隣国のパーフェクトプリンスは女騎士を娶りたい(短編版)
初めての王道(?)プリンスものです。
ご存知の通りムーン作家ですのであちら向きの作品ですが、あらすじだけなので安全朝チュン仕様。
行間はあちらの拙作パターンで埋めてお楽しみください♡
隣国から次期国王と目される第一王子が親善の為に来訪する──
城を上げての歓待の中、到着した馬車から現れたのは、少女と見紛う程に儚く美しい王子様。華奢な身体付きに白魚のような指。
物語の中にだけしか存在しそうにない、金髪碧眼のパーフェクトプリンス。
来訪初日、第一王子エドの指名で警備を任されたのは騎士団長ジェイ。実は男装の女騎士。だがその見た目は完璧なほどに男性だ。身長は王子より頭一つ高く、鍛え抜かれたた全身は分厚い筋肉を纏う。腰は硬く締まり、女性らしさを示す余計な脂肪はどこにも見えない。
予定されていた公式行事は滞りなく終わり、後は国の各所をお忍びで見たいと言うエドの要望で女騎士が同行する事に。途中、大臣の采配で館に一泊する事になる。
怪しいと踏んだ女騎士は前もって王子に扮装。敵を騙し、供された怪しい酒をエドの代わりに飲む。無論媚薬。
狙いはエドの正妻の座。隣国では第一王子の最初の契は絶対であり、必ず正妻にせねばならない。大臣が自分の娘を正妻にしようとハメたのだ。
だが大臣の娘は若い文官と駆け落ちしてしまい館に来ない。焦った大臣は「下の娘を今すぐ連れてこい」そう言って部下を自分の館に走らせ自分は同じ館の馴染みの元へ。
どうせ王子は媚薬を飲んだのだから、あとはじっくり薬が回るのを待って娘を差し出せばいい。
利口なエドは決して大臣に逆らわず、従順な従者のフリで女騎士と共に部屋に残る。
媚薬効果で身体を持て余しだす女騎士。同じ男なのだから構わぬだろうと王子が汗の滴る服を脱がせてみれば、すっかり男と信じて疑わなかった女騎士に胸がある。
これはどうしたものか。どう見ても知識などなさそうな王子と、知識はあるが騎士のプライドが邪魔をして説明できない女騎士。持て余す欲望と目前の手折れそうに可憐な王子。今にも押し倒しそうになり、慌てて壁に頭突きを繰り返し、気絶する女騎士。そんな女騎士の潔癖さと凛々しさに心打たれたエドは、気絶した女騎士をベッドに引き込み──朝チュン。
結局大臣は商館で寝こけ、下の娘は姉の身代わりなど嫌だと言って来なかった。表向き、王子は視察後館に一泊して、あとは王都の迎賓館に戻るだけである。
昨晩気絶してからの記憶のない女騎士と、血色の良くなったエド、それぞれ胸に語れぬ秘密を抱えて帰途につく。
王都では国王がお待ちだという。なんでも来年、第一王子ご成婚後に行われる神事の打ち合わせとのこと。表立っては発表されてないが、エドには婚約者がいて帰国後すぐ結婚予定。国王の側近から耳打ちされ、落ち込む女騎士。
今回の来訪は即位前の挨拶周りだった。現在隣国でもこの国でも疫病が流行り始めた。よって神事はいつにも増して重要であり、そこには正妻を伴う決まりだ。当たり前だが、その正妻は正しくエドの初の女性でなければならない……
館での記憶が途中からない女騎士は内心不安でいっぱい。
もしや自分は気絶している間にエドの貞操を奪ってしまったのではないか?!
一方エドはしれっとしたもので、その可愛らしい顔で女騎士の質問をのらりくらりとかわしていく。
そんな中、エドの誘拐事件が発生。無論犯人は件の大臣。それを予見した女騎士は大臣の屋敷に力技で押し入り、駆け落ちしたはずの長女を締め上げてエドの行方を探り出す。エドに娘たちをあてがい損ねた大臣は、エドの婚約者と隣国の第二王子共謀による申し出を受け、今度は第一王子暗殺を企んだ。
だが同じ殺してしまうのなら、是非あの可愛らしい王子を思いっきり味わって見るのも一興。そんな大臣の愚かな欲望のお陰で、女騎士が駆けつけるまで大臣は王子を殺していなかった。
バッサバッサと大臣の私兵を切り倒し、エドをベッドに組敷く大臣に詰め寄る血みどろの女騎士。直前でエドを人質にする大臣。
ところが素晴らしい体捌きで大臣を組敷き返すエド。
「これでも一国の王子です。一通りの護身術くらいはね」
そう言って可愛らしく笑う王子の瞳に嗜虐の輝きが灯り、それを見た瞬間、女騎士にあの夜の記憶が一気に蘇る──
体格とは裏腹に絶対的強者の王子による一方的な行為と自分自身の痴態の数々。何度も目に焼き付けた、王子のあの目。思い出したくなくて自分で封印していた記憶を取り戻し、その場に崩れ落ちる女騎士。
そう、女騎士の正妻の座はあの日に決っていたのだ。
場面は切り替わり、高らかに鳴り響く教会の鐘。真っ白の騎士礼装を纏った背の高い女性と、エスコートから彼女を引き取る小柄な王子。その花嫁の騎士服は、心持ち前がゆったりと膨らんでいて。
両国の国王から祝福を受けつつなぜかイマイチ納得の行かない顔の女騎士。
「私は生涯を騎士団に捧げたはずなのに……どうしてこうなった」
「何を言っているのですか、貴方は一生僕の理想の騎士様ですよ。末永くその凛々しい騎士姿を見せてくださいね」
一風変わった夫婦は沢山の子を設け、末永く幸せに暮らした、らしいです。