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第六話 巡礼の聖女 詠唱と加護の関係を考える

『イイね』誤字訂正・ブクマ・評価・感想をありがとうございます!

第六話 巡礼の聖女 詠唱と加護の関係を考える


 雷魔術を用いて火薬に着火する方法は、クリスにとって良い鍛錬を施すこととなった。率直に言って……とても大変であったが、魔力のコントロールという点において、大いに意味があったと思う。


 弾丸を入れず、火薬だけ込めたリボリバー銃に、雷管を付けずに魔力だけで着火する練習を延々と行ったのだ。腕がプルプルするのは、魔力切れではなく、銃が重たいからである。


―――『(flumen)


 PASHIINN!!

 DANN!!

 DANN!!

 DANN!!


『……』

「「……」」

『チェーンファイアだな……』

「何だかごめん」


 チェーンファイアというのは、リボルバーの回転弾倉に込められた火薬が、連続してシリンダー内で暴発する現象のことなのだが、クリスの場合、魔術の収束度と規模の問題で、発射する弾倉以外にも魔術が飛んでいるのだと言える。


「クリス、気にしないでください。単発式なら問題なく使えているんですから」

「慰めになっていないわよビル」

『煽ってるんだろ?』

『扇ごうか?』


 クリスは考えた。魔力の精度が低いのなら、詠唱を細かく指定すればいいのではないかと。


「ねぇ、『小さな』って加えて規模を指定したらどう?」

『……そうか、お前の場合それでいいのかもしれねぇ』

Parva

『魔剣』ジルバは自分の基準が高かったことを改めて気が付いた。詠唱が長くなるものの、細かく指定することで効果がはっきりする。


『それじゃあよ……「小さな(Parvus )」と前に加えてみろ』


 ダメ元で、クリスはゆっくりと詠唱を始める。


―――『小さな(Parvus )』『(flumen)


 PASHIINN!!

 DANN!!

 DANN!!


 先ほどよりはましになったが、完全コントロールできていない。


「良い感じね」

『その意気だ!! ファイト!!』


 手ごたえを感じ、クリスは更に『魔剣』ジルバに要求する。


「もっと小さくよ!」

『なら、「極小(Minimal )だ』


 クリスが詠唱を改める。


―――『極小(Minimal )』『小さな(Parvus )』『(flumen)


 PASHIINN!!

 DANN!!


「成功ね」

『だがよ、おかしいぜ……』

「加護の影響でしょう。かなり抑えないと暴発になるのでは?」


 極小の小雷って、ドンだけ小さいのだろうかとクリスは思うのである。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 クリスは考えた。詠唱を細かく増やせば、威力や精度を大きく変えられるなら、もっと詠唱を増やせばいいのではと。その事を魔剣の師匠に聞いてみると、否定的な答えが返って来る。


「何でよ。沢山詠唱してあげればいいじゃない?」

『相手が人間ならそれで正解だ。けどよ、相手は精霊だぞ? 言葉じゃなくって心でつながらねぇと、精霊は動いてくれねぇんだよ。だから、言葉で指定しなくて済むことが大切なんだ』


 精霊は古代語に慣れているのは、あくまでも精霊と人間の関係が長く古い付き合いであるからに起因する。本来は、言葉で補助をされずとも、人間の意思を先回りして叶えようとするのだという。それが、伝わらないのはコミュニケーション不足であり、伝える為に必要な魔力が出力されていないからなのだ。ジルバは続ける。


『人間の感覚に例えるなら、強い風は吹いていて声が途切れ途切れにしか聞こえないって感じだな。だから、細かく沢山の言葉で何度も伝えれば伝わるんだろうけどよ、本当は強い言葉で短く伝えるのが正解だ。その時、なにをして欲しいのかは短い言葉で伝わるくらいの関係を築いておくことが正解なんだよ』


 置かれた状況と声のトーンで精霊が意図を察してくれるくらい、強い関係を築いていくのが正解なのだ。


『見ず知らずの奴に、加護持ちってだけで呼び出されたら、そりゃ反応できないのが当たり前だ。精霊がいつも同じ奴らとは限らねぇが、精霊の世界は人間界とは違うからな。それに、お前が頻繁に呼べば、魔力持ち・加護持ちがすくねぇ時代だから、贔屓してくれるんじゃねぇか?』


 それはありえそうである。顔見知りは贔屓してやりたいと思うのは、人も精霊も同じなのだろう。


「わかった。やってみる」

『おう、毎日やれよ。まあ、弾丸作るのも火薬を使うのも練習だろ?銃の訓練だってそれなりに必要だ。それなりに火薬も在庫があるわけだから、湿気る前に使い切るくらいでいいだろう』

『使い切るのは不味いと思う!!』


 横で黙って聞いていたクラーラがジルバにツッコむ。そういうクラーラも……


『やめとけ。水の加護持ちは向いてねぇ。お前はお前で、水球飛ばしとかそういうの練習しておけよ。それと、あれだ、魔水晶に魔力満タンにしておいていてくれ。たぶん使うぞ』

『了解だよ!! 任せておいて!!』


 魔水晶への魔力注入。これも、魔力を増やすために必要な修行だと自分に強く言い聞かせるクリス。


「それと、これを持って行って」

『ナンダこりゃ。今はこんなものあるのか、変わった眼鏡だな』


 ジルバの知るメガネは金属のフレームにガラスを組み合わせたものであり、ガラスの透明度もこれほどではなかった。メガネの周りをピタリと覆う革のフレームがついている。まるで、鉢金のように見えなくもない。


「これは、煙水晶を用いた魔導具。普通に使う分には、埃や砂から目を守るゴーグル。そして、魔力を通すと、温度の違いで生き物の存在が暗闇でも分かる暗視機能を持つ魔導具なのよ」

「ヴィの夜間視の能力を魔導具で再現したんものです。実際のヴィの能力には及びませんが、闇に潜む動物や人間のような体温のあるものならその放射する熱を影のように捉えることができます」


 なるほど。夜間に周囲に気配があり、魔力を持つ魔物であればクラーラの『魔力走査』で把握できるが、そうでないものは見つける事は出来ない。それを補う魔導具であるという事だろう。


「発砲時の火薬カスから目を守る事もできるから、戦闘時は使う事を勧めるわ。魔装糸で補強してあるから、防具としてもある程度役に立つからね」


 オリヴィは、魔力の少ないクリスを助ける道具をあれこれと用意してくれているようである。



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