第51話 白猫の花嫁③
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時はアドリエルが召喚される1年前の春。場所は猫の国。クジャク15歳の物語。
あの水平線が見える見晴らしの良い部屋で、一人ぼんやりHぃ妄想にふけっていたクジャクのもとに来客のようですが、いいたい誰なんでしょうかねぇぇぇ?
いち早く状況を察知したクジャクが待ち構えていると、その人物が表れた。
クジャク:「あぁー母上でしたか」
その人物は、クジャクのことを溺愛してやまない育ての親であるマイズルであった。
でもその表情は少し硬く、何やらもの言いたげな御様子です。
どうしたのかな?
マイヅル:「また海を見ていたのですか?」
クジャク:「はい、海を見ていると落ち着くんです。特に今日みたいな日は・・・」
マイヅル:「ここからの景色はほんとうに綺麗ね」
マイヅルは、当たり障りのない言葉を返すとクジャクの直ぐ隣に腰を下ろします。
そして、どちらからともなく会話が始まり、和やかな雰囲気となってい行くのです。
でも、そんなやさき・・・。
マイヅル:「ねぇークジャク・・・?
聞いて欲しい話があるんだけど。いいかしら・・・?」
クジャク:「改まってどうされたのですか?」
マイヅル:「えぇー・・・そのう・・・クジャクにとってはとても辛い話しよ。
ごめんなさいね。
怒らないで聞いて欲しいの。
お願いよ・・・!」
そしてマイヅルはポツリ・ポツリと語り出すのです。
クジャクとて薄々とは分かっています。
そう話しとはチヅルちゃんのことです。
以下がマイヅルが話した要約となります。
一つ。
チヅルちゃんは【猫の国】の当主の長女である。
しかも貴重な白猫の姫君、政略結婚は避けられない。
実を言うと、チヅルちゃんとツバキちゃんを比べると、同じ白猫の姫君であったとしてもチヅルちゃんの方がツバキちゃんより数段も格が上がります。
家柄、才能、容姿どれをとってもチヅルちゃんに匹敵する姫君は【猫の国】にはいません。
二つ。
チヅルちゃんは、日々の医療現場での働きが認められ治癒士としての評価がそれなりに高いです。
安定した国益のため治癒士の需要は低くありません。
故に嫁ぎ先は引く手あまたです。
当然のことですが、巫女扱いの白猫の姫君が治癒士の能力も兼ね備えていれば、その人気は爆発的に上がります。
三つ。
チヅルちゃんは美人である。
チヅルちゃんは、12歳にして既に数多のお見合い希望者が名乗りを上げています。
猫種一般は真ん丸丸顔に真ん丸お目目の可愛らしい和猫顔です。
よって美人系は希少価値が高く大人気です。
しかもチヅルちゃんは白猫なので申し分ありません。
もうお分かりでしょうか?
マイヅルは、クジャクとチヅルちゃんが兄妹だからという理由で結婚できないとは一言も言っていません。
そもそも獣人達にとって近親婚は珍しいことではありません。
御覧の通り、それなりの理由があって反対していたんですよ。
要するにお気楽モードの猫ちゃん達ではあっても、さすがに当主のそれも長女の結婚相手となりますと、周りの武家が黙ってはいないということですね。
どれ程の時間が過ぎたのでしょうか?
涙ながらに語るマイヅルはおそらく小一時間は話していたでしょう。
その話を聞くクジャクの悲しみはいかほどだったでしょうか?
その証拠に今もなお二人共泣きじゃくております。
もうどうしようもないくらい心が沈んでしまったのです。
マイヅル:「クジャク・・・あぁークジャクゥー・・・!
ごめんね、ごめんね、ごめんね、辛いよね・・・?
ほんとうに辛いよね・・・?」
クジャクがチヅルちゃんにどれほど熱を上げているかなど。
マイヅルには手に取るように分かっています。
ずっと一緒に暮らして来たのですから。
ましてや愛情を注いで育てて来た我が子であればなおさらです。
クジャクの方も母マイヅルの言わんとしていることは理解できています。
でも・・・そうでもね、頭で理解できていても心がついていかないことてありますよね?
特に若い時の恋愛がそうではないでしょうか?
だからでしょうか?
クジャクは虚ろなまなざしでうなだれるのです。
もうぐったりとしてしまい。もぬけの殻です。
そんなクジャクのことを必死になって抱き締めるマイヅル。
クジャクの心が二つに割かれる痛みはマイヅルにとって死と同義です。
クジャクを抱き締めながらただただ泣きじゃくるのでした。
しばらく抱き締めあいながら涙を流す親子。
先に口を開いたのはクジャクの方でした。
大好きな母が泣く痛々しい姿に心を痛めたのです。
クジャクは心優しい子なのですから。
そんなクジャクはありったけの勇気を振り絞って思いを言葉にします。
クジャク:「母上・・・僕・・・チヅルのこと諦めます・・・」
その言葉は直ぐ消えて無くなるかの様な弱々しいものでした。
それでも母マイヅルの耳元には確かに届いたのです。
愛する我が子の決意が。
こうして、クジャクとチヅルちゃんの人生が大きく・・・いいえ、崩壊へと動き出したのです。
『Angel SOS』をお読み頂きありがとうございました。
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