第4話 えっ!!この人が・・・主人公らしいですよ④
来てくれてありがとぉ~♪
ゆっくりしていってね♪
【お約束の三人娘】達が女子更衣室で恋バナに花を咲かせている頃、義彦は下り電車に揺られていた。
車窓からはのどかな景色が見え始め都会の喧騒はもうどこにもありません。
今、義彦の目に映るのは、静かに揺れる車両の心地良さと、車窓から車内に差し込む夕日の温かなオレンジ色の世界です。
ですからとても感傷的で郷愁を禁じえません。
どこまでも幻想的なその世界はとても居心地良く。ゆっくりと時間を紡いでゆきます。
義彦はこの時間が大好きです。
一時間ほど掛かる通勤時間、彼はよくこの時間を使っては若かりし頃を思い出し懐かしむのです。
義彦:(ねぇ~聖子・・・?)
愛する妻への思いと、幻想的なオレンジ色の世界が義彦の心を揺さぶります。
※※※
--- 丹羽義彦の回想 ---
※注記:義彦の一人称でお送りします。
僕はなかなかの苦労人だと自負しております。
39年前、僕が22歳の時、僕は大学卒業後直ぐ幼馴染の聖子と結婚しました。
物心ついた頃から仲睦まじい僕達はずうっと一緒でした。
地元では幼稚園、小学校、中学校と凸凹夫婦とからかわれ、そろはそれは有名なおしどり夫婦でした。
そんな僕達の結婚生活は二人の娘にも恵まれ幸せそのものでした。
24年前、僕が37歳の時、不幸が降りかかりました。妻聖子の病死です。
長女加代子14歳、次女久美子11歳の時でした。
当然母親を亡くした娘達は意気消沈し、深い悲しみが僕達一家を奈落の底へと突き落とします。
きっとこの時から僕の人生に暗雲が立ち込めて来たのでしょう。
22年前、僕が39歳の時、次女の久美子が中学生になると、その美貌から不良生徒に目を付けられました。
学校で恐ろしい目に遭ったのでしょう。あの子は可哀想なことに家へとひきこもってしまいました。
できるだけ娘に寄り添い励ましましたが、次第に部屋から出られなくらり、社会復帰することはありませんでした。
17年前、僕が44歳、次女久美子18歳の時、可哀想なあの子が失踪しました。
部屋で争った形跡は無く、所持品もそのまま、履物まで玄関に有り、まさに神隠しでした。
娘のことが心配で心配で眠れぬ夜を幾日も過ごしました。
不可解な事に僕の学生時代の後輩も失踪しています。ですから僕にはどうしてもこの二つの事件が重なってしまうのです。
実は今でも夜な夜な夢の中で、彼女が『先輩』と僕を呼ぶ声が聞こえてるんですよ。少し薄気味悪い話ですよね。
そんな中でも長女の加代子は明るく振舞ってくれました。
僕を支えてくれた娘に感謝の気持ちで一杯です。
13年前、僕が48歳、長女加代子25歳の時、娘は嫁いで行きました。
正直寂しい気持ちも有りました。でも親として娘を無事嫁がせたとの自負も有り、とても満足でした。
それに少しづつでしたが一人暮らしに慣れて行くんだなと、漠然とではありますが考えられるようになったのでしょう。時間が全てを優しく溶かしてくれる・・・きっと。そう信じて一人生きて行くことにしました。
11年前、僕が50歳、長女加代子27歳の時、孫の亜里沙を授かりました。
初孫を抱いた時、希望に満ちた将来への予感に笑みがこぼれました。充実した幸福を感じたのです。
しかし娘は夫からの暴力により、あえなく離婚、孫と共に実家へと帰って来ました。
今は僕、長女、孫娘の三人で暮らしています。
本当に色々なことがありました。僕は愛する家族を守れるでしょうか?
丹羽義彦の回想 終わり
『Angel SOS』をお読み頂きありがとうございました。
今後立てたフラグの回収に努めますので、どうぞ楽しみにされてくださいね。
ではここで簡単な次回の予告を。
何と!
ホーム・コメディーに挑戦しちゃいます。
義彦宅のドタバタ劇をどうぞお楽しみください。