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第十話 巡礼の聖女 ドラゴンらしきものを討ち倒す

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第十話 巡礼の聖女 ドラゴンらしきものを討ち倒す


『王国及び神国における竜種の報告 その3


 バジリコックスとは内海特に王国から神国にかけて古来から見られる

亜竜種の一つであり、その語源は『小さき王』といった意味を含んでいる。

「コックス」が『雄鶏』と意味する王国語の発音に似ている為、雄鶏と何か

関わりがあるように勘違いされがちだが、本来、長生きをした蛇が竜種に

精霊化・魔物化する際に、悪霊の影響を受けた結果、魔物寄りになった

竜の成りそこないとされる。


 その生息地は荒野や砂漠であるとされるが、主客転倒の解釈であり、

その実はバジリコックスの放つ『毒』により生命が失われ、砂漠や荒野と

なり果てる現象を示している。


 森や丘といった場所に、突然荒野が広がり、枯木や生き物の死骸が

散乱していた場合、バジリコックスの存在が疑われる。


 大蛇の類であるが、羽を有し鶏のような足を二対もしくは四対生やして

いる場合がある。これは、必ずしも足があるというわけではなく、無足の

形状を含め幾つかのバリエーションがあると考えられている。あるいは、

大蜥蜴の変化である可能性もある。


 その特徴は、竜種の端くれであることからくる威圧による立ちすくみ・

硬直と、体内で生成される毒の息による攻撃が存在する。毒の息は、

おそらく「硫化水素」であり、鉱物もしくは硫黄と体内で生成される

酸を混ぜ合わせた結果生ずるものであると考えられる。


 硫化水素は、鉱山や火山で発生する危険な気体であり、呼吸困難から

死に至る。また、皮膚に付着した場合も後遺症を伴う障害を引き起こす。

臭く、可燃性のガスであるため、炎の息を伴う種も存在する。これは、

火の精霊の影響を受けた者であると推測される。


 ――― 王都大学学芸員『神国伝承調査報告報告書』 から引用   』




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 動けなくなったサンズ氏に狙いを定め、素早く前進したコカトリスであったが、

その嘴がサンズ氏を捉える前に、黒い何かがその顔面をしたたかに打ち据えた。

勢いあまりバランスを崩したコカトリスが地面に強く叩きつけられた。


『狙いを定めさせないように、主』


 シュワルツが大型犬ほどの大きさとなり、低い姿勢で睨み上げるように

コカトリスとサンズ氏の間に割って入る。


『最初に、蛇の尻尾を斬りおとすか。ほれ』


 ジルバがスクラマサクスに姿を変え、これで尻尾を断ち切れとばかりに

クリスにアピールする。


『人魚の嬢ちゃんは、魔銀の槍で牽制しろ。当てなくていい、的を散らせ』

『任せて!!』


 杖を魔銀の槍に換え、穂先をコカトリスの顔に向けジリジリと前進する

クラーラ。


「いくわよ!!」

『おう!』


 クリス・クラーラ・シュワルツが、コカトリスを取り囲むように位置取る。

牽制の刺突を繰り返し、コカトリスの関心を向けさせるクラーラに、毒の

息が吐き出される。


『うひゃぁぁぁ!!!』

『さかな、慌てるでない!』


 大精霊が水の被膜で霧を弾き飛ばし、また、溶け込ませ吸収させ地面

へとその水をまき散らせる。


『うう、足元がぐちゃぐちゃだよぉ』

『ええい! 文句言うでないわ!!』


 精霊であるシュワルツはともかく、クリスとクラーラ、そして当然コカトリスも

足を泥に取られるようになる。ククと、鶏のような声を出しながら、素早く首を

左右に振り、クリス達を視界に納め、攻撃の機を伺う。


『主!』


 攻撃のタイミングを合わせ、シュワルツはコカトリスに飛び掛かる。二度の毒息で

ある程度体内の石化ガスが減った為か、シュワルツの攻撃には、前爪で

迎え撃とうとするようだ。


 クリスは背後に回り込み、一抱えほどもある毒蛇の尾の真ん中の辺りを

身体強化した体で魔力を纏わせた魔銀のサクスを用いて思い切り叩きつけ

るように斬り裂く。


 蛇の鱗も、本来であれば薄っすらと魔力を纏い、プレートアーマーほどの

防御力を持つものなのだが、同じ魔力纏いの剣を叩きつけられたのでは

抵抗することもかなわず、バツっとばかりに尾の半ばから切り落とされ、

落された尾はトカゲのしっぽ宜しく、激しく跳ねまわるが、既に脅威ではない。


 ITAAAA!!!!


 尾を斬りおとされたコカトリスが大絶叫。魔力を纏っていなければ、この声

だけで体が硬化したかもしれないほどの力を感じる。


『まてまて、お、お主、もしやコッコかぇ?』


 背後の大精霊から声がかかる。「コッコ」ではなく「コカトリス」、竜種の

下位ではあるが危険な魔物。クリスとクラーラでは牽制し、相手が諦めて

この場を立ち去らせるほかない相手だ。


『何いってるの? コカトリスだよ』

『それは分かっておるさかな。そうではない、その昔、わらわが泉の乙女

であったころに飼っていた鶏ではないかと……思い出したのじゃ』


 どうやら、「雄鶏の産んだ卵から孵ったヒヨコなんて気持ち悪い」と、

この山の麓に捨てられたヒヨコを、その頃、この山の泉に棲むドラゴンに

囲われていた『乙女』であった大精霊が憐れに思い、しばらく飼っていたの

だという。


『卵産まないでしょ、雄鶏だし』

『まあの。ペットのようなものじゃ。わらわも一人では寂しく思う時もあるのじゃ』


 KULULU……KUWAWA!!


『おお、思い出したかェコッコ。わらわのことを』


 大精霊の事を思い出したコカトリスのコッコは途端に大人しくなり、

大精霊のいるクラーラの傍までのそのそと歩み寄り、顔を近づけてきた。


『ひいいぃぃ』

『おお、この者たちはわらわの眷属に連なる者、襲ってはならぬ』


 KUKU


 どうやら、コカトリスは大精霊の事を思い出し、戦う意欲を失ったようである。





 そして、この泉に棲んでいたドラゴンは既にいなくなっており、ドラゴンの

潜んでいた泉にはドラゴンの魔力の残滓が残り、そのお陰でコカトリスが

成長し、また、稀有な薬草がここに群生しているという事がサンズ氏の調べ

でわかった。幾つかのサンプルとなる薬草や泉の水を採取し、一行は山を

降りる事にした。のだが……


『ほんとにここに残るの?』

『ああ。コッコを一人にするのも憚られるしの。この泉でしばらく過ごすつもりじゃ。

元々、泉の乙女であったわけだからの』


 大精霊は、クリス一行と別れ、この泉の森に留まる事になった。が、巡礼の

旅の帰りに道には村により、母娘の様子を見る際に、再びここを訪れる

約束をする事にした。大精霊も気が変わっているかもしれないからだ。


「じゃあ、また」


 クリスは泉に別れを告げ、巡礼の旅へと戻る事になる。この先いかなる

顛末が待っているのか。



 その旅はまだ終わらないが、物語の続きは……皆様の心の中で【了】






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― 新着の感想 ―
[良い点] 増えるどころか減ってしまった… ってエエエエエ!?終わり??? クリスと愉快な人外パーティの大冒険がもっともっと読みたい~っ! [一言] 気が付けば40万字超えの大作お疲れ様です。
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