第六話 巡礼の聖女 楼門の跳橋を下ろす
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第六話 巡礼の聖女 楼門の跳橋を下ろす
『ちょ、ちょっと強力すぎだよ……』
ベッドの木枠ごと破砕され、ミンチとなった元人間の遺体が散乱する部屋に、二人は呆然とする。毛布のお陰で飛び散ったものの、返り血はそれほどでもない。
隣の部屋が俄かに騒がしくなる。
『これ、使って』
「う、うん。そうする」
渡されたのは、クラーラがビルから貰った『ヴォルカニック連発銃』。口径の割に威力が弱い銃だが、クリスが加護を用いて使うのなら、相応の威力となるだろう。
『弾は……これ』
「……ありがと……」
単発銃やクリスの双発銃だと威力があり過ぎる。ミンチ製造機となりかねないクリスからすれば、威力の弱い銃は大歓迎だ。既に時遅しであるが。
隣の部屋の扉が開き、二人の男が飛び出してくる。しかしながら、手に持つはサーベル。
「なんだ、お前ら!」
そして、中を覗き込み言葉を失う。漂う血煙の臭い。
「てめぇらぁ!!」
一人がサーベルで手前に居るクラーラに斬りかかるが、跳ね飛ばされる。
魔力壁を展開し、身体強化を十分に行ったクラーラが、犯罪組織の下っ端風情に髪の毛ほどの傷を負わされる事はない。
『煩い悪人!』
BISHU!!
鉄鞭で思い切り鎖骨から切り下げられ、深く体にその鉄棒で押し切られる。
「ぎゃああ!!」
『ほんと煩い!!』
仮面のように表情を消したクラーラが、左手に持った魔銀のクウォーターパイクで男の喉を切り裂く。ゴボゴボと呼吸とも声ともわからない音を出しながら、首を抑えて男が崩れ落ちる。
固まっている今一人の男に、クリスが『ヴォルカニック連発銃』を放つ。
BASSHU!!
やや大きめであるが、銃らしい音をたて男の胸に大きな穴をあけ着弾する。
『あ、煩くない』
驚いた顔で固まる男の首に向け、魔銀鍍金銃剣の切っ先が振り下ろされるのであった。
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「ちょっと手加減できなかったね」
『しょうがないよ! まだたくさんいるはずだから、次がんばろー!』
結果として、城壁上の三人、この階の五人の計八人が死亡。憲兵隊に引き渡す構成員がゼロの状態だ。
「次は、足とか腕を斬り飛ばして無力化させよう。焼けば、止血できるし。即死じゃなきゃ問題ないよね」
『うん。問題ない。頭いいねクリス』
修道女見習が悪人とは言え、積極的に殺していいのかという問題はあるのだが、それを含めての巡礼の旅だと思う事にする。悪人を駆除することで、善男善女を救う事になるのであれば、自らの手を汚すことも必要なのかもしれない。
そもそも、彼らは御神子信徒なのであろうかという疑問もある。ある意味行っている事は悪魔崇拝者のような行為に思える。そういえば、オリヴィが話をしていた『無政府主義者』『共産主義者』という者たちは、犯罪組織から資金を得て活動する吸血鬼のフロント組織であるとも聞く。
「神様の敵は、みんなの敵よね」
『そうそう。敵だから、問題ないよ』
いうなれば、巡礼+異教徒との戦い=『聖征』である。二人で行う『聖征』の旅であると考える事で、ミンチ祭りも少し気持ちは楽になった。そう思い込む事にする。
門楼内に人の気配が増えてくる。そして、隣の城館も騒がしくなってきたような気がする。流石に大騒ぎし過ぎただろうか。
『いそごう!』
「では、あたしが銃撃するから、倒しきれない奴をクラーラが止めを刺して」
『まかせて!』
階段を上ってくる気配。そして、通路に数人の男がサーベルと拳銃を持って現れた。服装はいかにも寝起き。つまり、まだ、何が起こったか把握できていないが、何かが起こったと思って慌てている様子だ。
「お、おい。どうした!」
通路の奥に向け、先頭の男がこちらに向け声をかけてくる。
クリスは、再び祈りを捧げると、姿勢を低くして通路に飛び出した。
BISHU!!
BISHU!!
BISHU!!
駆けながら『ヴォルカニック連発銃』を前に立った三人に銃撃をし、胸や腹に弾を受けた男たちが後ろに向け吹き飛ばされる。
クラーラがその後ろをクリスを追い抜くように飛び出すと、驚き固まっている男たちの手足を斬り飛ばし無力化する。
「があぁぁぁ」
「て、てがぁ」
「足、俺の足……」
傷口を抑え蹲る男たち。
『燃え上がれ』
クリスがマッチを一本すると、大きな火の塊となり、次々と傷口を焼固めていく。肉の焦げる臭い、男の絶叫。とりあえず焼いて止血だ。
『だいじょうぶかな?』
「火薬を傷口に振りかけて火をつけて焼き固める止血もあるみたいだから、それよりは上等でしょ? それより、大人しくしていれば、憲兵が助けてくれるかもしれないから。じっとしておく方が身のためよ」
痛みと失血で意識が朦朧としている男たちにはすでに抵抗する意欲も能力もない。
クリスとクラーラは予定通り騒がしくなる城館を無視し、門楼にある跳ね橋の昇降機を下ろす為に駆け出すのであった。
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