情報提供と女子達の共同戦線
「取り敢えず、事情は分かった。
それと……貴重な情報を有り難う。」
レサさんが、淡々とした口調で返答を返してはいるが……
顔が、少しだけニヤケている。
因縁の深かったとは言え……
いざ、ニギリステが死んだと聞くと、少しだけ寂しく思ってしまった自分がいた。
キュドンって奴と、寸法臣一族の関係は……正直、良く分からないが、どうやら、キュドンって方は……
トバチリちゃん達と僕達の、
共通の敵になる可能性が高いようだ。
「カベショウ、コロチンだけでなく……親父達にも、この情報を共有しやんといけんな。
今回の富士樹海のダンジョンの調査団は、
アケモン君とセプモちゃんとのパイプも含めて、
俺が、実力で、もぎ取ったもんや。
ダンジョン管理局、自体は、
清貧を謳う、土狛一族よりも……
清濁併せ持つ、寸法臣一族の方が、好きみたいやしな。」
ゼロイチ君が、真剣な顔をしながら、僕を見る。
「成る程。
てっ事は……ゼロイチ君は……
土狛一族の中の異端児って事?」
「せやで。
せやから……アケモン君をリスペクトして、
仲良うさせて貰ってるんや。」
「それは……褒め言葉?」
「アケモン君の、俺への発言と同じ気持ちやと思うで。」
「ブフ。」×2
ゼロイチ君の発言を聞いた僕の苦笑いに、
ゼロイチ君が釣られて笑う。
◇◇◇
「レサさん。テショミさんって人からの連絡が……
相当、嬉しかったみたいよ。」
嫁が、ヒソヒソ声で、
僕とゼロイチ君に、情報を共有してくれる。
「う・る・さ・い。
セプモちゃんは、後方確認に専念する。」
「ラジャー。」
レサさんに睨まれた嫁が……
敬礼のポーズを取った後、ヴォルの横に移動した。
レサさんと、テショミさんの通信は、
インカムを通して、皆に共有されている。
また、僕達の乗る馬車を牽く、2台?2頭?のアーティフィシャル シー フォースは、クイメガ君が御者台で操ってくれている。
「初めましてや無かったら……ゴメン。
ゼロイチと言います。
テショミさんと、ハケオさんの、ご家族の情報を貰えれば……
親父に事情を話して、土狛一族が、皆様のご家族を守らせて頂きますが……どうやろか?」
『ハケオです。
俺は、その……今はまだ、天涯孤独の身ですが……
後で、住所と銀行口座を教えますので、
元の世界に有る、俺の財産を守って頂ければ有り難いです。』
「成る程。天涯孤独の身ならではの悩みもあるんやな。
分かった。テショミさんの通信機器に、俺のアドレスを放り込んどく。
せやから、それを転送して貰って、
俺のメールに情報を送ってくれたら、親父の部下に管理させとくわ。」
『お気遣い、有り難うございます。』
ハケオさんの嬉しそうな声が、
通信機器から聞こえてくる。
◇◇◇
『アタシは……
ラレサギ一族を守って頂きたいです。
アタシと、ラレサギ一族の長である、アタシの父には、
ラレサギ一族の借金をチャラにする!って言う内容をメールで頂いてますが……その……』
「寸法臣一族が信用ならんって言う話やろ。
差し支えなければ、
ラレサギ一族の借金をチャラにする!ちゅう内容のメールを、転送して貰えたら有難い。」
『ですが……その……』
「心配しやんで良え。状況が状況や。
例え、あんたが、土狛一族や……
俺や、レサ。アケモン君や、セプモちゃんの悪口が書いてはったとしても……
それを見て、約束を反故にしやんし、
親父にも、反故にさせんって、約束するわ。」
『有り難うございます。ですが……』
「心配しやんで良え。
親父は、アケモン君の異能の本当の凄さを知ってはる。
せやから……
もし、心配なんやったら、俺よりも……
セプモちゃんに媚を売るべきや。
何てったって、
基本、やる気の無いアケモン君が、
雑談と遊びと、寝食以外で、自主的に動く事はない。
それ以外で動くのは……
セプモちゃんが絡む案件か、
セプモちゃんが動きはる!って決めた案件だけやからな。
実際、コロチンも、今回の仕事をアケモン君に依頼するに当たって、気を使いはったんは……
アケモン君やのうて、セプモちゃん。
そう、言ってはったしな。」
ゼロイチ君が、テショミさんに、
大笑いしながら、僕の取説を話している。
『分かりました。
ゼロイチさん。セプモさん。宜しくお願いします。』
テショミさんの真剣な声が、
通信機器から聞こえてくる。
「でっ、わたしは……何をすれば良いの?」
嫁が、困った顔をしながら、
ゼロイチ君に質問をする。
「土狛一族が、レサの親友のテショミさんの実家のラレサギ一族の後ろ楯に成らない場合……
アケモン君が、自宅警備員に成る事を許可する。
そう言ってくれはったら……
土狛一族は、親父の命令で、死に物狂いで、
ラレサギ一族の後ろ楯になってくれはるわ。」
ゼロイチ君が、
大笑いしながら、嫁の質問に答えてくれる。
◇◇◇
「ブフ。
まぁ……パパが……
本当に自宅警備員になるのは嫌だけど……
テショミさんは、レサさんの親友みたいだし。
一肌脱いであげましょう。」
嫁が、得意気な顔で、ゼロイチ君とレサさんを見る。
「有り難う。」
トバチリちゃん達が馬車に乗り込んでから、
ポーカーフェイスを崩さなかったレサさんが、
満面の笑みを浮かべながら、嫁に握手を求めている。
「何だろう……夢が……どんどんと、遠くなっていく。」
「アケモン君。仕事には苦労がつきものや。
せやから、
その苦労を忘れる為に、趣味や夢が必要なんや。
せやけど……
趣味や夢と、仕事の内容が同じやったら?
リフレッシュが出来へんやん。
せやから、悪い事は言わん。
趣味や夢と、仕事の内容は違う方が良え。
俺は……本気で、そう思ってる。」
ゼロイチ君が、真剣な顔で、熱く語る。
「成る程。でっ。ゼロイチ君の夢は?」
「廃ゲーマー。」
ゼロイチ君が、得意気な顔をしながら、
僕の質問に答えてくれる。
「アタシが……セプモちゃんに目をかける理由……
テショミも、理解する事が出来た?」
『良え。貴女達は、人生の同志。
そう言う事でしょ?』
レサさんの質問に、
テショミさんが、真剣な声で答える。
「えぇ。その通り。
そして、願わくば……
貴女だけでも、そう言う苦労をしない人を見つけて欲しい。」
『本当に?妬まない?』
テショミさんが、レサさんの願いを聞いて、
不安そうな声で、質問をする。
「大丈夫。その愚痴を言い合える相手が……
直ぐ側に居る。」
「姉さん。一生、着いて行きます。」
レサさんの力強い宣言に、
嫁が真剣な顔で答える。
『何故だろう……
不幸自慢の筈なのに……何故か……楽しそう。』
テショミさんが、
不思議そうな声で呟く。
「旦那を働く気にさせるのも、内助の功。
そんでもって……
日々、旦那のやる気スイッチを探し出す、宝探しゲーム。
責任重大だし……とても面倒臭い仕事であるけれど……
それと同じぐらい、
やりがいのある仕事でもあるのよ。」
嫁が、得意気な顔で、
テショミさんに、熱い気持ちを語る。
『セプモちゃん。いえ……セプモさん。
師匠と呼ばせて貰っても良いかしら?』
「若輩者ですが……わたしなどで良かったら。」
『セプモ師匠。これからも、宜しくお願いします。』
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
嫁が得意気な顔で、
テショミさんに返答を返す。
『日がな1日……金や納期を気にせずに機械を弄る。
そう言う夢を……捨てる覚悟を持つべきかぁ……』
ハケオさんが、ボソッと呟く。
『良い心掛けね。
初心を忘れずにね。』
そんなハケオさんに、
テショミさんが、嬉しそうに返答を返す。
「テショミ。貴女に嫉妬する事は無さそうね。
そんな貴女に……
ようこそ。この言葉を送るわ。」
レサさんが、
ニヤニヤしながら、会話に加わる。
『みたいね。
レサ先輩。ご指導の程、宜しくお願いします。』
「素直で宜しい。」
レサさんが、満面の笑みを浮かべながら、
テショミさんに返答を返している。
◇◇◇
「あの……その……
私も、その……お姉様達と共闘させて頂きたいのですが……」
「共闘?」
モジモジしながら話す、トバチリちゃんに、
嫁が、不思議そうな顔で質問をする。
「その……カルオモ王国の陛下が仰られるには、キンノウは、
武威を示す公務以外は、常にサボるらしいのです。
私がキンノウと正式に婚姻すれば、
お姉様達と、同じ悩みを抱える同志となります。
ですから、その……少し、気が早いのですが……
私も、皆様と共闘させて頂きたいのです。」
トバチリちゃんが、モジモジしながら、
嫁の質問に答える。
「わたしは、歓迎するわ。」
「アタシも。」『アタシも。』
嫁達が、トバチリちゃんの申し出を快く引き受ける。
「ところで……
テショミお姉様。行く当てはあるのですか?」
『そこよね……
【空の目のナビ】を持っているから、
地理的な事は分かるんだけど……
何処が、安全な国なのかとか……
正直、サッパリ分からないのよね……
取り敢えず、トバチリちゃんには、悪いけどさぁ……
キュドンって奴が仕切ってる、
ワルウン王国以外の国に行ことしか考えてないわ。』
テショミさんが、
苦笑いしながら、トバチリちゃんの質問に答える。
「じゃあ……
カルオモ王国のロテク辺境伯領に来て貰えませんか?
私達も、そこへ向かってる途中ですし……
ロテク辺境伯とは、私も知らぬ仲じゃないですので、口添えをします。
ロテク辺境伯領は、
ワルウン王国との国境沿いになる為、長居したくないかもですが……
優秀な【修復師】のジョブ補正を受けてる者を、欲っされてるので、悪いようにはされない筈です。
それに、ロテク辺境伯領の領民は、
何時も、元気いっぱいです。
なので、
ロテク辺境伯の人となりも問題ないかと思います。
ですから…その……
テショミお姉様と、ハケオさんが、一旦、身を寄せるには、
最適な場所だと思いますよ。」
トバチリちゃんが、
テショミさんと!ハケオさんに、
ロテク辺境伯領で、僕達と合流すべきだと熱弁する。
『有り難う。ロテク辺境伯領に向かわせて貰うね。』
テショミさんの弾んだ声が、通信機器から聞こえてくる。
「待ってわ。」・「会えるのを楽しみにしてます。」
レサさんと、嫁も、
テショミさんと、ハケオさんとの合流に、
ノリノリのようだ。
「稼ぐのに適した奴が……
男女に関係なく働く。
そんでもって、男女に関わらず、
稼ぐ能力に優れた者が、称賛されて上に立つ。
この、男女ともに幸せになれるマナの使わんでも良え魔法。
男女平等の理論と言う魔法は……
俺達の元居た世界の、俺達の国にも……
カルオモ王国も、そんでもって、ワルウン王国も……
上手く掛かってはらへんみたいやな。」
「上手く……じゃなく……
全く、掛かって無いんじゃない?」
「言われてみれば、その通りやわ。」
僕と、ゼロイチ君は、
ヒソヒソ声で、愚痴る。
「そこ。聞こえてるよ。
良い事、言ってるつもりかもだけど……
廃ゲーマー志望と、自宅警備員志望が、
男女平等や、働き方改革。男女同権。その他、何を語っても……
屁理屈。それ以外の感情が湧かないわ。」
そんな僕と、ゼロイチ君を、
レサさんが、ジト目で見ている。
「本当……情けない。」
嫁は、そんな僕達のやり取りを見ながら、
タメ息をついていた。
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