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【完結】『煉火の聖女 巡禮記』 右手には銃 左手に剣 心には正義の鉄槌 ちょっぴりの希望を  作者: ペルスネージュ
第一章『オンディーヌ』

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第一話 巡礼の聖女 消えそうな精霊と出会う

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第一話 巡礼の聖女 消えそうな精霊と出会う


 いくつかの谷が合流し、その渓流の流がまとまり大きな流れとなるのがこの街の少し手前のあたり。大きく屈曲したピルネ川は、やがて北へと流れバイヨで外海へと注ぐ。


 西大山脈の東麓を沿うように進む流れ。太古から続く山や丘、森を越えていくのだ。


 山々から集まる精霊の力をこの場所で大きく抱え込む事で、おそらくルードの『水』の精霊は力を得たのだろう。長い時間をかけて。それが、うっかり精霊を認知できる少女に声をかけ、少しばかり手助けしたつもりが……えらい事になってしまっているという事だろう。


 精霊は親切であり、頼られると限界まで頑張ってしまうのだ。それで、人に騙されたり怒れる精霊と化すこともないわけではない。とはいえ、この地に集う『聖母』の奇蹟を願う者たちは、そんなつもりはない純粋な期待を持つ者なのであるから……断れないし、逃げられないのだろう。




 夜中に城塞を出て星明りの中、川を越える。月は出ていないが、星明りで岩窟に向かう道ははっきりと見て取れる。川のせせらぎの音が少しずつ遠くなる。


 やがて、岩棚の下にある岩窟が見えてくる。そこ岩窟が白くボーッと輝いているように見える。やはり、精霊がいるという事が遠めでも分かる。『加護持ち』『魔力持ち』であるからなのだが。


『どれだけがんばればいい……あの子のためだよ』


 どうやら、精霊が歌を歌っているようだ。甲高い声ではなく、落ち着いた声色であり、魔力の波動が乗っている。おそらくは、歌い上げる事で、魔力を泉に溶け込ませているのだろう。


『わかっているけど、魔力が消えそう……』


 限界が近いながらも、おそらくは『約束』を守るために、自分の魔力を削るように泉に注いでいると想像できる。


 徐々に歌い上げる声が強くなり、輝きが明滅するようになる。


『祝福が欲しいのなら……一人で祈りましょう……そして輝く……

超魂(ちょうたましい)!!』


 ドン! と空気が振動するように感じる。実際、魔力を感じることのない者にはわからないだろうが、泉とその周辺に魔力が付与されたのだろう。もう、この岩窟は小さな『聖地』となりつつあると言える。数年にわたり、精霊が魔力を注ぎ込んだのだから。


 山々から下る魔力を長年湛えてきた『精霊』はおそらく、亜神に近い大精霊と呼べる存在だったのだろう。それは、奇蹟を連発できるほどの。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 遠目に岩窟を眺めつつ、様子を伺う。だがしかし、徐々に光が弱まりつつある。魔力が限界になっているのかもしれない。


(わらわ)の限界……きづいているけど……あしたもたくさん、人がやってきそう……』


 連日、奇蹟を求めて巡礼者や近隣住民がやって来るが、おのれの姿を見ることができるほどの加護や魔力を有する者は皆無なのだろう。


『一番大事な乙女がほら、ぜんぜん来ない、どこいってる……』


 約束を守りつつ、その約束の相手が来ないことを嘆きながらも、魔力が尽き存在自体が消えかかるまでやめようとしない精霊の愚直さが憐れでもある。


『あんまり様子見すぎるのもなぁ』

『止めてあげないとだめだよ!! おーい!!』


 クラーラが先頭をきって岩窟に向けて走り出し……こけたぁ……


『ポンコツ……』

『人魚の嬢ちゃん』

『大丈夫ですかクラーラ。足元に気を付けてください』

「立てる?」

『ん、へ、へいきだよ。ぜ、全然平気!!』


 いや、ドロドロなんだがとクリス以下全員が思う。


『そんなことより、水の精霊が消えちゃうよ。おーい、そこの精霊さーん!!』


 明滅が止まり、歌声が消える。


『……ん……誰じゃ。久しぶりに言葉が躱せそうな御仁ではないか』


 半透明の姿、長身で白く見える体は……おそらくトーガのような白い長衣を纏っていると言える。教会の宗教画にみられる聖母の意匠に似ていると言えば似ているだろう。


「だから『聖母』様になるわけね」

『聖母聖母とお主らもか』

『なわけえねぇだろ。俺たちは、お前が精霊だってわかってる。そこのネコと話ししてんだろ?』


 ジルバがシュワルツを引き合いに出す。


『我が主と、供の者たちです。そちらの女性は、元人魚で、『水』の精霊の加護をお持ちです。一助になるかと思います』

『わたしは、クラーラ。この子はクリス。あとは……』

『よい、精霊たちの名などあって無きが如しじゃ。白いのと黒いの、鈍いのでよい』


 魔銀を鈍色と称するのはちょっと傷つくジルバである。


『それで、何用かと聞くまでもない。そこの黒いのに相談した内容で来てくれたと思って良いのだな』

「ええ。こちらは、あなたの存在を確認するように、この地を治める領主の親玉から依頼されて来たの。精霊だろうと思われていたのだけど……」

『精霊ではない、大精霊、『水』の大精霊じゃ。まあ、もうすぐ消えそうな大精霊じゃがな』


 水の大精霊は、今までの経緯を掻い摘んでクリスに話はじめた。病気を持つ魔力を持つ少女にであい、たまたま手伝った事。やはり、泉の水には回復を助けるポーションの効果があり、余り濃いものは作ると問題なので、汲める水には薄っすらと、そして、奇蹟を願う重篤者には、回復の効果を高めたものを個別に与えたというのである。


『まあ、器に注いだり、祈りを捧げている間に、ちょちょっとな』

「それで収拾が付かなくなったと……」

『迂闊であった。あの乙女を助けたついでに、少しだけ周りの者にも恩恵をおすそ分けしただけなのだがな。何度も訪れるたびに、恩寵をほどこしたのが不味かったようじゃ』


 恩寵とは一過性の祝福のことであるという。恩赦に近いニュアンスだという。


『このままではいずれ、この地に溜めた魔力が底を尽き、妾もその存在を保てなくなりそうなのじゃ』

『やめりゃいいじゃねぇか』

『そうはいかぬ。あの乙女が教会とやらに保護されているのは、ここで妾が恩寵を与えているが故なのであろう。やめれば、それがなくなり、乙女が立ち行かなくなるではないか』


 自分のことより、相手のことを考えるというのは、度が過ぎればそれはそれで問題になる。


「なら、ここから離れてしまうという選択肢はないの?」

『……あるぞ。もっと魔力が高まる場所へ向かい、妾の存在を高めてくればよいのじゃ。だが、いまのままでは移動もできぬ』

『こんなこともあろうかと、『水』の魔力を込めた器を用意したよ!!』

『……なんと!!』


 『水』の大精霊は、クラーラが取り出した魔水晶を目にすると、目をウルウルと潤ませるのであった。



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