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第八話 巡礼の聖女 赤長靴の魔術師と遭遇する

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第八話 巡礼の聖女 赤長靴の魔術師と遭遇する


『主、あのものは魔術師ですが、加護は『土』のようです』

「コボルドの主様ってこと? それにしては、躾がなってないわね」


 シュワルツも馭者達の目が無ければ大暴れするのであるが、今の姿はただのクリスの飼い猫でしかない。


『どうする』

「見過ごせないでしょ。それに、無駄死にじゃない」


 生き残りのコボルドと半数の民兵が白兵戦で憲兵と対峙し、少し距離を置いた街道脇の遮蔽の陰から、魔術師と銃兵が支援射撃を繰り返す。


 目の前の敵と背後からの射撃、注意力を分散させられ集中力を欠いた憲兵は少しずつ傷を増やし倒されるものが増えていく。


 民兵の銃手の射撃速度が速い。片膝状態から単発式ながら銃身の後端から弾丸を入れている。後装式……ではなく、前装式の銃を改造した『アルビニ銃』というものだろうか。立たねば再装填できない前装式は伏撃ちが困難であり、戦列歩兵が射撃速度の改善で損害を増やす中、過渡的な装備として連合王国などで導入されているという。


 既存の前装式小銃を改造した物であり、射撃姿勢の改善のみならず、射撃速度も二倍に改善された結果、効率は良くなっている新式装備だ。弾丸は紙製薬莢の雷管部分だけが真鍮製の金属でできている『ボクサー式』と呼ばれるそれである。


 難点と言えば、狙撃性能が低下する事であったようだが、射撃速度・姿勢の改善がより勝る効用と言えるだろう。


 旧態依然の憲兵は白兵に頼らざるを得ない。指揮官がリボルバーを持っていたが、既に弾丸は尽きており、今はサーベル片手に戦っている。


『マントに魔力を纏わせて、突っ込め』


 ジルバに言われる迄もない。背後にまくり上げたマントを前にぐるりとまわし、魔力を纏わせる。これで、小銃弾は弾けるはずだ。


 一気に加速し、護送馬車の資金まで接近しようと試みるが……


土槍(terrahasta)


 魔術師が『土』魔術を唱える。地面から土の槍が隆起する。一瞬息を飲むクリス。


『そのままだ!』


 土の槍にツッコめとジルバが叫ぶ。


 BOGUNN!!


 土の槍はクリスの魔力を纏った『マントの盾』によるチャージで粉砕される。


『アノ術は、そのあと『硬化』を上掛けしなけりゃ駄目なんだ。まあ、普通の騎兵ならそれで足止め・馬が驚いて棹立ちになるから効果がある。けど、魔術師、魔剣士相手じゃあ……こんなもんだ』


 護衛馬車まで10m、乱戦に分け入っても限界がある。ならば……


『魔力切れに注意しろ』

「わかってる!!」


―――『小さな(Parvus )』『(flumen)

―――『小さな(Parvus )』『(flumen)

―――『小さな(Parvus )』『(flumen)

―――『小さな(Parvus )』『(flumen)

―――『小さな(Parvus )』『(flumen)


 小雷を憲兵に止めを刺そうとするコボルドたちに命中させ、動きを止める。その上で……更なる魔術を放つ。


「雷の精霊イグニスよ我が働きかけに応え、我敵を雷をもて討ち果たせ……―――『大いなる(magnus)(flumen)』」


 中空に現れた雷球。ヴァイスの魔力の補助はない。クリスの魔力ギリギリと思われるとっておきの一撃。


PPPAAAAANNNNNNNN!!!!


 空気を切裂く複数の炸裂音。剣や銃、ツルハシやスコップなど金気のある武器を持っている敵も……味方も(いかづち)が打ち倒していく。


 GUWWWW……

 

「「「「ぎゃああ!!!」」」」


 残るは、クリスと……魔術師だけ。


「……何てことしやがるんだお前」

「あんたたちが温いことやってるからでしょ!! それと、魔物を関係ない巡礼者に差し向けたのはゆるせない!!」


 それがどうしたとばかりに睨みつける魔術師。


「さっさと、中身を連れて立ち去りなさい」


 クリスとの対決に移ると思っていた魔術師がポカンとした顔になる。


「あたしは巡礼者の護衛。その鉄の箱の中身のことなんてどうでもいいの。ちゃっちゃと連れてってもらえる? 後ろで伸びてる銃兵たちは音で気絶しているだけなんだから。ほら!!」


 クリスは街道からそれ、伸びている銃兵を蹴り起していく。


『だだだ……だいじょうぶ!!』


 クラーラがクリッパ(Klepper)を連れて走り寄って来る。


『もうちょっとつっぱれ』

『主、私も手伝いましょう』


 ジルバに喝を入れられ、山猫ほどに密かに大きくなったシュワルツが、伸びている民兵たちを咬み起こし、引っ掻き起こしつつコボルドに留めの一撃を入れていく。


「これは……素直に従った方が良さそうだな」

「そうしてもらえる。それと……」


 クリスはこの後巡礼で西の大山脈を越える予定なので、ちょっかい出すなと告げておくことにする。


「そうか。分かった。魔術師『カルロ・ライオ・ロッソ』の名において約束する。君の名は……」

「あたしはクリス、彼女はクラーラ」


 クラーラは『お、手打ちだ』とばかりにニッコリ魔術師に笑顔を向ける。阿保可愛い笑顔に一瞬見惚れるカルロ某。おまえにはやらん。


「おほん。カルロ・ライオ・ロッソの名に懸けて、クリスとクラーラ及び同行者の安全を保障する。ならば、これを持って行け」


 それは、素朴な貴石で飾られた変わった意匠の十字架である。十字の中心から先端にかけ末広がりとなっており、先端は剣先の様な三角となっている。


「これを見せて私の名を言えば、我々の仲間に襲われる事はない。もっとも、名を騙る山賊の類には通用しないが……クリス達なら問題なく処理できるだろう。ようは、我々の組織から離脱した半端ものだ」


 最後にカルロは『配慮感謝する』と述べ、護送馬車の扉を破壊するとなかからぐったりした様子の小柄な人物を担ぎ出し、生き残った民兵をつれて、谷の奥へと姿を消していった。


 倒れた憲兵を起し、巡礼者に手伝ってもらいながら怪我人の手当てをしていると、前方から数十人の憲兵が接近してくるのが見て取れた。


「めんどうくさいわね」


 出来レースとわかっていても、それを知らぬふりして対応する必要があるかとおもうと、クリスは少々うんざりするのであった。



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