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第六話 巡礼の聖女 リボルバーを貰う

第六話 巡礼の聖女 リボルバーを貰う


 クリスは将来的には、長身のナイスバディなお姉さんになる予定だが、今はヒョロガリのちびっ子である。威力不足は『火』の精霊の加護で強装薬並にバフ掛けされるので恐らく問題ない。


「36口径の方を貰います」

「良い選択ね。44口径はちょっとクリスには重たいと思う」


 36口径は1.2㎏、44口径は1.8㎏。陸軍の騎兵装備として支給される44口径の方は、人間の体に吊るすホルスターに収まる大きさではなく、馬の鞍に納められたホルスターに装着される。


 36口径は海軍士官などが所持する。船内での暴動対策用みたいな装備だ。常時携帯する為に小型軽量化され、至近距離での使用が前提な為、口径も小さくて構わない。とは言え、22口径や31口径といった携行しやすいサイズの銃の存在と比較するなら、36口径は拳銃としては十分威力がある。


「ホルスターにしても、体の大きさ的に」

「腰の後ろに回す感じでしょうか。体の横では操作しにくそうです」

「目立つものね」

 

 十二歳の少女の中には、大人顔負けの身長の者もいるが、クリスは未だ150㎝に欠けるくらいである。オリヴィかクラーラほどの身長があれば、若しくは、22口径か31口径のリボルバーならありかもしれないが、難しいだろう。


「双発銃と銃剣とリボルバーでは装備が多すぎると思います。実際、一つ一つはそこまでではありませんが、三つ揃って尚且つ背嚢もありますから」

「これで一つは解決するでしょ?」


 オリヴィは、革製の肩掛け鞄らしきものを出した。それは、ポシェットとかポーチと言う程度の小さなものであり、大したものは収納できるとは思えない。


『魔導具だ』

「……魔導具……」


 オリヴィはびっくりさせる事に成功したとばかりにニヤリと笑う。


「これは、魔法の収納。見た目はこんなだけれど、中身は二人分の背嚢位は余裕で入るわよ」

『やった!! 楽できる』

「そんなわけないでしょう。何か条件がありますよねオリヴィ」


 二ヒヒといった感じでオリヴィが笑う。条件は、無事に王都に戻って来ること、だそうだ。


「魔法の収納というのは、持ち主の魔力を継続して消費するのよ。魔力を与えない状態なら半日くらいで機能しなくなるわね」

「その場合、中身はどうなるんです?」

「吐き出される事がほとんどだけれど、魔力のある装備の場合はそのままどこかに消えてしまう、魔法袋に吸収される場合もあるわね。私は今まで経験ないけれど」

「大丈夫ですよ。それに、クリスは常時身に着けて、魔力量を増やす一つの訓練道具になりえますから。魔力量が増えれば、収納量も増えますよ」


 クラーラは『魔力量が多い方が有利なら私が』と思う。魔力量だけであれば、それが正解なのだが、装備や訓練、それに咄嗟の応対を考えれば言葉の話せないクラーラでは不安が残る。そもそも、クラーラの体格的には、魔銀短剣を加工した杖とボルカニック銃を腰に吊るすくらいのことは問題ない。


 嵩張る毛布や野営道具は兎馬の『クリッパ(Klepper)』が携行している。クラーラの背嚢にあるのは、着替えや非常食といった個人が確保しておくべきものだけなのだ。


「クラーラのボルカニック銃のホルスターも必要ですね」

「クリスは銃剣以外は魔法袋に収めておけばいいわ。魔力を消費して、魔力量の底上げを優先してね」

「クラーラの分も必要となるなら用意はしますが、巡礼があまりに軽装なのはかえって怪しいですからね。旅から戻ってから装備に加えましょうか」

『……あれ? 私、王子と結婚するはずなんだけど。もしかして、結婚祝い?』


 結婚祝いか就職祝いかは不明である。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 魔法袋(極小)と36M 51を貰ったクリスは、早速、紙製薬莢を作り始めた。明日、使う事になるかも知れない。幸い、憲兵にも装備している者がおり、雷管キャップと弾丸は駐屯地に備えがあると言うので、オリヴィが相応の量を譲ってもらってきた。


「弾丸とキャップで240発分。それと、これもね」

「予備のシリンダーです。あらかじめ六発分込めておいて、いざという時はシリンダーごと交換するんです。数秒で再装填できますから」


 予備のシリンダーは2つ譲ってもらった。憲兵は集団で行動するので、予備のシリンダーを持ち歩くことはないのだという。それに、シリンダー内の弾丸が暴発することもあるので、ポケットなどにそのまま入れておくことは危険らしい。『火』の精霊の加護を持つクリスには無用の心配なのだが。


『すごいねクリスの銃』

「ボルカニック銃だって凄いと思うけど?」

『そうだね。練習しないと、当たりそうにもないけどね私の場合』


 クラーラが射撃した場合、装薬量の少なさからくる威力不足はあるかもしれない。とはいえ、一対多数で対峙する場合、ボルカニック銃の装弾数の多さは安心材料となり得る。


「一見、銃とはわからないホルスターにしたいわよね」


 ボルカニック銃は、銃剣と変わらない長さであり、41口径8連発である。リボルバーと比べると、チューブラマガジンのお陰ですっきりしたシルエットなので、目立ちにくくすることは十分可能だろう。フード付きマントの下ではさほど眼立たないようにできそうだ。


『片方だけ重たくなるのは疲れるかも』

「慣れよ慣れ」


 左右均等に重さが掛からないのは、長い時間歩く場合疲労の原因となる可能性は確かにある。だがしかし、クリスは魔法袋を譲るわけにもいかない。


『うう、魔法袋いいなー』

「銃を吊り下げるのもカッコいいと思うけどね」

『そうかな? そう! そうだね!!』


 革製のホルスターは、冒険者たちが当たり前にいた時代にその剣を吊り下げていたような形をしている。肩から斜めに襷のように駆けた帯に腰の辺りでボルカニック銃が釣り下がるようにホルスターがセットされる。


 オリヴィが長さを調整し、実際に銃を差し込んでみた。


「どうかしら?」


 オリヴィの確認に、クラーラは指で丸い形を作る。


『問題ないよ』

「クラーラ。そのハンドサインは止めた方が良いですよ」


 ビルが冷静に答える。


「これから向かう国や連合王国においては……お尻の穴という意味がありますから」

『やだもうぅ!!』


 顔を真っ赤にして両手をホールドアップとばかりに大きく上げる。クリスとオリヴィはケラケラと笑い飛ばす。人魚はどうなっているのかしらないが、人間生活一年生のクラーラにとっては、知らない事ばかりなのだから仕方がない。


「お金って意味もあるから」

「んー その場合、掌を上に向けてマルを作るんじゃない?」


 確かに。指で作る丸も、時と場合、向きによっていろいろな意味を持つ。


「それで、明日の段取りなんだけど」


 オリヴィはそう言って、三人に話しかけたのである。




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