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第七話 巡礼の聖女 激しく燃え上がるブツを手に入れる

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第七話 巡礼の聖女 激しく燃え上がるブツを手に入れる


 色々な装備を譲られ、旅の進め方も凡そ理解した。


「それとね、あなた達の連れている輓馬なんだけど、あれって、兎馬じゃないわよね」

「『……え……』」


 クリッパ(Klepper)と名付けられた兎馬は、ファンブルに居る時に保護したものであった。クリスが近くの村に仕事で向かった帰りに、怪我をして捨てられていた兎馬を拾って教会で育てていたのだ。


「兎馬と馬のあいの子の『羅馬』ですね。ポニーに近い大きさですし、兎馬より胴が長くしっかりした体型ですし。兎馬の頑強さと、馬の能力・性格を兼ねた良い動物です。荒野の多い神国では、馬以上の価値があると思いますよ」


 羅馬は神国・王国西部・法国で広く育てられており、兎馬より能力が高い。

輓馬として評価されている。州国の開拓でも活躍しており、二百万頭以上が

活動しているらしい。


「兎馬にしてはスマートだと思っていました。耳が立っているし、毛も灰色だから……でも半分兎馬なんですね」

「なので、小型馬用の馬具を用意しました。軍の払い下げですが、補修はしっかりしてあります。クラーラはともかく、魔力の少ないクリスの場合、騎乗して移動する方が良い可能性もありますから」

「馬鎧もあるんだけど……魔力が……ね」


 どうやら、魔装馬鎧というものもあるようだ。馬につけるキルト地の布で、魔力を通すと鋼鉄の鎧ほどの強度が出るという。騎馬用胸甲のようなものだ。


 クラーラなら魔装馬鎧を付けて魔力を供給しながら戦闘することが可能だろうが、身体強化・魔力纏いを素直にした方が良い気もする。


 クリッパは鞍を付け慣れていないので、暫くは慣らす必要もあり、騎乗せずに鞍だけつけておくことにするという。背中に常時違和感があるようなものなので、鞍を付けてすぐに乗れるというわけではないのだ。


「巡礼の途中で人助けをする事もあるかも知れませんから、それは良い装具になりそうです」


 クリスは、この先巡礼者が行き倒れになっているのに遭遇したなら、鞍付クリッパは救助に仕えると考えている。しかし、周りの反応は異なる。


「……助けられる範囲で助けてあげてね。あなた達が怪我をしたり最悪の状態になるのは避けて欲しいわね」

『無理だろうな。こういう奴は、自分の感情に素直に従うって、自分でもわかってんだろ? オリヴィ=ラウス』

「わかっていたって、言わないわけにはいかないでしょ? 言わずに後悔するようなことは避けたいもの」

『大丈夫! わたしが止めるから!!』

『……お前が一番考えなしだろ? 嬢ちゃん……』


 オリヴィの危惧はもっともだが、クリスの持つ自分のできることを為したいことを為す性格をよく知っている。ジルバもそれは分かっているし、クラーラはもっとその傾向が強い。不安しかないのだが、それが二人の良さでもある。


「ほどほどにお願いします。無事に王都に戻るまでが巡礼ですからね」


 そうビルが皆の気持ちをまとめて伝えた。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 そして、最後にオリヴィはクリスにある金属の粉の入った金属容器を渡す。


「ガラス瓶ではないんですね」

「割れた場合に危険だからね。これは『マグネシウム』の粉末。火をつけると激しく燃え上がるの。バチバチとね」


 マグネシウムは少し前に発見された金属で、鉄などに混ぜる事でその性能を高めることができるものだとクリスは聞いた覚えがある。しかし、その粉末が激しく燃える性質を持つとは知らなかった。


「暗闇に慣れている目の前で激しく火花が散ったら、しばらく、目が見えなくなるでしょうし、魔物や夜目の利く動物なら、失明するかもしれないわね」

「使い所です。クリスには炎の精霊の加護もありますし、『雷』魔術で起爆させることもできるでしょう。ピンチをチャンスに変えるカードに加えるという程度の意味ですよ」

『科学の進歩は、まるで魔法だな……俺も時代遅れにならねぇように勉強しねぇとな」


『魔剣』に時代遅れとか存在するのだろうか? 根が研究者肌なのだろう、クリスは自分の代わりに色々学んで教えて欲しいと思うのである。


「それと、マグネシウムが燃えている時に水をかけると……大変なことになるのを覚えておいて」


 オリヴィ曰く、マグネシウムは熱湯や塩水をかける事で『水素』を発生させるという。水素は鉄に酸をかけると発生する物質であり、爆発燃焼する性質を持つものだとクリスは教えられる。


「つまり、水をかけて消そうとするとかえって水素が発生して、引火すれば爆発するってことですね」

『それはたいへんだよ!』


 火を水で消そうとするのは普通の行動なのだが、かえって大変なことになるなんて……なんて仕掛けがいのある罠になるだろうか。量はさほどでもないので、眼潰し用に使おうとクリスは考えた。




 沢山のことを伝えられ、また、物資も渡されたクリスとクラーラは、かなり疲れていたのだが、王国内の調査依頼について、最後に確認することになる。ルードの聖女の調査の他にも、いくつか気になる場所在があり、途中で依頼を受けた形で訪れてもらいたいのだという。


「『ペトロ』の街の冒険者ギルドに依頼を出しておくわ。そこからほど近い場所にある鍾乳洞に、なんらかの良くないものが潜んでいるらしいわ」


 オリヴィ曰く、王国ではあるものの独立の気風の強い地域であり、王都から足を運んだものが周辺で失踪する事件が何度か発生しているのだという。


「残念ながら、地元の冒険者や探偵・憲兵では何も問題が起こりません。それに、知っていて敢えて情報が上がらないのかどうかも分からないのです。その辺り、お二人なら何かわかるかも知れません」

「危険を感じたら逃げても構わないし、依頼の失敗に対するペナルティはないものにするから。あくまでも、鍾乳洞に対する情報収集ね。実際、足を運んであなた達の目で確認してもらいたいという事ね」


 鍾乳洞というのは、石灰岩が地下水などの浸食により削られてできた洞窟のことを示す。内部はかなり広いことが多く、地下に川や湖、棚田のような段々となった窪み、渓谷のような深い谷が地中に広がって入る事も少なくない。


 水が沁みだしている為足場も悪く、当然入口付近以外は太陽の光も届かないのだが……


『暗視能力のある魔物なら問題なく隠れることができるな』

「魔物……」

『ああ。今は見かけなくなってるんだろ? ゴブリンとかコボルドとかだな』


ジルバは「冒険者なら魔物くらい知っていて当然」とばかりに名前をあげつらう。洞窟に住むものは他にもいるだろう。例えば蝙蝠や大型の両生類・山椒魚の類などだ。それに……


「危険だと思って人が近寄らなければ、好都合な存在もいますね」

「盗賊や逃亡中の犯罪者」

「それと、吸血鬼とかね」


 人が近寄らない事が好都合な存在はいくつもある。それ故、生き残っている魔物や、もしかすると水の精霊などもいるかもしれない。勿論、人間も潜んでいる可能性は十分にある。


『まあほら、『火』の魔術で松明がいらねぇとかはねえからな。あれはあれで、不意打ち予防の鈍器にもなる。魔術より確実だから、その辺も必要ならしっかり準備が必要だな』


 俄かに、冒険者らしい活動になりそうだとクリスは考えていた。




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