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Angel SOS  作者: カツオ
第2章 猫の国
21/91

第21話 クジャクの母①

ついに第2章が始まりました。

はじめにちょっとした注意点を申し上げます。

この物語、オムニバス形式を取っておりますので登場人物が章ごとに変わります。

どうか新キャラの方も御ひいき頂ければ幸いです。

 時はアドリエルが召喚される16年前の春。場所は猫の国。クジャク誕生の物語。



--- イズの都のマイヅル 視点 ---


 

 お初にお目にかかります。私、クジャクの母マイヅルでございます。どうぞよしなに。

 それでは早速では御座いますが【猫の国】の物語をお話ししましょう。我が子クジャクの物語でございます。

 我が子クジャクの生い立ちを語る上で、あの子の出生についてお話しするのは避けられませぬ。涙を飲んでお話しましょう。

 そうあれは、【猫の国】の国母であられる姉上オリヅルが産み月に入ったころでがざいます。

 城下では、それはそれはお世継の誕生を心待ちにする者達で賑わっておりました。




※※※




 ※注記:場所が変わり城下町の様子。ライブ。『第19話 トラベラーズガイド④』をご参照ください。


 妃和:「ふっうぅー着いたみたいね・・・?」


 深雪:「あっ何か出て来た。このウィンドて操作パネルよね。どれどれ・・・?

 指示書的な項目は・・・と・・・あぁ~これこれ・・・」


 ミカン:「うっそぉーーッ!!本当に【猫の国】だぁ~きゃわゆぅ~い♪」


 妃和:「あらやだ、あなた達、猫ちゃんになってるわよ。ほら見て御覧なさいよ」


 ミカン:「あぁ~ほんとだぁ~妃和先輩猫耳付いてるッ!!」


 妃和:「そうゆうミカンだってぇーうふふふ♪」


 ミカン:「ふぅ~ん、それにしても、妃和先輩てぇ~猫ちゃんになっても・・・オッパイ!めちゃくちゃ大きいんですね?

 どうしてかなぁ~♪『ツンツン』とぉ~♪」


 妃和:「あぁーもぉーやめなさいよ!

 周りの猫ちゃん達が見てるでしょ?

 ていうか注目されてる?」


 ミカン:「あぁーー本当だぁーーこれて・・・何だか不味くありませんかぁ~・・・ミカン怖いぃ・・・」


 深雪:「ちょっと見てくれる!?ここなんだけど」


 妃和:「ねぇ~ねぇ~深雪・深雪?

 私達、ちょっと目立ってるみたいなんだけど?

 このウィンドのせいじゃないかしら?」


 深雪:「それはないと思うわよ。だって利用方法の項目を閲覧したら、私達にしか視認できないとあったから。

 それよりも、ここを見て・・・ここ・ここ」


 妃和:「どれどれ・・・えっ過去に来てるの!?

 何それ、タイムトラベル?

 時をかける猫??

 バック・トゥ・ザ・フューチャーじゃあるまいし・・・本当なの??」


 深雪:「何はともあれ【猫の国】に来ていることは確かなようね。

 それと、ここ!カウントダウンが始まってるわ。

 ものの数十秒で私達また飛ばされるみたいよ?」


 妃和:「あぁーこれねぇー・・・うぅ~ん、そうね、これは帰還させられるみたいね」


 ミカン:「はぁーー何だかぁミカン達の扱い雑じゃありません!?

 てことは・・・もしかして、今回のミカン達の出番てこれで終わり・・・?

 終わりなの?

 ミカン達てレギュラー出演じゃないの!?

 ちょっと、ありえないんですけどッ!!」


 『プッツン・・・ジィーー』




※※※




 おほほほほ~あらやだ何かの手違いかしら?

 オッホン・・・ゆえに、皆から愛される君主様、国母様、そして誕生を心待ちにされているお世継ぎ様、と民からの人気は絶大でございます。


 そんな折に姉上オリヅルは今日も身重の身を労わっておられます。

 爽やかな春の日差しが差し込むこのお部屋、姉上のお気に入りでございます。

 姉上はここからよく海を眺めながら、大きなお腹を撫でて、我が子を愛でるのでございます。

 

 オリヅル:「うふふふ♪私の赤ちゃん♪私の赤ちゃん♪ママですよぉ~♪」


 それでは姉上を紹介いたしましょう。

 名はオリズル、歳は18、【猫の国】の国母様でございます。

 姉上は代々白猫を多く輩出している、西の花の都とうたわれた【イワタの都】の御出身です。 

 ですから由緒正しい白猫でございます。

 在来【猫の国】にとって白猫はとても大切な存在でございます。

 数が少ない、というだけではございません。

 神の使いとされ尊ばれております。

 さようでございます。姉上は高貴なお方なのです。




 ケンビシ:「オリヅル変わりはないか?

 どれどれ我が子はどうじゃぁ~?」


 オリヅル:「まぁ~あなたったら、うふふふ♪」


 これはこれは、君主様がおいででございます。

 ケンビシ様は【猫の国】の若き君主様であられます。

 そしてケンビシ様も白猫であられ、御年20歳になられます。

 今日も相変わらず姉上の様子を見に来られたのですね。


 あらあら、ご覧くださいまし、ケンビシ様たっら、姉上の大きなお腹を撫でておられます。

 ほんと仲睦まじい夫婦ですこと。なんて微笑ましいことでしょう。


 オリヅル:「あっ!この子お腹を蹴ったわ」


 ケンビシ:「おぉ~そうかそうか、お腹をの~うんうん」


 春のそよ風の様な優しい時間が、二人の間をゆっくりと流れて行くのでございます。


 オリヅル:「早く産まれてきてね♪私の赤ちゃん♪うふふふ♪」


 ケンビシ:「オリヅル似の優しい子がいいのぉ~」


 オリヅル:「私はぁ・・・?

 うふふふ♪あなたとの子ですもの愛おしいわ」


 ケンビシ:「うむ、そうじゃな!わっはっはっはっ!」


 オリヅル:「うふふふ、あぁ~楽しみだわ。

 愛おしいこの子と会える日が・・・ほんと楽しみ。うふふふ♪」


 ケンビシ:「そうじゃな・・・!

 しかしそうなると名を決めておかんとな?

 うっかりしておったわ」


 オリヅル:「それでしたらもう考えてありますわ」


 ケンビシ:「ほうそれはまた手際がよいの?

 それでどんな名を付けたいのじゃ?」


 オリヅル:「はい、男の子ならクジャク。女の子ならチヅルと名付けたいのですが、いかがでしょうか?」


 これにはさすがのケンビシ様も驚かれてしまいます。

 そういうのも、クジャクという名は本来お隣の国である【狐の国】の男性に付ける名前だからです。

 ではどうして姉上はそのような名を我が子に付けたいと思われたのでしょうか?

 これには兄上が関係しております。

 えぇー、お恥ずかしながら姉上は大のファザコンでございます。

 そう、兄上、シシャクの名にあやかったのでございます。

 当然ケンビシ様としては面白くありません。


 ケンビシ:「嫡男が隣国の名ではおかしかろ・・・!?」


 オリヅル:「ダ・メ・・・!で・・・しょうか・・・??」


 すがるようにケンビシ様を見詰める姉上。

 日頃温厚な姉上らしからぬ行動にケンビシ様は戸惑うばかりでございます。

 『えぇーー!!そんなにお兄ちゃんのことが大好きなの??』と心の中で大泣きされるのでございます。

 姉上?いくら箱入り娘だからと言っても天然ボケが過ぎましてよ。


 はい、あるありふれた日常の一幕でございます。




※※※




 そして6日後でございます。

 姉上オリヅルに陣痛が始ったのでございます。

 今しがた破水もされ、陣痛の感覚も大分短くなってまいりました。

 産婆達も姉上の側らに付き添い、出産の時を今か今かと待ちわびるのでございます。


 その時でございます!!

 三人の天使様が姉上のすぐそばに舞い降りて来られたのです。

 ※注記:霊体の天使は、人や獣人には視覚できない形態です。よって今回は見えていません。

 

 ミシャエル:『シャムシェルの計画の時のように上手く行けばよいのですが』


 カシエル、『猫種は牛種ほど丈夫ではありません。細心の注意を払いましょう』


 アリエル:『そろそろ分娩が始まるようです』


 天使様達が見守る中、姉上は初産に臨まれます。


 どうした事でしょう!?

 本来でしたら、お産は順調に進んだことでしょう?

 でも、この度は違うのでございます。

 あっー!なんてことでしょう!?

 姉上が身籠た赤子は【天使の加護】を授かっていたのです!

 

 カシエル:『ミシャエル!?加護を解放し過ぎではないでしょうか!?

 これでは母体に負担が掛かり過ぎます』


 ミシャエル:『えぇ分かっています。

 でも、救世主となる子が必要なのです。

 堕天使達は着々と準備を進めています。手立てが必要なのです!』


 アリエル:『でもこのまま続ければオリヅルの生命力が全て胎児に吸収されてしまいます。

 そうしたらオリヅルは・・・』


 ミシャエル:『分かっています。分かってはいるのです。

 でも、計画を継続しましょう。

 オリヅル、ごめんなさい』


 見るに堪え兼ねませぬ。

 姉上が見る見る衰弱して行かれるのです。

 産婆達は全力で事に当たりますが、状況は一向に改善しません。

 無理もございません。産婆達には天使様が見えないのですから。

 現場に緊張が駆け巡るのでございます。


 ミシャエル:『あぁーーッ!!ダメ持ち堪えられない!!どうすればいいの!!??』


 カシエル:『残念だけれども母体はもう限界です。

 オリヅルにはお気の毒ですが、もうやり遂げるしか方法はないでしょう?』


 アリエル:『そうですね?分娩がこれ以上長引けば胎児にも悪影響が及びます。ご決断を』

 

 ミシャエル:『うぅーーッ!!続けましょう!!』

 

 そして姉上は我が子を抱くことなく息を引き取られたのでございます。

 どうしてこんなことに?

 あぁー可哀想な姉上。天使様なぜですか?なぜこんなことに??


 途方に暮れた産婆の一人が、取り上げた赤子をあやすのでございます。

 この子の誕生だけが唯一の慰めなのですから。


 ミシャエル:『オリヅル、ごめんなさい。私の責任です。

 私にはオリヅルの死に責任があります。

 ですからオリヅル、貴方に換わって【猫の国】の行く末を見守りましょう。

 貴方と貴方の子供達のために』


 カシエル:『ミシャエル、私の姉妹、私も貴方と共に泣きましょう。今は悲しみの時なのですから』


 アリエル:『可哀想なミシャエル、貴方のせいではないわ。

 堕天使がこの地に目を向けさえしなければこんなことにはならなかったのだから』




 この日、皆から敬われていた姉上がお亡くなりになりました。

 余りにも大き過ぎる悲しみが【猫の国】をすっぽりと覆ったのでございます。

 猫達は皆、喪に服し、深い悲しみが何時までも何時までも続くのでございます。


 これが我が子クジャクの出生についてのお話しでございます。 

 では皆様方、今宵はここまでに致しとうござりまする。

読んでくれてありがとぉ~♪

また来てね♪

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