第16話 トラベラーズガイド①
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ゆっくりしていってね♪
義彦が【惑星メルクリウス】へと召喚され1週間が経ちました。
ですから、行方不明となってしまった義彦のことを心配する者達の心境は、とても辛いものとなっていました。
義彦が勤務する会社のオフィスレディである伊藤妃和もまたその一人である。
『ピッ♪ピッ♪ピッ♪ピッ♪ピッ♪ピッ♪』
妃和:「はぁーもう朝・・・か・・・」
部屋に目覚ましい時計の音が鳴り響きます。
もう少し微睡んでいたいんですけど。そんな誘惑を何とか退けてベットから身を起こすのは伊藤妃和その人でした。
どうやら妃和は、クーラーを確りと効かせた部屋で、夏掛け布団にすっぽりと身を包み睡眠を取っていたようですね。
なぜって?
だって、ベットから立ち上がった彼女が、なにげに姿見鏡に目を向けると、そこには日本人離れした実に肉付きの良い裸体の美女が映っているからですよ。
十代の初めから育ちに育ったその胸は、今ではトップバストが余裕で1mの大台を超えています。
ですから妃和は、周囲の視線を日々感じながらの生活を送って来ました。
よって、高ぶった性欲を自宅でこっそりと発散するのが常となっています。
そう妃和はむっつりスケベな裸族です。
そんな彼女の趣味は、勿論・・・いやいや、彼女の名誉のため止めておきましょう。
人とは弱いものなのだから。
ね?妃和・・・。
妃和:(酷い顔、髪もぼさぼさ)
あぁ~これて、義彦の事を思い5日間泣き明かしたからなんですよね。
部屋も少し汚れています。
妃和:「あぁ~あ、昨日も泣き疲れて寝ちゃったんだ・・・私・・・」
妃和は、腫れぼったい目を気にしながら、まだ寝起きでおぼろげな頭を活性化させて行きます。5日前のあの日の事を思い返すために。
そうあの日、義彦が失踪した二日後に刑事さんが事情聴取の為、オフィスを訪れました。
そこで初めて妃和は義彦の失踪を知ることとなります。
そうなんです。実は当初病欠扱いだったんですよね。
ですら一気に社内の不安が爆発します。
妃和:「義彦さん、今どこに居るの?」
事情を何も知らない妃和にとっては、とても辛いですよね。
はい、妃和はあの日、あまりにも大きな衝撃を受けてしまい、卒倒して倒れてしまいました。
無理もありません。妃和にとって義彦のいない日常なんて、決して受け入れられるものではありませんからね。
ですから、その日からご覧の通りの日々を送っている、ということです。
もう今日で三日間会社を休んでいます。
まあ週末を挟んでいるので、かれこれ5日間部屋にこもっていたことになりますね。
妃和:「もう5日かぁー・・・義彦さんに頼まれている仕事が溜まってしまてるわね」
そうなんです。昨夜、出社を決意した妃和は目覚まし時計をかけました。
今日はこれから出社する予定です。
でも~あまり無理はして欲しくないのですけど。生真面目な彼女としてはそうもいっていられないのでしょう。困ったものです。
そして妃和は、身支度を整えると朝食も取らずに家を出ます。
※※※
妃和は出社すると真っ先に女子更衣室へと向かいます。
すると廊下で深雪と出会うのでした。
深雪:「大丈夫?心配したよ」
妃和:「う~ん・・・あのねぇ~・・・(あれっ涙が止まらない)あはははぁ~・・・」
気合と根性で出社したからでしょうか?
それとも、心を許せる友との再会で心が緩んだからでしょうか?
深雪の顔を見たら急に涙が溢れ出します。
もう抑えられません。
深雪:「ヨシヨシ、よく頑張って出て来ました。花丸だぞ・・・と」
妃和:「もうなによ?頭なんか撫でてさ。
えっ、あなた泣いてるの?」
深雪がね、優しく微笑みながら涙を流している。
一緒に泣いてくれている。
あぁー友達って、本当にありがたいですよね。
深雪、ありがとう。
深雪:「妃和だって・・・うんうん、そうね、うふふふ♪
いいから・いいから、ナデナデされてなさい」
妃和:「み・深雪?
もう恥ずかしいんだからねっ」
深雪:「えぇーーいいじゃなぁ~い。ほうら、ヨシヨシ♪ヨシヨシ♪ヨシヨシ♪」
廊下の真ん中で、目に涙を一杯に湛えながら、じゃれ合う二人。
そこに一人また一人と加わって行き、次第に大きな輪となって行きます。
そうなんです。ありがたいことに、妃和には寄り添ってくれる友達がいます。
更衣室から着替えを終え出て来た子や、出勤して来た子達で、いつの間にか大きな寄り合いとなっていました。
皆が妃和と義彦のために泣てくれます。
だから、一頻り泣いたらきっと気持ちが楽になるよね?
ね、妃和?
はい♪妃和は人の優しさに触れ、次第に落ち着きを取り戻して行きますよ。
心が段々と温められて行くのを感じるのです。
よかったね、妃和。
すると、それを見計らった深雪が、ここ数日考えていたことを提案します。
深雪:「ねぇー?今度の週末、常務のお宅に行ってみない?」
妃和:「えっ!ちょっと非常識じゃない?こんな時に?」
深雪:「こんな時だからこそよ。常務を大切に思う者同士、お話ししようよ。ね?」
妃和:「ね?て?あなた??」
深雪:「一人で悩んでいちゃダメ。きっと常務のご家族も心細くされているはずよ。だから・・・ね?」
ということで、例の如く井戸端会議を敢行。深雪の提案通り義彦のお宅へ訪問することとなりました。
そうそう、こうゆう時はね、甘いものを頂きながら、ゆっくりと思い出話に花を咲かせるのがよいのですよ。
深雪、グッジョブです♪
読んでくれてありがとぉ~♪
また来てね♪