第二話 巡礼の聖女 ロケット弾を知る
第二話 巡礼の聖女 ロケット弾を知る
ヴォルカニック銃はクラーラが持つことになった。離れると当たらないという面と、一発の威力ならクリスの双発銃の方が高いからである。
「それと、屋内だと杖は使いにくいと思うのよね」
クリスの仕込杖は魔銀のダガーを杖の先端に仕込んだものである。確かに、狭い通路や部屋の中で振り回す事も難しい。
「クウォーターパイクって仕様があるの。こんな感じね」
見ると、四分一と言われればそうかなと思える1m程度の長さの槍がテーブルに置かれる。
『短いね』
クラーラがしげしげと短い槍を見る。
「船上で使う装備の一つね。狭い船内通路や甲板上での乱戦には片手で使える程度の長さの物が良いみたいね」
ビルが手に取り、ニ三度突き刺す真似をする。これなら、銃を撃つ時にも邪魔にならず、腰に下げる事ができるかもしれない。
「普通のクウォーターパイクじゃ魔力纏いができないから、その杖を加工して真ん中で外せるようにするのが良いと思うのよ」
オリヴィ曰く、クウォーターパイクと鉄鞭を嵌めこみネジで結合する形で『杖』として成立するようにするのはどうだろうかという。
「鉄鞭……ですか」
「簡単に言えば、鉄の棒なんだけど、刃のない剣のように振るえる感じで持ち手の部分を革巻きにしたりするのよ。先端は石突代わりに少し加工するとして、ショートソードくらいの長さの鉄の棒になるでしょうね」
魔力纏いができるよう、魔銀鍍金製にするのであればなお良いだろう。その件を提案すると、オリヴィは「今すぐは無理かもしれないけれど、早急に用意させるわ」と言葉を返した。
加工できる武具屋が王都にしかないので、手配をして王国を出るくらいまでには冒険者ギルドで渡せるようにするという。それまでは、杖を詰めたクウォーターパイクで我慢してもらいたいとのこと。
『全然問題ないよ。半分になれば、腰に差しておけるしね』
最近、すっかり魔力纏いも馴染み、身体強化で健脚を発揮するクラーラにとっては杖を特に必要としていないという事もある。仕込杖のクウォーターパイク化は駐屯地内の工房でオリヴィが加工してくれると言うので一先ず、預ける事になった。
「明日は、一緒に射撃訓練しましょうね。クラーラが主に使うのでしょうけれど、クリスも使えるようにしておくに越したことはないから。二人とも練習ね」
どうやら、オリヴィも新しい銃を手に入れたようで、敷地の中にある射撃演習場で試射をするつもりなのだ。クリスもしばらくまともに練習をしていないし、クラーラは初めての体験でもある。教われるものであれば、教わりたいものである、
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ヴォルカニック連発銃は、とても個性的な銃であった。チューブ式の弾倉を銃身の下に備えていること、弾丸が『ロケット弾』と呼ばれるミニエ弾の弾丸後部の『窪み』に火薬を詰め込み、薬莢代わりに使う機構などだ。
八発も銃弾が入るのは、その特殊な銃弾と弾倉の形式の故であり、その反面、いくつかの弱点がある。
一つは、弾丸の後部に火薬を収める関係で装薬が少ないため威力が低いという点。また、火薬が剥き出しな為、湿気に弱く水濡れなどで発射できなくなる可能性が紙薬莢と比べても高い。また、連続して射撃した場合、機関部が過熱し弾丸の装薬が誘爆する危険性も多少ある。
「ビルが持つには少々弱い銃だったのね。でも、八発まで一度に拳銃レベルでも速射できるというのは、手段で近寄られた場合には阻止力として役に立つでしょ?」
わらわらと人が集まってきた場合、一発二発の威力ある銃弾よりも、ばら撒ける小威力の弾丸の方が制止する力は高い。発射した数を数えているわけでなければ、撃ち尽くしたかどうかもわからないので、単発・連発式銃よりも翳すだけで抑止力にもなる。
「予備の弾丸自体は、油紙で纏めて……こんな感じで湿気を防ぐ感じね。小さい弾丸だから、数を持っていても邪魔にならないのも巡礼の旅には良いでしょう」
弾丸は小指の第一関節ほどの大きさであり、相当可愛らしいサイズだ。まずは装填。銃身の下に付随するチューブ式弾倉の装弾器をバネを押し込んで横へずらす。
「ここに、一個ずつ詰めていくのよ。それで……この装弾器を元の位置に戻してばねを外す。それで……」
レバー式というのは、引金を囲うようについているレバーを押し下げることで、弾倉から銃弾がセットされる形式だ。ガシャッとオリヴィがレバーを押し下げ弾倉から装弾する。
「では、的を狙って、ばら撒いてみるわね」
PAN! PAN!PAN! PAN!PAN! PAN!PAN! PAN!
驚くほどの速さで弾丸が再装填され、次々と10mほど先の的に吸い込まれていく。あっけにとられる、クリスとクラーラ。その顔を見て、してやったりとばかりに良い笑顔を返すオリヴィ。
「連装式銃と二発目までは変わらないけれど、これが続くわけ。威力は弱いけれど、室内や閉所だと跳弾もあるから、余り高威力の弾丸はかえって危ないしね。相手が連発式の銃を持っていると警戒して動きが一瞬止まれば……」
『槍で突き刺す』
「銃剣で手足を切り飛ばすなり、腹を抉るなりするって事ですね」
「そんな感じね。なるべくなら、殺さないで……即死させない方が良いわね」
集団心理として、怪我人が騒げば一瞬助けなければと躊躇することになる。一思いに殺せば復讐心や過剰な防衛反応を生み出し思わぬ苦戦をすることにもなりかねない。
「騒げば殺すと言っておけば、怪我人は傷口の出血を抑えることに熱心ですから、静かにしていますよ。相手の顔を見て、怯えが無ければ止めを刺しても構いませんが」
後ろから刺されるリスクを考えれば、ビルの提案は妥当かもしれない。とはいえ、仮にも修道女見習。吸血鬼やゾンビならともかく、犯罪者とは言え生身の人間を殺すのはいかんだろうとクリスは思わなくもない。
「憲兵の突入部隊にも仕事を挙げないといけないからね。全員死亡だと、その後の取調べとか、現場調査とか困るじゃない?」
オリヴィ曰く、魔力持ちの幹部は殺す気でいかなければ恐らく逃げられる可能性が相当高いだろうという。
「手足斬り飛ばすくらいでいかないと、止められないかもしれないわね」
「魔力持ちですからね。普通の人間のように失血死は簡単にしませんよ。五体満足の方が危険ですし、取調べする者たちも生かしておくと危険ですから私たちが仕留められない場合、もしくは先に出会ってしまった場合……」
「手当が加算されるから、頑張ってね!!」
魔力走査を使えば、魔力持ち幹部の位置は凡そ特定できるだろう。中の犯罪組織の構成員の制圧が進み、包囲網が狭められれば、外周で待機するオリヴィとビルも突入するのだというが、当初は二人で対応するしかなさそうだ。
「銃弾は躱されるか弾かれるから、牽制以上の意味はないと思うわよ」
魔力持ちで、身体強化に特化したような『魔剣士』は高初速のライフル弾でもなければ、容易に見て躱すという。
『わ、私にもできるかな?』
クラーラの言葉に、そういうことじゃないよねとクリスは思うのである。
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