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第九話 巡礼の聖女 『死神』の顕現を見る

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第九話 巡礼の聖女 『死神』の顕現を見る


 気の良い妙齢の美女と陽気な美男子だと思っていたのだが……


「はは、皆さん良い心掛けですね。では、ゆっくりと地面に武器を下ろして下さい。下ろし終わったなら、頭の後ろで手を組んでもらいましょう」

「死期天使……ビルじゃねぇのか」

「金髪碧眼の悪魔……」


 物騒な仇名に「そんなに恐ろしくないですよ。死は一瞬です」などと、とんでもないセリフをいつものイケメンスマイルを添えて口にする。


「ふざけんな!!」


 馬車の上で小銃を構えていた若い探偵が、銃口をビルに向ける。その瞬間。


 BOB BOONN!!


 ライフルが暴発し、腰に掛けていた火薬袋が爆発した。火だるまになり、馬車から転げ落ちる小銃持ち。


「炎の魔神……」

「銃をさっさと手放せ、燃えてぇのか!!」


 恐らく、詠唱無しで小さな火の球を銃身と火薬袋に叩き込んだのであろう。銃身加熱することで、火薬が発火し銃身内で爆発する事故は起こりえる。また、「チェーン・ファイア」という、リボルバーの弾倉内の火薬が連鎖爆発する事故も起こりえる。弾が飛び出す先が自分の足であれば、大怪我で済まない可能性もある。


 その事に気が付いたものから、高速で銃を地面に置き、手を頭の後ろで組んでいく。ベテランほど、その判断は早い。


「お、お前ら!! 儂を守らんか!!」

「禿を守るより、自分の命を守れ!!」

「そ、そうだ。十年もすれば娑婆に戻れるだろうが、天国にしろ地獄にしろ、戻ってこれねぇんだぞ!!」


 下っ端探偵なら、罰金か短期の収監で済む可能性もある。火達磨になるか、大人しく捕まるかで考えれば、後者を選ぶべきなのだ。それが賢い判断。


「ちゃっちゃときめなさい!!」

「二人とも出てきていいわよ、武器を回収して」


 クリスとクラーラも気配隠蔽を解き、街道、馬車の背後に現れる。


 クラーラはボルカニック銃を構え、クリスを守りつつ置かれた武器をクリスが改修し魔法袋へと収めていく。こんなこともあろうかと、持ってきたのだ。


 リボルバーは『ドラグン』と呼ばれる、44M48よりさらに古いタイプの銃や、王国製のちょっと変わったものが多かった。


「剣やナイフも外してください」

「……わかった……」


 十分の距離をとり、クラーラが銃を向けられながら、一人の探偵に腰に吊り下げた短剣を外すように告げた。その時である。


「うわあぁぁぁ!!」


 緊張感に耐えられなかったのか、若い探偵が林の奥に向け逃げ出した。


「ビル!!」


 ビルが騎銃で狙いを付ける。しかし、監視の目が外れたと判断した何人か……若手中心と禿だけだが……俄かに動き出す。


「撃って!!」

『え、えええ、ええ!!』


 クリスは双発銃を目の前の男に向け発射、男は足を抑えて蹲る。クラーラは周辺で背中を見せた男に狙いを付けるが、外してしまう。二発目の射撃で、馬車の上の護衛を一人倒したクリスに、クラーラがボルカニック銃を預ける。


『私は、杖で十分。これはクリスが使って!』


 クリスは面倒を押付けられたと思いつつも、背後にクラーラを従え追跡を開始する。


 既に、三人が死傷し、逃げ出したのは『判事』と三人の護衛探偵。そのうち、一人はビルに射殺されたようだ。残りは三人。


「クリス!! クラーラ!! 禿を追って!! 殺しちゃだめよ!!」


 オリヴィからの指示を受け、二人は林の奥へと分け入っていった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




『追いかけられるかな……』

「大丈夫。ほら、折曲がった枝や足跡だらけじゃない。簡単よ」


 バキバキと枝を折る音や、喚き散らす声も聞こえる。息を殺して後を追う二人と違い、『禿』は相当冷静さを失い混乱しているようだ。


「チラチラ後ろ姿も見えるようだし、急ぎましょう」

『じゃあ、身体強化と気配隠蔽をして、れっつごー!』


 二人はそのまま後を付けるのではなく、並走するように走り出す。どうやら、作業用の小道を『禿判事』は走っているようだが、時々盛大に転んでいるようで、罵詈雑言を吐きながら林を奥へと走っている。


「あんまり奥まで行かれると、帰りが面倒そうね」

『じゃあ、一気に!!』


 クラーラが横合いから『禿』に体当たりし転倒させる。


「な、なんじゃ!!」

『おりゃああぁぁ!!』


 BAKIII  !!!


「ぎゃああ!! 脚、儂の脚があぁ!!」


 クラーラは鉄鞭部分の杖で、思い切り禿の脛を打ち砕いた。脚を抑えて転げ回る禿。上等な仕立ての衣装は泥だらけ、落ち葉だらけ、そして、立派にお整えた髭も既にグチャグチャで、涙と鼻水まみれである。


「どこいくんだよ、禿!! 手間かけさせんじゃねぇよ!!」


 ボルカニック銃を禿の左手掌に押し付け、引金を引く。右手は署名する時に必要なので傷つけはしない。


PANN!!


 掌に開いた傷、そして、飛び散った火薬による火傷……涙が止まりません。


「次に余計なことをしたら、頭を撃ち抜く。理解できたら、黙って頷け」


 声を殺して呻き、痛みに耐える禿。何度も何度も繰り返し頷く。


『あ、足へし折ったから、自力で歩かせられない……しっぱい」


 縄でグルグル巻きにした後、下に板を噛ませて引きずって戻る事にした。これなら、直接すすり泣く禿を触らずに済む。禿がうつったら困るのだ。


「さあ、行きましょう」

『うん、ズリズリいこう!』


 幸い、林の地面は土と落ち葉で覆われており、引きずられたダメージは大したことはなさそうだ。適当な枝で橇を作り、二人は街道へと戻って行くのであった。



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