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第一話 巡礼の聖女 裁判所の裏の顔を知る

第一話 巡礼の聖女 裁判所の裏の顔を知る


『 ルージュにおける犯罪組織への吸血鬼の影響に関する調査報告

 現在、王国中部の都市ルージュにおいて、急速な都市化・工業化の進展に伴う人口増と並行し、犯罪組織の浸透が進んでいる。その内容は、売春・違法薬物の販売、人身売買、暴行傷害など、地域住民にとって深刻な問題となっている。


 本来、歴史ある都市には相応の統治機構・統治能力を有する都市支配層が存在するものであるが、長く王領として代官に差配されたこと、また、大陸戦争期に砲兵部が拠点を置くに至るまで長閑な地であり、修道院を根源とする学術都市の様相を呈した時代が続いた結果、脆弱な統治機構のまま大都市化が進展してしまったことが、今日の問題を悪化させていると考えられる。


 司法警察の長である市長の政治的能力に問題があり、また、その下で活動する裁判所所長・警察幹部に敵性勢力が浸透しており、中央および国家憲兵の調査に対する障害となっている。


 この状況を鑑みるに、敵性勢力の速やかな排除を実行し、重ねてその影響下にある腐敗警察官僚の更迭及び処分を実行すべきであると進言する。また、その方法は同時にルージュに盤踞する犯罪組織の資金源及び活動拠点の破壊を伴う作戦行動により一挙に為すべきである。


 この地の犯罪組織には、直接的ではないものの王国に長年巣食うある存在が深くかかわっており、時間をかける事で対応が複雑化する懸念がある。詳細は別紙にて説明するが、提案する計画を元に国家憲兵・ルージュ駐留の軍を動員し、一挙に収束に向けるべきであると強く進言するものである。



          ――― 内務省警察局顧問 特級探偵 Vより ―――』




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 クリス達が見た『怒れる老人』判事は、どうやら、憲兵隊の捜査妨害を積極的に行っていた、裁判官であるのだという。重犯罪に関しては『予審判事』という制度があり、捜査機関からの訴状だけでなく、裁判所も独自に調査する事ができる制度があるのだ。


「それを悪用して、裁判所の中で握りつぶしているのよあいつらが」


 ルージュの街は、司教様以外の司祭・助祭たち、多くの修道女らが地元の有力者の家系かその家に仕える家柄の人間ばかりなのだという。


「地元への利益誘導が最優先。多少の荒事には目をつぶる。そういう、犯罪組織が付け入りやすい性格の街ではあったみたいね」


 そこに、チビ将軍時代砲兵の拠点が置かれる。チビ将軍が元砲兵将校であり、この地でとれる鉄鉱石と、上流で採掘される石炭を組合せ新式の大砲を沢山作らせるための研究施設・製造設備・砲兵学校を集約して造らせたという経緯がある。


 それから五十年、ルージュの街は大いに潤い、人口が増え、様々な場所から新しい人間が街に集まってきた。


「最初は、多少のお目こぼし程度であったようだけれど、今じゃ、どっちが主かわからない状態。それが、市の上層部と犯罪組織の関係ね。だから、余所者である私たちが派遣されたってわけ」

「それに巻き込まれたのがお二人ですよ」


 オリヴィの話に被せるようにビルが爽やかに言ってのける。いや、巻き込まれたって、巻き込んだ本人が言って良いセリフではない!!


 高級士官用客室に滞在継続中のオリヴィに呼び出され、同じ敷地内の一般士官用宿舎(二人部屋)から訪問しているクリスとクラーラであるが、出される食事に雲泥の差を感じつつ、ただ飯なので文句は言えないかなと考えたりする。


 憲兵大佐相当の待遇を受けるオリヴィとビルに比べれば、下士官相当だが、女性ゆえに士官客室(あくまでも二人一部屋)で、兵士と同じ食堂を使う二人の食事は、量以外勝るところが無い。味は、大聖堂付きの施療院にも劣る。施療院は、意外と美味しいものが出るのだ。





 しばらく調整に時間がかかるという説明を受けつつ、今回の依頼の詳細について確認する。


「そろそろ、巡礼の旅に出たいんです」

「そうね、それが本来の目的ですもの当然ね」

「ははは、心苦しいのですが、お二人の協力が必須なのですよ」


 犯罪組織の幹部の幾人かは、やっかいなことに『魔力持ち』なのだという。そもそも、魔力持ちでなければ吸血鬼にはなれないのだから、吸血鬼と取引しその配下になろうというのは、魔力持ちに決まっている。


「どの程度の腕前なんでしょうか?」

「気になる?」


 少々茶目っ気を混ぜつつ、オリヴィが説明する。曰く、魔力量はそこそこで、身体強化と魔力纏いが精々だが、数の暴力の遣い方がよく分かっているタイプなのだという。


「つまり?」

「大勢で踏み込めば、構成員の中に紛れて逃走しかねないってところ。組織自体を潰せば数年は大人しくさせられるでしょうけれど、二度手間三度手間になりかねないからね。やっぱり、元を絶たないとだめなのよ」

「魔力持ちで吸血鬼に協力する大物犯罪者ですから、逃せば被害が拡大する事は間違いありません。それに、彼らの頭の中にある犯罪組織を育成するノウハウも頭ごと叩き潰しておいた方が良いのですよ」


 『アニス』の製造レシピさえあれば、アブサン程度を製造する酒造所を手に入れれば再始動は容易にできる。人を集め、薬をばら撒き、一から立て直すのにたいして時間も手間も資金もかからない。


 魔力持ち幹部を仕留めれば、そう簡単には復活しないということだ。


「あいつら、銃で武装しているのもあるけれど、『魔剣』も使えるはずなの。あ、クリスが持っているような魔銀加工の剣という事ね。普通の憲兵や兵士を突入させたら、そのまま皆殺しにされてしまうのよ」

「ヴィが突入した場合、逃げを打たれるとそのまま憲兵達の包囲網を突破して逃げられますし、憲兵を突入させれば憲兵が皆殺しになるだけですから、どうしても魔力持ちの『勢子』が必要なのですよ」

「……わかりました」

『え、わからないよぉ!!』


 クリスが猟犬、オリヴィが猟師の役割を果たすということなのだろう。憲兵隊で包囲網を作り、オリヴィが魔力持ちが逃走した場合対応する。クリスたちは、中で暴れて魔力持ちの幹部が逃げ出せば良し、しかしながら逃げない場合、直接討伐することになるのではないだろうか。


――― わりと、いや、かなり危険ではないだろうか。


「気が付きましたか」


 クリスの双発銃と銃剣、クラーラの仕込杖だけでは圧倒的に火力が足らない。数人ならともかく、恐らくは百には届かないものの、数十人はいるのではないか。二人でそこに銃一丁と銃剣、仕込杖で突入するのは自殺行為だろう。


「それで、これをお譲りします」

「以前、ビルが使っていた銃なんだけど、弾丸の威力が今一ではあるけれど、八連射まで可能よ」


 オリヴィが差し出したのは、見慣れないレバーの付いた、クリスの双発銃より少し長めの銃である。


「『ヴォルカニック連発銃』って言うんだけど、威力は22口径弾レベルなの。弾丸が特殊で、ミニエ弾の形で弾丸の後部に火薬が詰められるようになっていて、そこを叩いて爆発させる形だから、雷管をつける必要はないのよね。で、このレバーを引くと……弾丸が装填されるのよ」


 引金を囲うように曲げられたバーの先端の金属の輪に指をかけ、ガシャガシャと動かすオリヴィ。レバーを下げ戻す事で弾丸が送り込まれるのだという。銃身の下にある筒の中に弾丸を詰め、詰められた弾丸がバネで押し下げられることで、次々と弾丸が押し込まれていく。


「近寄ってきた数人程度なら、これで動きを止められるでしょ? とめたら、ブスッとね」


 オリヴィは突き刺すような動作をしてみせた。



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