寸法臣カマテの裏切りと、本当の異能 / 急転直下の解決と、蚊帳の外の者達の雑談
「てめぇ……何者なんだ?」
ホクフウが、青い顔で、目の前の男に質問をする。
我達を守っていた、6人の護衛達は、皆殺しにされた。
そして、我達は、潜伏中の身。
誰も、我達の居どころなど知らない。
これは……つまり……我達の敗北を意味する。
「何を、今更。
先程まで、カマテと……
俺の字を呼んでいたでは、ありませんか。」
目の前の男は、そう言いながら、ケラケラと笑う。
「そんな筈は無い。
寸法臣カマテの異能は【誤認】。
そして、ジョブ補正は【世界を繋ぐ者】。
その筈では無いか?
何故……戦闘が不向きなお前に……我達の護衛を殺す事なんて、芸当が出来るのだ!
てめぇは、カマテでは無い。何者なんだ!」
ホクフウが、怒りで我を忘れたらしく、
目の前の男を怒鳴りつける。
「キュドンもそうだが……
俺以外の者は【誤認】と言う異能を使いこなせる器では無い。
俺が……いくら、【世界を繋ぐ者】と言う、ジョブ補正を受けているからといって……
最強の情報収集能力と、通信技術を持つ、
【知識の泉へのアクセス】と言う異能を持つ者と、情報戦で張り合える事に……
疑問を持った事は無いか?」
「………」
寸法臣カマテを名乗る、目の前の男の質問に、
ホクフウが黙る。
確かに、我も、ホクフウも……
何度か、その疑問を持った。
だが……何時の間にか、その疑問は消えていた。
それは……
取るに足らないからではなく、
寸法臣カマテとは、そう言う者だ。と認めなければいけない。
そう言う風に、思い込まされていた。と言う事なのだろうか……
ならば……
寸法臣カマテの本当の異能とは……一体……何だと言うのだ。
◇◇◇
「俺の異能は【異能の吸収】と【元素のマナ化】だよ。
化物のようなマナの量を持たれてる、ニビル人のトティアマ様と違って、ニビル人で無い俺が……
他者の異能を吸収しても、使え無いと思うだろ?
だが……全ての元素をマナ化する事が出来る俺は……
身の周りの空気をマナに変換し、そのマナを利用する事で、
自分の中にある、マナの量の少なさを補う事に成功したのだよ。」
寸法臣カマテを名乗る、目の前の男は、そう言いながら、
ケラケラと笑っている。
「つまり……【誤認】と言う異能は、誰かから奪った物。
そんでもって、
【知識の泉へのアクセス】と言う異能を持つ、我やホクフウ並みの情報戦が出来たのも、
誰かから【知識の泉へのアクセス】と言う異能を奪っていたから。
そう言いたいのかい?」
「その通り。」
寸法臣カマテを名乗る、目の前の男は、そう言いながら、
ケラケラと笑っている。
「でっ。我達をどうするのだ?」
「ヤップ侯爵に引き渡す。
まぁ……皆、心の底からは信じないだろうが……
お前達を捕まえる為に、一芝居、打ったと言えば……
表立って、俺を処罰する事は出来ないだろ?」
寸法臣カマテを名乗る、目の前の男は、そう言いながら、
ケラケラと笑っている。
「おい。それで良いのか?
ヤップ侯爵側には……
お前の孫の人生を狂わせる切っ掛けとなった、アケモンや、
お前の孫を殺すように部下に命じた、キュドンが居るんだぞ。」
「知ってるよ。
まぁ……バカな孫のせいで慌てはしたが……
そのお陰で、
お前達を捕まえると言う誉れを得られた。
今となっては……バカな孫に感謝しかない。
何故ならば、
この件で、最も戦果を上げるのは、
土狛一族でも、三古道一族でもない。
寸法臣一族と言う事になるのだからな。」
寸法臣カマテを名乗る、目の前の男は、そう言いながら、
ケラケラと笑っている。
「お前……狂ってる。
孫が、可愛く無いのか?」
「可愛い?
バカを言うな。
あいつは……寸法臣一族の名を汚した災厄だ。
今回は、何とか、寸法臣一族の名を守れそうだが……
寸法臣一族の者達には、多大なる負担をかけた。
本当に……死んでくれて、ホッとしているよ。
そして……
バカな孫が、早世する切っ掛けを与えてくれた、アケモンや……
バカな孫を始末してくれた、キュドンには……
どんなに感謝しても、感謝しきれないぐらいの恩を感じているよ。」
寸法臣カマテを名乗る、目の前の男は、そう言いながら、
ケラケラと笑っている。
「理解……出来ない。」
我は、思わず、呟いてしまった。
「そうか。
まぁ……俺は、俺。あんた達は、あんた達。
価値観や、大事な物。それを……共有する事が出来ないからといって……問題無いだろ?」
寸法臣カマテを名乗る、目の前の男は、そう言いながら、
ケラケラと笑っている。
◇◇◇
「『ゴーレムになれ。』」
【パキ・パキ・パキ・パキ】・【パキ・パキ・パキ・パキ】
【パキ・パキ・パキ・パキ】・【パキ・パキ・パキ・パキ】
【パキ・パキ・パキ・パキ】・【パキ・パキ・パキ・パキ】
我とホクフウの肉体が、
土の塊のように変化していく。
「面白い異能だろ?
【ゴーレム化】と言う異能なんだが……
物体だけでなく、生き物も、
ゴーレムにする事が出来るんだよ。
まぁ……【自律思考型ゴーレムの作成】と違って、
生み出したゴーレムが、半永久的に、ゴーレムとして活動させる事が出来ないのが、残念な部分ではあるがな……
そうそう。
【ゴーレム化】の異能の効果が切れない限り、
あんた達は、俺の言いなりだ。
てっ。事だから……
さっさと、ヤップ侯爵の所に行くぞ。
それと……俺の本当の異能に関する情報は……
秘密にしてくれよな。」
「仰せのままに。」×2
心とは、裏腹に、
寸法臣カマテを名乗る、目の前の男の命令に背けない。
まるで……
頭の中と体を、得たいの知れない何かに乗っ取られた気分だ。
ーーーーーー
「はぁ?嘘でしょ!」
嫁が、目を見開きながら、
通信機器に映る、キュドンさんを睨んでいる。
『本当だ。
寸法臣カマテが、ホクフウとナンフウを捕獲して、
ヤップ侯爵の所に連れて行ったんだよ。
数日もすれば……
ゼロイチの親父さん(土狛シエジ)や、リンゴトマドからも、同じ情報が来ると思うぞ。』
「そこじゃない!
孫の恨みを水に流してやる!とかなら……
まだ、納得が行くけどさぁ……
感謝する!って何よ。
そりゃ……わたしにとっては、その方が、嬉しいけどさぁ……
パパに意地悪をしまくってきた、ニギリステを、わたしは、許す気もないけどさぁ……
それでも……
あんまりじゃない?」
嫁が、烈火の如く、怒っている。
『俺に言われてもさぁ……
てか……寸法臣カマテって、奴は、そう言う奴だ。
これは……【誤認】の影響で、そう思わされるてる訳じゃないぞ。
ガチで、そう言う奴なんだよ。』
「成る程ねぇ……
それで、ニギリステは、僕に……
必要以上に、突っかかってきたんだな。
ニギリステは、きっと……
自分が、欲しくて、欲しくて、たまらない異能を、僕が……
不純な動機を満たす事だけを考えて貰ったのが、
どうしても、許せなかったんだろうね。」
「はぁ?
それは、それで、腹が立つ。
何で……パパに八つ当たりをするのよ!
パパに八つ当たりをして良いのは……わたしだけなのよ!」
どうやら、僕の不用意な一言のせいで……
嫁の標的が、キュドンさんから、僕に移ったようだ。
「ご馳走様。」
「そこは、フォローしたれや!」
大笑いしながら、嫁と僕を交互に見るレサさんに、
ゼロイチ君が、珍しく、まともなツッコミをしてくれる。
「にしても……
最後の最後に、寸法臣カマテに、美味しいところを、全部、持ってかれたみたいじゃのう……」
「どんなカラクリを使ったのかは、分からにゃいが……
きっと、奴は……
早い段階から、こうにゃる事も、想定して動いてたのにゃろうにゃ。」
苦笑いする、ヴォルの言葉を、
ニャレスが、タメ息をつきながら繋ぐ。
『我も、猫ちゃん(ニャレス)の意見に賛成だな。
本当……寸法臣カマテって奴は……
煮ても焼いても食えない奴みたいだな。』
ソイハさんが、タメ息をつきながら、
ニャレスの意見に賛同する。
「ところで……トティアマ様とか、他のメンバーは?」
嫁が、不思議そうな顔をしながら、キュドンさんに質問をする。
『ヤップ侯爵達と、通信機器を使って、
事後処理の方針を決める為の会議中だよ。
因みに……俺達の側から、お声がかかったのは、
トティアマ様。無敵様。クモヒト様。ゾンアマさん。マガツニチ。ニバセン。ワラハラ。
でっ。お前達の側は、
土狛シエジ。土狛オシシ。三古道リンゴトマド。三古道アプウイ。
それと……
ダンジョン管理局職員のカベショウと、
同じく、ダンジョン管理局のコロチンらしぞ。』
「へぇ……
カベショウとコロチンねぇ……
あいつ達、殆んど、何もしてはらへんのに、
めっさ、大出世したやん。
ホンマ、羨ましいわぁ。」
ゼロイチ君が、ニヤニヤしながら、大笑いしている。
「こら。人の不幸を笑うな。
そんな事をしていると……
何れ、特大ブーメランが、自分に返って来るぞ!」
そんなゼロイチ君を、嫁が、ジト目で、嗜めている。
『ハハ。お前達……緊張感がねぇな。
そうそう。
マガツニチからの伝言だ。
『もう暫く……ハチハタ姫を宜しく頼みます!』
との事だ。』
「了解。任された。」
嫁が真剣な顔で頷く。
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