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第四話 巡礼の聖女 『ハピュイア』と遭遇する

お読みいただきありがとうございます!

第四話 巡礼の聖女 『ハピュイア』と遭遇する


 GEEEE

 GYAGYA!!


 ハピュイアが近づいてくると、洞窟の雰囲気……いや臭いがガラリと変わる。腐肉の臭いがすると言えばいいだろうか。


『あいつら……風呂入らねぇからな』

「そういえば、蝙蝠も汚いらしいわね」

『さかさまになったままフンを飛ばすからね』


 蝙蝠もハピュイアもあまり綺麗な動物ではない。いや、片方は魔物だが。


 ぎゃいぎゃいと喚き声を上げながら、足の鋭い爪を立て、クリスとクラーラの頭上から襲い掛かるハピュイア。クリスはトーチをかざし、銃を向けるが狭い洞窟で暗がりから飛び出してくるハピュイアに上手に銃弾を当てられる自信はない。


『ど、どうしよう』

『嬢ちゃんは、魔銀のダガーに魔力を纏わせて、近寄ってきたら振り回せ』

『わ、わかった!!』


 近寄って来るタイミングで、えいや!!とばかりにクラーラが長柄と化した魔銀のダガーを振り回すものの、致命的になるような打撃を得ることはできない。羽でふわりふわりと躱されてしまう。


「これ!! どうすればいいの!!」


 クリスも松明で応戦するが、クラーラと大して変わらない。小さな傷ができ始める。爪は鋭く、手甲に傷が増えていく。クラーラは魔装手袋に魔力を纏わせっぱなしである。


「それそれ!!」

『おりゃ!!』


 ブンブンと勢いよく振り回しても、いなされ躱され疲労が積もっていく。


『お前、大事な事忘れてねぇか』


 ジルバがクリスに問いかける。クリスは何事と思いつつ、冷静になろうと務める。体はハピュイアにトーチを叩きつける行動をとるが、頭は何をすべきか冷静になろうと務めていた。


「……雷……」

『正解だ』


 クリスは銃を仕舞い、魔銀鍍金の銃剣に持ち替える。魔力を通し、『雷』をハピュイアに放つのだ。


 目の前に鈎爪が迫る。そして、


 Gakinn  !!


 鈎爪と銃剣が交差する瞬間。


―――『(flumen)


 PASHIINN!!

 GEEEE!!!!!YAAAA!!!


 プスプスとくすぶるような音をたて、湿った地面に叩きつけられるように落ちるハピュイア。そのまま、クラーラがとどめの一撃を入れる。


 GEEEE

 GYAGYA!!

 GEEEE

 GYAGYA!!


 俄かに警戒心を高める、残りのハピュイア。しばし距離をとり、こちらの様子を伺うように遠巻きに移動する。


『手を緩めるな』

「わーってるよ師匠!」


 魔力を抑え、威力より射程を重視。手数を増やして混乱させる。


―――『小さな(Parvus )』『(flumen)

―――『小さな(Parvus )』『(flumen)

―――『小さな(Parvus )』『(flumen)

―――『小さな(Parvus )』『(flumen)

―――『小さな(Parvus )』『(flumen)


 天井付近にまで逃げおおせたハピュイアの群れに、次々と小さな雷を叩き込む。逃げても、逃げた先で雷に打たれ続け、混乱状態となるハピュイア。


『嬢ちゃん、壁蹴って、あそこまで突っ込んで、叩き落しちまえ!!』

『おおぉぉぉ!!』


 ジルバの無茶振りに、雄たけびのような声を上げクラーラが身体強化で壁を蹴って天井近くまで駆け上がる。


BASHU!!


 振り抜いた杖の先端、魔銀の刃が、一羽の魔物を真っ二つにする。


 GYAGYA!!

 GYAGYA!!

 GYAGYA!!


 ハピュイアの群れはますます混乱が深まり、ついに、逃走に移るのだが、蝙蝠のように闇の中を飛ぶことに慣れていないのか、あちこち天井にぶつかり、混乱しながら奥へと逃げていく。


『追いかける?』

「いえ、態勢を整えるわ。息を整え、怪我があれば消毒したり、手当しないと」

『おう、ばい菌はいると、病気になるからな。気を付けろ』


 クリスとクラーラは二人で互いに見えない場所に怪我がないか全身を確認した。幸い、クリスの手甲が傷付いた程度で、怪我らしい怪我は擦り傷程度である。きれいな水を魔法袋から取り出し傷口を洗い、傷薬を塗り包帯を巻いておく。


『あいつら、なんでこんな山の中にいるんだろうね』

「さあね。嵐で飛ばされたとかかもしれない」


 遠く離れた土地の見知らぬ鳥が、嵐で王国迄飛ばされやってくることもある。そうした珍しい鳥は、昔なら国王や領主に献上されたであろうが、今時は王都の研究者に与えられることになるのだろうか。


「村はどの程度把握しているかね」

『知ってて送り込んだかもしれねぇ』

『ええぇぇ……』


 クリスとクラーラはここで探索を打ち切っても構わない。むしろそうするべきだろう。正式に冒険者としてギルドを通して受けた依頼でもなく、また、しばらく時間を空けたからと言って、依頼をした村が滅亡するとも思えない。


 この場所に近い山に近寄らなければ、どうということはないはずだ。


 それよりも、村人や司祭の言動に違和感を感じる。それに、田舎の寒村に『司祭』がいる事自体に違和感を感じる。司祭というのは、教区を預かる存在であり、人が多い都市ならばともかく、まばらな地方の十数件しか家屋のない場所にある礼拝堂に毛の生えた程度の大きさの教会にいていい位階の聖職者ではない。


 通常であれば、近隣の比較的大きな町に常駐し、定期的に周辺の村を巡回するか、助祭や侍祭といった下位の聖職者を派遣するはずなのだ。


『司祭も偽物か』

「そうね。聖典が古代語で読める程度の教養が必要だけれど、基本は暗唱だから、高等教育を受けていなくても問題ないでしょうね」


 途中で神学校や高等教育をドロップアウトして悪の道に堕ちた者でもそれなりに務まるだろう。


「問題は、このままズラかるのは癪に障るってところね。一応、あたしも修道女見習だからね」

『偽物許すまじ!!』


 変な所で修道女を引き合いに出すクリスであった。



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