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第八話 巡礼の聖女 行け行け巡礼の聖女

お読みいただきありがとうございます!

第八話 巡礼の聖女 行け行け巡礼の聖女


『うう、ムゴい……』

「断りもなく、勝手に体に触れたのだから当然でしょ」


 再び、ひっくり返りぴくぴくしていた白子だが、暫くすると復活した。


『わ、我もお前の……いや、巫女様の守護者になろう』


 修道女、精霊信仰の世界から見れば『巫女』と呼ばれる存在に近いのだろう。それに、『火』の精霊の加護を持つクリスは精霊の巫女と呼んでも差し支えないかもしれない。あるいは、聖女か。


「間に合っています」

『……そこをなんとか……』

「蛙の守護者ね……」

『水の精霊で蛙の姿をとるものもいたな。古い精霊信仰だとありえたな』


 ジルバはフォローしているようだが、所詮蛙は『水』の精霊、『火』の精霊との相性が最悪であると思われる。これが、『火』の精霊であれば諸手を挙げて歓迎するのだが。


 その辺りを問うと、『心配ご無用』などと白子は言い始めた。


『実は、我は今、『闇』の精霊となっております』

『闇?』


 『闇』の精霊とは何を意味するのか、元魔術師であり長生きしているはずのジルバでも知らぬ精霊であるという。


『奴が現れてから、我は対抗する上で力を得ようと努めてまいりました。その結果、魔力を希薄化する、もしくは、周囲に受け渡す事で気配を消し、潜む事が得意になったのです』

「つまり、逃げ回って隠れやすくするために、精霊としての質が変わったと」

『穴に隠れていた?』

『まあ、あれだ、タコやイカが墨を吐くみたいに魔力を使っていたという感じか』

『おお、魔剣殿、その通りでございます。ですので、巫女様が未だ魔力量不十分であるとするのであれば……』


 皆迄言わずとも察することができた。魔力袋として白子はクリスに付いていく事ができると言いたいのであろう。


『主、一先ず、この探索中だけでも共闘してみてはいかがでしょうか』


 シュワルツの提案にジルバも同意する。


『体につけるは慣れだな。それに、あの羅馬に魔装を装備させるのなら、この蛙の魔力は役に立つ。羅馬に魔力を纏わせるのなら、こいつからでも問題なく取り出せるだろうからな』


 オリヴィから譲られた魔装の馬鎧。見た目はキルト地の馬にかける保温材のようだが、実際は、銃弾を弾くことができる強度を持つという。クラーラが騎乗せずとも、若しくは、誰も騎乗せずとも、白子が乗っていればクリッパが怪我をせずに済むかもしれない。


『魔力壁は作れる?』

『魔力の塊か。もちろんだ、それがなければ洞窟内の移動も面倒であるし、あ奴から逃げ出す事もできんからな』


 後ろ脚て立ち上がり、胸を張る白子。手足が短い。


「蛙にしては、細長い蜥蜴みたいね」

『蛙っていえば、南都じゃよく食べるみたいだな』

「孤児院でも食べていたわ。脚の部分が鶏肉っぽいのよね」

『へー 名物なんだ? 食べてみたい』


 サラマンドルなら、再生能力が高いと言われ手足を失っても数年で再生すると言われるが、魔物の半精霊となった白子はどうなのだろうと二人と二体は想像したりする。


『……我は美味くないぞ……』


 胸を張ったまま、じりっじりっと後退し始める。そのままバランスを崩して後ろ向きに倒れる。


「まあいいわ、あんた、ヒュドラの弱点は分かっているのよね」

『ああ、任せておけ』

「なら、暫く協同で戦いましょう。名前は?」

『名は……巫女様がつけてくれると嬉しい。今は……ないのだ』


 今はないというのは、既に名を失った精霊であるということかもしれない。名を付けるという事は、クリスと白子の間に関係を繋ぐ行為でもある。ジルバもシュワルツも分かっているのだが、特に何も言うつもりはない。


「単純だけれど……ヴァイスではどう?」

『ヴァイちゃん!』

『……良い名でございます巫女様。ありがたく存じます』


 こうして、クリスは三体目の精霊と繋がりを得ることになったのである。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




『ヴァイス』の最初の仕事は、自らの魔力をクリスに受け渡し、トーチの炎を一段明るくすることであった。


『おーぉおお!!』

『いかがでしょうか?』

「いいわね。魔力も減っている感じしないし」


 ボワッと炎が一回り大きくなり、照度は更に広くなった。とは言え、鍾乳洞には岩陰が多く、陰の向こうまで見えるわけではないのだから、視界が良くないことは間違いない。


 また、遠くから見えるという事も意味するわけで、魔力を持たない相手であれば、先に敵に見つかり奇襲を受けかねないのだが、そんな知性はこの先に潜む魔物にはないということをヴァイスを通じ皆知っていた。


 魔力を纏い、身体強化を継続して行い常であれば魔力の残量に気を配りながら節約するところも容赦なく魔力を消費していても、全く魔力が減っていかないのは、ヴァイスが常に魔力を補充してくれているだけではなさそうだ。


『ヴァイスの精霊としての『加護』の影響だろうな』

『我の加護は、与えられた者の魔力消費量を低減させる効果があるようで、結果として、魔力量の基礎量が増えたとの同じ効果となるのであるよ巫女様』


 魔力量の消費が体感で半分くらいになっているのではないかとジルバが推測をする。


『魔力が倍増したようなもんだな。瞬間的な出力の必要な「雷」の威力は恐らく倍以上の効果になるだろう。それに、ヴァイスが魔力を補給しているのであれば、連射も可能だな』


 現状で、クリスは初歩的な魔術しか使いこなせない。理由は、魔力保有量が少なかったので、高威力の魔力の必要な上位の魔術、複数同時発動が必要となる魔術に関しては、全く使えていない。


 短期的には、威力が倍増した基本的魔術で手数による力業で対応することにより今までよりずっと効率良く活動ができるようになるだろう。


「いきなり、魔力が沢山使えるようになったからって、無理するつもりはないけどね」

『安全第一だよ!』

『使える力を出し惜しみするのは安全策じゃねぇぞ』


 今回の相手は、ハピュイアにヒュドラ。再生能力を持ち毒による攻撃が考えられる後者は特に危険だが、知性の欠落を利用する余地がある相手だと考えられる。


『我に策があります』


 知性の低いヒュドラは、ヴァイスの魔力を感じる事で、興奮状態になりヘイトを強く集めることが可能であるというのである。クリスがヴァイスとともに『雷』魔術でヘイトを集め、鍾乳洞の出口までヒュドラたちを引っ張り出し討伐をする……長い間ヒュドラと敵対してきた白子はクリス達に提案するのである。



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