが異能を使ったんだろう。
見える景色がスローモーションに切り替わる。
そして……
空気が体に纏わりつく感覚がする。
以前、体験した事が有るから、慌てはしないが……
相変わらず、不思議な能力だ。
『ほう。あの女が、スピード クイーンか。
確かに、早いのう。』
ヴォルの念話が頭の中に響き渡る。
『ヴォル。いけるか?』
ゼロイチ君が、淡々とした口調で質問する。
『問題無い。
ジョブロとやらも、一緒に消せそうじゃ。
ニャレス。
オフメとラネトとやらの拘束を任せても良いか?』
『任せるにゃ。
人の子の準変異点には劣るにゃが……
妾も、アンチ サイは得意にゃ。』
『うむ。始めるぞ。』
『了解にゃ。』
ヴォルの指示に、ニャレスが、ニヤリと笑った。
◇◇◇
飛ぶように早いスピードで、一直線に走って来てるであろう、ウゴメスが、前転をしながら、身体を捻っている。
多分……この後、ダッシュで、元々、居た場所に戻るつもりなのだろう。
飛ぶように早いスピードと表現をしたが……
僕の目に映るのは、スローモーションのような映像だ。
だが、近くの木々から落ちる、落ち葉のスピードと比較した場合、ウゴメスの動くスピードの方が早く見える。
その為、ニャレスの異能。【高時間分解能】の影響下でなければ……飛ぶように早いスピードに見えただろうと言う推測から、敢えて、そう表現してみたのだ。
ジョブロ達は、物凄く遅いスピードでは有るが……
乗っていた、アーティフィシャル シー フォースを反転させようとしているようにも見える。
『『レーザー光線』』
ヴォルは、異能を使って、レーザー光線を照射した。
光の速さは、圧倒的に早い。
ニャレスの異能。【高時間分解能】の影響下も、目で追うのが難しいぐらい早いのだ。
ウゴメスの顔が、ヴォルのレーザー光線で溶けていく。
そして、レーザー光線は、そのまま、直進し、
ジョブロの胴体の一部を溶かした。
『『召還』』・『『アンチ サイ』』
ニャレスは、
オフメとラネトと僕達の馬車の前に呼び出して、無力化した。
『では、時間のにゃがれ(流れ)を戻すにゃよ。』
『おう。お願い。』
ゼロイチ君が、ニャレスに返答を返す。
『『高時間分解能 解除』・『感覚共有 解除』。』
ニャレスが、異能を解くと、
空気が体に纏わりつく感覚が消え、
僕の目に見える世界の景色は、何時も通りの景色に戻った。
ーーーーーー
「全員に、アンチ サイはかけられそうっすか?」
「幻獣が2匹居る。そいつ達までは無理だ。」
ウゴメスさんの質問に、ジョブロさんが答える。
「2匹は……別種に見えるけど……
どちらも、セラブラム ミアキスみたいね。
セラブラム ミアキスは、
オスは犬のような姿を、メスは猫のような姿をしてるって聞いた事があるわ。
だから、多分……番なんじゃないかしら。」
アタシは、鑑定した結果を、皆に報告する。
「異世界人らしき者の情報は?」
戦闘狂のウゴメスさんが、
ニヤニヤしながら、質問をしてくる。
「キュドン様から聞いていた異世界人の字と、一致したわ。
ただ……
準特異点の異能の詳細は、アタシにも鑑定が出来ない。
だから……
キュドン様からの情報を信じすぎないでね。」
「了解っす。」
アタシの返答を聞いた、戦闘狂のウゴメスさんが、
嬉しそうな顔をしながら、準備運動を始める。
「そうそう。あの一団に、
テショミって言う字を持つ者と、
ハケオって言う字を持つ者も居たわ。
キュドン様から聞いている、
受けてるジョブ補正の情報とも一致したわ。
どうやら……
ツキが回って来たみたいよ。」
「幻獣の目を盗んで、狩る相手が増えた事が……
ツキが回って来たと言うのかよ?」
アタシの話を聞いた、ジョブロさんは、
アタシの感想とは、真逆の感想を話ながら、
タメ息をついている。
「ウゴメス。
最悪、ハケオとテショミは諦める。
トバチリとキンノウだけは……確実に殺れよ。」
「了解。」
ジョブロさんの心配そうな顔を見て、
ウゴメスさんは、満足そうな顔をしながら頷いていた。
◇◇◇
「『視力強化』・『夜目強化』・『速度アップ』。
うし。行ってくる。」
身体強化魔法で、視力と夜目、スピードを強化したウゴメスさんが、そう言うと、消えた。
小高い丘の上から、3キロ先ぐらいに、ターゲットが居る。
アタシの【浄冥眼】は、暗闇でも、昼間のように見えるのだが……
ウゴメスさんのスピードが速すぎて、目で追えない。
「『千里眼』・『範囲指定』・『アンチ サイ』……
『アンチ サイ』・『アンチ サイ』……
ウゴメス、戻れ!
皆、逃げるぞ!」
ジョブロさんが、唐突に大声をあげる。
アタシは、訳も分からずに、
アーティフィシャル シー フォースを反転させようとした筈なのだが……
気がつかば、カンテラを取り付けられた、馬車の後ろ側に居た。
夜目が殆んど効かず、頭の中に、靄がかかった感じだ。それに……体が重い。
成る程。ジョブロさんのアンチ サイの【範囲指定】の中に、入ってしまったか?
いや……そんな訳ない。じゃあ……何で?
意味が分かんない?
◇◇◇
「なぁ……
ジョブロって奴は……準変異点なんやろ?
なんで、この暗闇の中、あの距離から、ピンポイントで、
俺達の居る場所に、アンチ サイをかけられたんや?」
背の高い、イケメンが、
馬車の中から聞いて来る。
「今、答えるか……
答えるまで、イビられるかしか……
選択権は、にゃいにゃよ。」
セラブラム ミアキスのメスが、ニヤニヤしながら、
アタシと、横に居るラネトを見ている。
「【千里眼】と言う異能と……
【異魔の範囲指定】と言う、魔法や魔術、異能の効果の範囲を指定する事が出来る異能を、
とある方から、付与されたとの事です。」
「具体的には誰や? キュドンか?」
「誰かは知らないですが……キュドン様ではない事は確かです。
何故なら、
キュドン様の異能は、相手に錯覚を起こさせる【誤認】。
受けてるジョブ補正は【忍者】だからです。」
ラネトが、
背の高い、イケメンの質問にペラペラと答える。
「嘘はついないわ。」
「わたしも、そう思う。」
愛らしいが姿だが、人形のように表情の乏しい女と、
背が高く、喜怒哀楽が激しそうな、背の高い女が、
ラネトの答えを批評する。
彼女達も、アタシと同じで、
【浄冥眼】を持っているのだろうな。
◇◇◇
「キュドンは、何で、
カルオモ王国のロテク辺境伯領に侵攻する為に、
【気候変動装置】を使用したの?
それって……ダメな事なんでしょ?」
背の低い、おっさんが、
淡々とした口調で、アタシ達に質問をしてくる。
「そんな話は聞いてません。」
ラネトが、淡々とした口調で返答を返す。
「嘘はついてない。だけど……微妙な感じ。」
背の高い女が、ラネトの返答に首を傾げる。
「流石は、特異点。
心の機微まで見るとは……恐れ言ったわ。」
人形のような女が、目を丸くしている。
「でっ。貴方の私見は?」
「キュドン様、ご自身は使われていないと思います。
ですが……
キュドン様の協力者の方が、使われたんじゃないかと思ってます。」
「だから、【高次元の施設のセキュリティ キー】が付与された、アラート ジリスを狙ってはった。
もし、その協力者とやらが、心変わりをしはって、
カルオモ王国の農業地帯の気候を弄りくりまくりはったら……
折角、手に入れた、カルオモ王国が、滅んでしまうもんな。
てか……キュドンって……管理人やろ?
管理人が、何で、直接、民を支配する事にしたんや?
それって……ご法度やろ。」
背の高い、イケメンが、
不思議そうな顔をしながら、ラネトに質問をする。
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