第88話 Angel SOS(クジャク編)③
来てくれてありがとぉ~♪
ゆっくりしていってね♪
アドリエルが召喚される1日前、8月の夏。場所は猫の国。
ここは【猫の国】の指令本部となっているテントの中です。
そして今は真夜中ですからね。クジャクもチヅルちゃんも、おねんねタイムです・です♪
うっわぁ~ 見て下さいよ。二人仲良く包まって静かに寝息を立ていますよ。
ほんと、仲良しこよしで微笑ましいですね。
あっ、チヅルちゃんが嬉しそうに微笑だ。きゃわいぃ~♪
でも~ 堕天使達が、すぐそばまで来ているんですよね?
これって相当まずい状況ですよね?
と言うか・・・結構・・・大ピンチ?
あわあわ、ど・ど・どうしよう!?
うん!? 熟睡しているはずのクジャクがピクピクと眉間を寄せ出しましたよ?
何かに反応しているようですね?
あらあら、そうこうしていたら起きちゃった。
クジャク:(誰かが近づいて来る・・・??)
いち早く堕天使達の接近に気付くクジャク。この能力て何?
だって、ちょっと凄いですよね? これ? 超能力て感じ?
では説明しよう!
実は、この能力も【天使の加護】によるものです。
そうなんです。この能力はクジャクのマルチタスクによって処理されています。
複数の作業を同時並行処理できるということですが、クジャクは天使達により複数の人格を持つ者として調整されています。
まあ、人格といっても自我を持たない論理回路のようなものですけどね。
勿論、一個人としてのクジャクの感情や思いは一つです。あくまでも並行処理専用といったところですかね。
ですから、今のようにクジャクが寝ていたとしても、複数ある自我を持たない人格の内の一つが絶えず働いている、ということになります。
このような理由でクジャクは、魔法の同時展開、二刀流での左右独立した同時攻撃、そして睡眠中の護衛プログラムの起動などが実行可能となっています。
なぜクジャクにこれ程までのスペックが与えられたのでしょうか?
ひとえに堕天使との戦闘を考慮に入れてのことです。
そう、天使ミシャエルが危惧していた通りの事が実現してしまったのです。
補足説明です。
二年程前になりますが、チヅルちゃんが自力で戦時プログラムを起動させた頃の出来事です。
※注記:詳細は『第48話 チヅルちゃんのとある一日④』をご参照ください。
クジャクはチヅルちゃんに【欠けた心の欠片を探している】と語ったことがあります。
これは自我を持たない別の人格の存在を、クジャク自身が薄々ながらも気付いていたということです。
実をいうと幼少の頃から悩んでいたのですが、親に上手く話せなかったのでしょう。結局、チヅルちゃんにのみ話したにとどまります。
子供って注意して見ていないと結構こういうことってあるんですよね。
クジャクの場合は疾患ではありませんでしたので、健康問題へとは発展しませんでしたが、親御さんとしてはちょっと認識不足でしたね。
以上。説明お終い!
なにはともあれ・・・敵襲だぁーー!!
どおする、クジャク!!??
クジャク:「チヅル起きて起きて!!」
スヤスヤと気持ち良さそうに寝ているチヅルちゃんを激しく揺するクジャク。敵が来たんだってばぁ!
チヅル:「ふぉあぁ・・・あ・に・う・えぇ・・・??」
クジャク:「いいかいチヅル、よく聞くんだよ。敵がすぐ近くまで来ているようなんだ。だから大至急戦闘態勢を整えるんだよ。いいね。」
チヅル:「はっはい・・・??」
クジャクは、チヅルちゃんに鉄兜を『はい』と手渡すと、色々と魔法を展開し始めます。
まずはじめに敵の規模や位置を探らなければなりませんよね。
クジャクの探知魔法は近接戦向けにカスタムメイドされています。半径20m以内なら昆虫ですら容易に判別できる精度です。森林地帯でのゲリラ戦向けですね。
このように、あらゆる手段を用いて敵の動向を注意深く探っていくクジャク。緊迫した空気が張り詰めます。
そんな様子を寝ぼけまなこで見ているチヅルちゃんは・・・ね~ね~ 大変なんだってばぁ!
チヅル:「えっえぇー! 何々何いぃー!」
はっと覚醒するチヅルちゃん。慌てて鉄兜を被り、あごひもを締め、刀を手に取ります。
ちなみに甲冑は装着したままの睡眠です。
だってぇ~ 戦時中ですからね。ほんと大変です。
そうなんです。5日前に【イズの都】が廃墟となったあの日から、戦艦アイオワは同じ場所に停泊し猫ちゃん達を威嚇し続けています。
それとですね、連日連夜航空機から降伏を促す放送が繰り返されてもいます。
ほんと、猫ちゃん達にしてみればたまったものではありません。
そんな中での今回の襲撃です。緊張は高まるばかりです。
クジャク:「伏せて! 来る!」
クジャクがそう言うと次の瞬間、テントが灼熱の炎で吹き飛んだ。
強力な爆裂魔法が撃ち込まれたようです。
火は森林の木々にも燃え広がり辺り一面火の海と化します。
真夜中、突如として起きた森林火災。その様子を遠くから見る猫武者達にも緊張が走ります。
※※※
【猫の国】の指令本部が設営されている森へと続く山道に居るのは?
そう堕天使達です。
強力な爆裂魔法の着弾を確認すると、ザミエルが兵士に突撃命令を下します。
ザミエル:「いいかぁ! 2分もせずに敵の援軍が到着する。速やかにターゲットの死亡の確認しろ。突撃!」
ザミエルの突撃命令を受け、たった10名の人間の兵士達が駆け出します。
これって、メチャぶり過ぎません?
はい♪ モチのロンであります。
敵地のど真ん中、まさに地獄への突撃です。
しかも、目指すのは、クジャク達がいた指令本部だった場所にある燃え盛る炎だし。
今や森林火災へと発展した、その場所は近づくだけでも危険なんだてっば。トホホォ~イ♪
レリエル:「まさかこの距離(約300m)で気付かれるとは思わなかったね」
ザミエル:「ああ、まったくだぜ! おどかしやがって! なんなんだあの勇者(天使の加護を持つ者)は、化け物か・・・!!」
レリエル:「想定外ではあったけど無事先制攻撃は命中したんだからさ、深手は負わせているはずだよ。後は止めを刺すだけだよ」
ザミエル:「だといいんだけどよ。嫌な予感がするぜ。まったくよ、ままならねえな! ちくしょぉ!」
あらあら、ぼやいてる・ぼやいてる。
でもこれって考え様によっては、それだけクジャクが凄いてことですよね? エッヘン!
そして堕天使達の目の前には、つい先ほどまで真っ暗闇だった森が、今や燃え盛る炎により、こうこうと照らされています。
炎に近づくにつれ、熱風により焼からそうなほどの熱さです。アチアチと♪
イアン:「あぁ~あ、皆さん(人間達)、相当興奮しちゃってるな、こりゃ。
そんなに死に急ぐ必要なんてないだろうに。
こうゆう時はさ、臆病なぐらいが丁度いいんだよ・・・丁度ね。
はぁ~ それにしても、まずい作戦に参加しちまったまんだぜ。まったくよ。
こりゃあぁ~ マジで死ぬかもな・・・??
ほんと、報われない人生だったな・・・ほんと、ほんとによぉ・・・」
あ~ あの青年兵ですね。イアンですよイアン。覚えてくれているかな?
それにしても、相当いじけているようですね。
そりゃそうですよね?
だって、生還できる見込みなんて何処にもないのだから。
後は剣に倒れるだけです。
それもきっと数分後の事でしょう。
だからこそ彼は思うのです。
堕天使が支配する【人の国】に生まれ、偏見と搾取を受けながら今日の今日まで生きてきました。確かに幸福とは程遠い人生でしたよね。妻も恋人もなく、家族は両親のみ、親友といえる者はおりますが、その内の一人とは既に戦地で死別しております。ほんと泣きたくなるような人生です。
思いをはせながら走るイアン。直ぐ後ろには怖い怖い堕天使達がいますからね、逃げたくても逃げられません。
そうこうしていると、山火事の熱風により、もうこれ以上は近づけないといったころまでやってきました。
その時です。突然炎の中から飛び出して来たのは・・・
後数話で第2章も完結です。下書きはあります。失速しないよう頑張りたいです。応援よろしく!!