死の宴(アケモン視点 / ルワオヨ視点(前編) / コトル視点)
「まるで、軍隊蟻やな。
アケモン君の無敵タイムみたいな、デタラメな異能でも無い限り……
やっぱ、800人で、10万人の相手は出来ひんな。」
ゼロイチ君が、【空の目のナビ】を確認しながら呟いた。
「レツブン大帝国軍の北軍が、
文字通り、死兵となって突撃し続けてくれてるからこその戦果だよ。
普通は……
自分の命を厭わずに、戦力差が激しい相手に、特攻をするなんて事はしないよ。」
「せやな。
てか……コトルにワーム ホールを作らせて、
レツブン大帝国の北軍を離れた所から、一気に攻めさせる!って聞いた時は、おったまげたけど……
アケモン君は、レツブン大帝国軍の北軍が、ここまで、やってくれはる!って、思ってなかったみたいやね?」
ゼロイチ君が、興味津々な顔で質問をしてくる。
「うん。
寧ろ……最初に突撃した精鋭達が、殺られた段階で、ビビって、誰もワーム ホールを通らなくなる。って思ってたよ。」
「さよか。
せやったら……何で、こんな作戦を立てたんや?」
ゼロイチ君が、不思議そうな顔で質問をしてくる。
「敵が来た。殲滅した。そして……
敵が来た場所にある、ワーム ホールは繋がれている。
普通……残りの敵を殲滅しに行くでしょ。」
「でっ。出た場所には……10万人近くの軍の前。」
「そう。
そして……
そのタイミングで、ワーム ホールは閉じる。
そしたら……
第5・第6部隊も、レツブン大帝国軍の北軍も、パニックになる。
そうなれば……
殺り合うしかない!って言う空気になって……
今みたいな感じになるんじゃないか?って、思っただけだよ。」
「成る程ね。
この過程は、想定外。
せやけど……
結果は想定しはった通り。
そう言う訳やね。」
「うん。」
僕は、ゼロイチ君の言葉に、正直に頷いた。
「アケモン君は……やっぱり、鬼ね。
そして……
自分が死ぬのを恐れずに、特攻を続ける、レツブン大帝国軍の北軍は……
狂戦士の集まり。ってとこかしら。」
レサさんが、僕達の会話に加わってくる。
「鬼と言うよりも、最早……死神様か悪魔でしょ。」
嫁がジト目で、僕を見ている。
ーーーーーー
「何なんだよ、こいつ達!死ぬが怖くねぇのかよ!」
「セフコさんは、何をしてるのよ!
早く、ワーム ホールを繋いでる者を殺ってくれないと……
マナも体力も尽き果てしまうわよ!」
「殺られた。とか?
ワーム ホールを繋げる時間なんて、
化物レベルでも、数十分が限界よ。
もう……3時間もワーム ホールが開きっぱなし!
アタイ達の想像を遥かに上回る化物が、
ワーム ホールの向こう側に居るのよ!」
「なら……そいつが出て来ずに、ワーム ホールを繋ぎ続ける事を選択した事に感謝しないとな!
この……ワラワラと湧いて出てくる雑魚どもを、
全滅させたら、終わり。って事だろ?」
「それが、出来ないから、苦労してるんじゃない!
さりとて……転移魔法で距離を取るのも愚策!
バラバラになって逃げる!なんて事をすれば、
敵に取り囲まれて、直ぐに死ぬわよ!」
皆が、思い思いの言葉を叫ぶ。
◇◇◇
「そう思うならば、
盾役が、殺られて、敵が雪崩込まないよう、
全力で、弓を引け!ライフルを撃て!魔法を放て!
剣や斧やナイフを使う、仕留め役も、撹乱役も、
この乱戦では、役割を十分に果たせない!
今は、盾役と、回復役と、狙撃役とサポート部隊の連携だけが、活路を見いだせるんだ!
兎に角……敵を減らせ!散らせ!
そうすれば……
仕留め役も、撹乱役も、彼等の本来の仕事が出来るようになる!」
「了解!」×50
「了解!」×50
第5部隊と第6部隊の混成チームの総隊長のヤバムリさんが、大声を張り上げて、皆を鼓舞する。
50名の盾役を中心に、
390名の輜重兵を中心としたサポート部隊の半数が、
盾を持って、皆を取り囲む。
そして、その内側を、
長槍を持った、390名の輜重兵を中心としたサポート部隊と、
獲物を長槍に持ち替えた、50名の仕留め役と、50名の撹乱役が、
槍を突き出して、敵を屠る。
そんでもって、更に内側に、
50名の狙撃役が、ライフルの弾丸や弓矢に、魔法や魔術を付与して、敵を屠る。
そして……更に内側に、
アタシ達、50名の回復役が居て、皆に、回復魔法をかけ続けている。
そんでもって、輪の一番、内側には、
10名の指揮官達が居る。
彼等は、指揮を取りながら、
魔法や魔術で、我々の周りに、結界を張り続けている。
◇◇◇
アタシ達の居る場所は、左右に高い崖がある隘路。
そして……
前も後ろも、上り道になっている、Vの字の下の部分のような場所だ。
そして……敵は、ワーム ホールを、アタシ達の前後に繋げている。
最初に飛び出して来たのは……
ちらほらと、Aクラスの戦闘系のジョブ補正を受けた者や、準変異点が混ざる、
Bクラスの戦闘系のジョブ補正を受けた者を中心とする、兵士達だった。
それに対して、アタシ達は、
戦闘に特化していない、Sクラスのジョブ補正を受けている、サポート部隊と、回復役。
そして……
戦闘系のSクラスのジョブ補正を受けている、
盾役・仕留め役・撹乱役・狙撃役の部隊だ。
敵の一団が、あまりにも鬼気迫る表情だった為、
サポート部隊と、アタシ達、回復役を守る為に、
指揮官達は、迎撃体制の指示を出されたが……
正直、過剰防衛だと思った。
何故ならば、
通常、2つのワーム ホールをもってしても、
敵が、兵を送り込める人数は、多くても、数千人程度だからだ。
しかし……それが……敵の罠だったのだろう。
Cクラスや、Bクラスの戦闘系のジョブ補正や、
戦闘も可能なジョブ補正を受けた者達ばかりの部隊とは言え……数が多すぎる。
まさか、3時間、近くも、ワーム ホールが繋がれ続け、
繋がれた、ワーム ホールから、敵が途切れる事なく、出て来続けるなんて、想像すらしていなかった。
とは言え……今更、逃げる事など出来ない。
ヤバムリさんの言う通り、
敵を狩って、狩って、狩って、狩りまくり、
襲って来る、敵を減らし続けなければ……活路は開かれない。
◇◇◇
「もう……数万の兵は、屠った筈だぞ!
てか……十万を越えたかもしんねぇ。
敵は、一体……何人、居るんだよ!」
「魔力弾を作る、マナが無くなってきた!
通常の弾丸に切り替える!」
「矢に魔法を付与するマナが無い。
通常の矢に切り替える!」
狙撃役達の悲鳴が聞こえる!
「回復役!
回復魔法は、
盾役と、盾を持ったサポート部隊の者に集中しろ!
仕留め役・撹乱役・サポート部隊の長槍を持つ者!そして……
狙撃役。
マナと体力が尽きるまで、各々の役目を果たせ!
敵の人数だって、無限では無い!
開き続ける、ワーム ホールなど無い!
ここが、踏ん張り時だ!
何としても、生き残るぞ!」
「ウォォォォー」・「ウォォォォー」・「ウォォォォー」
「ウォォォォー」・「ウォォォォー」・「ウォォォォー」
「ウォォォォー」・「ウォォォォー」・「ウォォォォー」
ヤバムリさんの檄に、皆が、蛮声で応える。
ヤバムリさんの檄は、真実ではあるが……願望でもある。
何故ならば、人数もマナも体力も、無限ではないのは……
敵だけでなく、アタシ達も、同じなのだから……
ーーーーーー
「半分、以上、いかれましたねぇ……」
「えぇ。そうね。
いくら、こっちが、雑魚ばっかりとは言え……
敵は、化物かしら。」
「敵の練度が高いんでしょうね。
てか……コトルさん。
3つ目の、ワーム ホールも繋いだのに……余裕綽々ですね。
本当に……化物になってしまわれましたね。」
インラと話していた、マガツニチが、
俺に話しかけて来た。
「アケモンが付与してくれた、無敵タイムのお蔭っすよ。
とは言え……流石に、3つは、キツイっす。
インラとの雑談は、ほどほどにして……
対戦車ミサイルを生き物に変えた物を……
敵に放って下さいよ。」
「そうでしたね。
その為に、わざわざ、3つ目のワーム ホールを開いて貰ったのですもんね。
すみません。直ぐに、始めましょうか。」
俺の催促に、マガツニチが、
苦笑いしながら、俺に返答を返してきた。
◇◇◇
「ジヌイニ将軍。
ワーム ホールから、兵を離して下さい。」
マガツニチが、ジヌイニ将軍に命令をする。
「はっ。
皆の者。ワーム ホールから離れろ!」
ジヌイニ将軍が、大きな声で、指示を出す。
【ズザザザザ】・【ズザザザザ】
【ズザザザザ】・【ズザザザザ】
【ズザザザザ】・【ズザザザザ】
ジヌイニ将軍の命令を受けた、レツブン大帝国軍の北軍の兵士達が、一斉に、ワーム ホールから離れる。
「行け!」
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
マガツニチが指定した場所と繋いでるワーム ホールから、
次々と、生き物に変えられた対戦車ミサイル達が飛び出して来る。
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
【バシュン】・【バシュン】・【バシュン】
そして……
そいつ達は、第5・第6部隊の居る場所と繋いだ、ワーム ホールへと吸い込まれて行く。
「サヨナラの時間みたいね。」
インラが、
第5・第6部隊の居る場所と繋いだ、ワーム ホールへと吸い込まれて行く、生き物に変えられた対戦車ミサイル達を見ながら、ボソッと呟いた。
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