バックアップ ワールド解放作戦の具体的な指示
【ブッ・ブッ・ブッ】
ゼロイチ君の通信機器に、
僕達以外の人から通信が来た音が、インカムから聞こえてくる。
『リンゴトマド兄さんからや。
俺達の世界(オリジナルの世界)のジャーナリストで、
取材の為に、この世界で、秩序の破壊者と同行してはる、インラとコトルちゅう奴達を、手下にしはったらしいわ。
でっ。そいつ達から得た、秩序の破壊者の情報を元に、
他世界に散らばってはる、秩序の破壊者を各個撃破していきはる準備を整えはるらしいわ。』
インカムから、ゼロイチ君の嬉しそうな声が聞こえてくる。
「急展開だね……何があったの?」
『秩序の破壊者の産みの親。ニビル人のトティアマと、
地球のドラコニアンの代表者。ヤップ侯爵が、俺達側に付きはった。
その関係で、第6・第8・第9・第10世界の管理人達が、
俺達側に付きはった。
でっ。俺達の世界(オリジナルの世界)のダンジョン管理局と、情報管理局も、右に習えの状況になりはったらしいわ。
まぁ……
寸法臣カマテを始めとした、寸法臣一族の主だった者が行方をくらましはったりと、まだまだ、混乱の火種は残りはってるみたいやけど……
もうすぐ、この騒動に決着がつきそうやわ。』
「具体的に、どんな決着になりそうなの?」
嫁が、興味津々な声で、ゼロイチ君に質問をする。
◇◇◇
『ニビル人の末裔のクモヒトさん。ちゅう人をリーダーとしたチームが、
レツブン大帝国の北部と領土と接する、13番目の秘密の村の高次元の施設の中に有る、パラレル ワールドを繋ぐ【次元転移装置】の術式を、
リンゴトマド兄さんの考えはった内容に書き換える事で、
この世界(バック アップ ワールド)と、他世界との壁に穴を開けるんや。』
ゼロイチ君が、ワクワクした声で、嫁の質問に答える。
『レツブン大帝国の領土と接してる場所ねぇ……
あの国は……アタシ達の側ではない。
13番目の秘密の村の人達が、どちら側なのかは、分からないけど……
その仕事をするのは、かなり厳しい場所なんじゃない?』
『大丈夫や。
レツブン大帝国を、近い将来、トティアマ達が支配する国にする事を条件に、
トティアマ達が、レツブン大帝国が内外から崩壊するように、レツブン大皇帝を操ってはるらしいわ。
具体的には……
レツブン大帝国の少数民族の代表者達を諸侯にする。
当然、レツブン大帝国人は反発しはるやろうな。
でっ。そんな奴等、
無敵様。キュドン。ヤマカシ。ワルヨノのチームが、
狩って。狩って。狩りまくりるらしいわ。
そしたら……
レツブン大帝国人は、少数民族を搾取する事を躊躇しはるやろうな。
せやけど……
レツブン大帝国は、少数民族の技術を搾取する事で成り立ってはった。
せやから、
レツブン大帝国の経済は大打撃を受けて、今の大国を維持しはる事は出来ひん。
せやったら……どうすれば良え?
少し前のワルウン王国のような、
建前上は、お飾りの王族が治めはる、小国家の連合体のような国になりはるんが現実的な解決策や。
でっ。トティアマ達は、
その現実的な着地点に、最短ルートで導きはり、
その王族のポジションに座りはるつもりらしいわ。
トティアマと今の秩序の破壊者とは、何の関係もあらへんらしいけど……
秩序の破壊者のメンバーからは、
秩序の破壊者の産みの親とか……あのお方とか言って、崇められてはる存在や。
秩序の破壊者の上層部が、トティアマを、どう思ってはるかは別として……
トティアマが、国盗りの真最中のレツブン大帝国に、
秩序の破壊者が、茶々を入るような事は、流石にしやんと思う。
でっ。クモヒトさんのチームは、その隙をつきはって、
13番目の秘密の村の高次元の施設を守る、秩序の破壊者の部隊を、一気に殲滅する。
そんでもって、直ぐに、高次元の施設に潜入しはって、
この世界と、他世界との壁を取っ払う仕事を、完遂しはるつもりらしいわ。』
レサさんの質問に、
ゼロイチ君は、楽しそうな声で返答を返す。
◇◇◇
「ほう。
でっ。儂達の仕事は?」
『不測の事態に備えた、バックアップやね。
リンゴトマド兄さんからの情報では、
クモヒトさんは、
俺と同じ【知識の泉へのアクセス】。ちゅう異能を持ち、【鑑定士】のジョブ補正を受けた、ニビル人の末裔。
嫁のゾンアマさんも、
俺やクモヒトさんと同じく、【知識の泉へのアクセス】。ちゅう異能を持ち、
【賢者】のジョブ補正を受けてはる。
で。2人の部下のフレバリは、
【任意再生】。ちゅう異能を持ち、
【世界を跨ぐ者】ちゅうジョブ補正を受けてはる特異点。
コクミズは【妖術】。ちゅう異能を持つ、
鬼(魑魅魍魎)属の準特異点。
キントビは【五神通】。ちゅう異能を持つ、
天狗(魑魅魍魎)属の準特異点。
そして、サルニーは【超隠蔽】。ちゅう異能を持つ、
河童(魑魅魍魎)の準特異点。
そんでもって、サンモクとマゴタダちゅう名の、
【高次元の施設のセキュリティ キー】が付与されている、
2匹のアラート ジリスが居はるチームなんや。
アケモン君の無敵タイムがなかったら……
武力は、俺達よりも、圧倒的に格上のチームやと思う。
しかも、クモヒトさんと、ゾンアマさんの、【知識の泉へのアクセス】の力は、俺以上、リンゴトマド兄さん以下の凄い方々らしいしな。
せやから、俺達は、出番が無く終わる可能性が高い。
せやけど……皆、文句は無いやろ?』
ゼロイチ君の嬉しそうな声が、インカムから聞こえてくる。
◇◇◇
「悪目立ちせずに終わる。最高の結末だね。」
『言えてる。
これが、物語で……わたしが読者ならば、ぶちギレるとこだろうけど……
現実の世界では、目立ち過ぎるのは考え物だもんね……
特に……この騒動が終わった後、
秩序の破壊者の構成員の中にも、
寸法臣一族の本家の者のように、所在不明の者が出てくる筈。
そんな連中の逆恨みの対象には、成りたくないわ。』
僕の呟きに、レサさんが賛成してくれる。
「大手柄と引き換えに、逆恨みの対象とか……
割に合わなさすぎる。
やっぱり、平和が一番よね……
その為には……目立ち過ぎない事よね。」
嫁がレサさんの意見に賛成している。
「でっ。儂達は、
このまま……名無しの村に向かうのか?」
『そうしたんいは、やまやまなんやけど……
この先にある、森を流れる大河を北上して、
レツブン大帝国に潜入する事になったんや。』
ヴォルの質問に、ゼロイチ君が苦笑いしながら答える。
『大河を北上?
にゃら、馬車が使えるにゃか?』
ニャレスの嬉しそうな声が、インカムから聞こえてくる。
『おう。使えるで。
暫くは、アーティフィシャル シー フォースに、馬車を水上で曳かせる船旅になるな。』
ゼロイチ君の嬉しそうな声がインカムから聞こえてくる。
『やったにゃ。
これで……雨に濡れずにすむにゃ。』
「馬車の旅の再開ね!
これで……虫に怯えなくてすむ。」
ゼロイチ君の返答を聞いた、ニャレスと嫁のテンションが上がる。
「現金な奴達じゃのう……
じゃが……
儂達とクモヒトさんのチームの2方面作戦ではなく、
儂達を敢えて、バック アップにすると言う事は……
それだけ、厳しい状況とも言えるのじゃろ?
何故、ニビル人のクモヒトさんと言う者が、儂達のバックアップでは無く、
儂達の方がバックアップなのじゃ?」
ヴォルが、興味津々な声で、ゼロイチ君に質問をする。
◇◇◇
『それな。
俺も気になって、リンゴトマド兄さんに質問したんや。
そしたら、ガイア(地球の自我)に嫌われてはる、ニビル人は……
たとえ、この星(地球)で生まれ育っても、
ガイア(地球の自我)は、この星の生き物として、認めてくれはらへんらしいんや。
せやけど……
この騒動で大活躍をすれば?
もしかしたら、ガイア(地球の自我)が、ニビル人を見直してくれはるかもしやん。
そんな、淡い期待を抱いてはるらしいんや。
因みに、これは、公にはされてはらへんのやけど……
リンゴトマド兄さん、曰く、三古道一族の始祖は、
過去、この星(地球)で、大きな騒動があった時に、
ガイア(地球の自我)の意向に沿うような行動をしはった事を評価され、
個別に、この星(地球)の生き物として認定されはったニビル人の末裔らしいんや。
せやから、リンゴトマド兄さんの予想では、
クモヒトさんや、トティアマが、この星(地球)の生き物として、ガイア(地球の自我)に認められる事はあっても……
ガイア(地球の自我)が、他のニビル人の末裔を、
この星(地球)の生き物として、認めはらへん。って思ってはるみたいやね。』
ゼロイチ君が、ヒソヒソ声で、ヴォルの質問に答える。
「ねぇ……それ……大丈夫なの?
クモヒトさんや、トティアマが……
後で、話が違う!とぶちギレて……なんて事にはならない?」
嫁の心配そうな声が、背中の後ろから聞こえてくる。
『大丈夫やと思うで。
一応、リンゴトマド兄さんや、親父(土狛シエジ)が、その可能性を伝えてはるらしいわ。
その上で、クモヒトさんは、敢えて、矢面に立ってくれはったらしいわ。
親父(土狛シエジ)が言うには……
秩序の破壊者は、ニビル人が仕切ってはる組織や!ちゅう理由だけで、
ガイア(地球の自我)が、
全てのニビル人が、この星(地球)から、退去せよ!なんて暴論でも言わへん限り……
クモヒトさんや、トティアマが、
第二の秩序の破壊者を率いて、悪さをしやんやろ。って踏んではる。
そんでもって、親父(土狛シエジ)が言うには……
流石に、ガイア(地球の自我)も、そこまでバカな考えは起こさせへん。って踏んではるみたいやわ。』
嫁の呟きに、ゼロイチ君が、大笑いしながら答えてくれる。
「とは言え……その可能性も0ではない。
だから……
僕達の本当の実力を、トティアマやクモヒトさん達に見せたくない。
それも、僕達がバックアップにされた理由の一つなのだろうね。」
『そうかもな。
てか……せやったら……もう一波乱……あるかもな……』
僕の意見を聞いた、ゼロイチ君が、
タメ息をつきながら、返答を返してくる。
『そこは……ガイア(地球の自我)を信じてあげるとこでしょ。』
レサさんが苦笑いしながら、
皆の願望を込めた、ツッコミを入れて来る。
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