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第五話 巡礼の聖女 『雷管』の代わりに『雷』魔術を覚える

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第五話 巡礼の聖女 『雷管』の代わりに『雷』魔術を覚える


 オリヴィは魔銀鍍金された双発銃を取り出す。既に、アンリ銃を使用するオリヴィには不要な装備となったので、クラーラに譲るというのである。


「これなら、二発撃った後、そのままメイスのように魔力を纏わせて使う事もできるから。ヴォルカニック銃よりクラーラ向きでしょう?」


 銃の扱いに不向きであるクラーラにとっては、メインが鈍器という役割りの方が良いかもしれない。二人とも同意し、クラーラは受け取る。


「これ、銃を吊るす腰帯ね。それと、クリスには弾丸の形代ね」


 36口径と41口径そして……31口径の形代。


 形代は、亜鉛合金製で中央にヒンジが付いており、折りたたむと銃弾の形に『鋳型』ができる。椎の実型と丸型が型抜きされている。


「鉛をここに溶かして入れて冷やして固める。クリスなら、魔術で鉛を溶かす事も簡単にできるでしょ?」

「ここに居る間に私が見ましょうか? 私も『火』の精霊の加護持ちですので、多少はお教えすることもできますから」

「……え……」

『きいてないよぉ!!』

『見りゃわかるだろ。髪の色とかに特徴出てるじゃねぇか』


ジルバはそういうが、魔術師を良く知らない二人には、そんな事は分かるわけがない。理不尽である。


 火薬は樽でもらってあるし、紙薬莢用の化学紙も十分ある。雷管が……心配ではあるのだが。


『雷管ってのは作れるものなのか?』


 ジルバの危惧をそのままオリヴィにクリスは伝える。答えは「難しい」というものであった。


「雷酸水銀は爆発物だから安易に持ち運べないし、加工は専門家でないと難しいわね。クリスには身につける時間が足らないでしょう」

「点火なら魔術で代用できると思いますよ。『火』の精霊の加護持ちなら、問題なくできるのでは?」


 練達の『火』魔術師なのであろうビルは自在に『爆発』の規模を操れる段階なのであろう。雷管は『雷酸水銀』に刺激を与え『爆発』させる事で火薬に着火することで発砲に繋げるどうさである。


 クリスの練度では、銃自体が爆発しかねない。


『あれだ、お前も「雷」魔術を身につければいい』

「簡単に言うわね」

『まあ、髪の毛をバッサリ切るつもりなら、俺が教えてやる』


 魔力を与える対価を貰えるなら、『雷』魔術をジルバが教えるという。

髪の毛フェチな『魔剣』である。


『魔力量が少ないから、結構バッサリいかねぇと無理だ。俺も、無い魔力は与えられないからな』

「どうせ、短い方が旅には楽だから良いわよ」

『うう、短くなっちゃうと……』


 まるで男の子みたいと……言いたくなるのをぐっとこらえるクラーラである。

そりゃ言っちゃなんねぇ!!




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




『雷、まあ、小規模なものなら(flumen)で問題ないはずだ』


 バッサリ髪の毛を切られ、どう見てもちょっと長めの髪の『少年』にしか見えなくなったクリスが、頭がスースーするなと首筋を摩っていると、ジルバはどんどん話を進めていく。


「魔力の消費は?」

『お前は火の加護持ちだから、雷は同じくらい少なくて済むだろう。暫く使っていると、恐らく「加護」も生えるだろう』

『加護って生えるんだ!!』


『雷』は『火』と『風』の組合せの加護なので、どちらかの加護を持っている場合は容易に加護が与えられるのだという。


 クラーラは「風」の精霊魔術が使えるものの、加護があるのは『水』だけなのである。因みに、『水』の加護がある場合、『火』の精霊の加護は絶望的であり、その為『風』の加護を得ても『雷』の加護が生える事は恐らくないだろうという。


「加護持ちも善しあしね」

「ヴィは『土』と『風』ですから、『雷』も使えるようになるのは早いと思いますよ」

「いいわ、私は火の術式で十分代用できそうだもの」

「確かに。量だけでなく操練度もヴィは素晴らしいですからね」


 特級探偵二人が何時もの調子で話をしているが、首スースーのクリスはそれどころではない。先ずは、『(flumen)』を発動させねばならない。




 それは、周りが言うほど簡単ではなかった。騙された!!


「ふ、ふるめん」

『駄目だな。お前……古代語は話せねぇんだっけ』

「……どこで使うのよ」

『お、おう。昔は共通語と言えば古代語だったからな……』


 今でも、聖職者や貴族の子弟は『教養』として古代語を習得する。しかしながら、孤児であるクリスは当然身につけていない。


『王国語も神国語も古代語の派生だからな。その辺り、話せるなら、そうは難しくねぇ』

「……これだから貴族のインテリは……」

『まあ、昔は教養だったし実用品だったからな』


 活版印刷が普及しそれぞれの国の言語で聖典が読まれるようになると、古代語の重要度は格段に低下した。それまでは、古代語で書かれた聖典を司祭が読み上げる事でしか、一般人はその内容を知ることができなかったからだ。


 原神子派の交流は、この聖典の現地語訳が普及することで始まったと言えるだろう。今は、読み書きできる者が相当増えているのはその影響であるといえる。因みに、御神子信徒は読み書きのできない者が多く、原神子信徒はできる者が多く、都市住民・商工業者といったものが主流であるのは関係ないとは言えないだろう。


 孤児にとっては、読み書き計算は必須である。後ろ盾のいない孤児にとって、自分の身を守る物はそういった当たり前の知識にある。加えて、契約書に小さく書かれている事項が大事であるとか、そういう抜け目のなさも大切な要素となる。


「クリス、おかしくはありません。少し、謳い上げるように唱えてみてください」

『『(flumen)』だよ!』

「……フルメン」


 ビルとクラーラのアドバイスを耳に、クリスは再び詠唱するが、発動せず。魔力は発動していないので減る事はないようだが、精神力が削られる。


『できるまで、何度でも……だろ?』

「うっさいわね、わかってるわよ……」


 素が出てしまうのは仕方がない。形振り構っていられない。


 大きく深呼吸をし、体全体に廻る魔力を首のあたりに集めるように魔力を整える。おそらく、『散って』しまっているのが良くないのだろう。深く呼吸をし、ゆっくりと息を整える。そして……


―――『(flumen)


 PASHIINN!!


 小さく「雷」が指先からほとばしったのである。



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